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2006年(平成18年)のブログ「歌舞伎素人講釈」記事

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2006/1/1

明けましておめでとうございます。サイト「歌舞伎素人講釈」はこれで6年目に入ります。素人が恐る恐る始めたものが、まあ、ずいぶんと続いたもんですね。サイトの「吉之助の雑談」では年頭ご挨拶として「現代的な歌舞伎の見方」を掲載しました。新たな段階に入った「歌舞伎素人講釈」をよろしくご声援ください。
 

2006/1/2

ウィーン市民のお楽しみからもうすっかり世界的行事になっちゃったウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは初登場のヤンソンスの指揮。ワルツはちょっと線が強すぎたかもね。しかし、線が明確でリズムの斬れがいい指揮は行進曲やポルカでは元気良く聴かせました。ポルカ「電話」での携帯電話の呼び出しは楽しい演出でしたね。それと恒例のバレエシーンがノイマイヤーの振り付けなのは驚きでしたが「新ピチカート・ポルカ」は素敵でした。
 

2006/1/3

2月の公開講座の準備ですが、当初は三大丸本歌舞伎をひとつづつ取り上げて3回シリーズとする予定でしたが、もう少し回数がかかりそうな気配です。第1回は「菅原伝授手習鑑」を取り上げますが・シリーズの導入として・古典形式のフォルムを考えてみたいと思っていますので、少なくとも「菅原」は2回やりたいと考えています。2年掛かりのシリーズになるかも知れません。
 

2006/1/6

サイトの「雑談」で「現代的な歌舞伎の見方」を連載していますが・これに関連した話題。昨年末にアメリカでスピルバーグの新作「ミュンヘン」が封切りになりました。メガヒットにはならないでしょうが、スピルバーグが今作らなければならない映画であったのでしょう。TIME誌でのスピルバーグの最新インタビューでの言葉。「なぜETやレイダースのような映画に戻れないのかとよく言われるよ。年配の人たちからは特にね。きっと私自身が未熟だった時に撮った映画を見て育ったんだろう。まったく、うんざりだよ。」  日本では2月公開とか。
 

2006/1/8

「山城屋」  
 
初春の歌舞伎座・藤十郎襲名興行の入りの具合はいかがでありましょうか。テレビ放映を見ますと・山城屋さん(この屋号慣れるまではまだ時間掛る)は元気一杯のようですね。「先代萩」の政岡は太い声遣いで・初めて歌舞伎を見る方は吃驚するかも知れません。しかし、高い女声を遣うよりずっと迫るものがありました。なかなか良い出来であります。
 

2006/1/9

サイトの「雑談」は現在連載中の「現代的な歌舞伎の見方」を終えましたら、その後に「近松心中論」をお届けする予定です。ただし吉之助のことですから、ちょっと変った視点からの考察になりますが・そこのところをお楽しみください。「現代的な歌舞伎解析法」のひとつの例をお見せしたいと思います。すこし長い連載になるかと思います。
 

2006/1/11

歌舞伎評論・演出の戸部銀作氏が死去されたとのこと。氏の大きな功績のひとつは、猿之助のトレードマークになった狐忠信の宙乗り(昭和43年4月国立劇場)を発案されたことであります。もちろん劇評も参考にさせていただきました。ご冥福をお祈り致します。
 

2006/1/12

ぴあ出版から国立劇場40年記念ということで・国立劇場での上演台本とその舞台写真を組み合わせた解説本が出版されました。通し狂言で努力を続けてきた国立劇場ならではの企画ということかな。まずは「義経千本桜」・「鳴神不動北山桜」など数冊、つづいて数冊出るようです。写真も鮮やかで・初心者には理解しやすい編集かと思います。そう言えば「ぴあ」さんは歌舞伎ブームの火付け役でしたね。
 

2006/1/14

「ワルツ」  
 
本日は近くの町のホールにやって来たウィーンのオーケストラのニューイヤーコンサートに行って来ました。もちろんウィーン・フィルではありませんが、肩の凝らない・楽しいコンサートでありました。シュトルツに「二人の心は四分の三拍子で」という曲がありますが・ワルツの三拍子はどうして心を浮き立たせるのでしょうね。実に不思議。
 

2006/1/15

1960〜70年代最高のワーグナー・ソプラノ:ビルギット・二ルソン死去との報。40年来のクラシックファンにとって二ルソンは我らのブリュンヒルデ・我らのイゾルデなのでした。合掌。(・・どうも最近は訃報が多い。)
 

2006/1/16

「蘭奢待」  
 
奈良・東大寺にある正倉院所蔵の伝説的香木「蘭奢待(らんじゃたい)」をご存知ですか。この香木はすごいお宝らしくて・歌舞伎でもあちこちに名前が出てくるのです。この香木を切ったというので悪人扱いされてるのは例えば信長ですが、他にも犯人?が沢山いるらしくて、調べると三十八箇所の切り跡ありということで・切られ与三郎状態であるようです。(朝日新聞の記事より)
 

2006/1/17

本日からサイト「雑談」に「近松心中論」の連載を始めました。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」での対比になっていますが、歌舞伎ファンの方はこの曲聴いたことのない人は多いと思いますが、曲知っているにこしたことないですが・音楽よりむしろ文中に引用したワーグナーの文章が大事です。近松とワーグナーの心情の共通点を味わってもらいたいと思います。
 

2006/1/19

本日はゲルギエフ指揮マリンスキー・オペラでワーグナーの楽劇「ワルキューレ」を聴いてきました。(東京文化会館)ワーグナーは久しぶりですが、叙情的な第1幕フィナーレの二重唱や第3幕のフィナーレは吉之助のお気に入りです。ワーグナーを聴くのは忍耐が要りますが・得るところは実に多いものです。


 


2006/1/22

「芋づる」  
 
「近松心中論」の原稿は完了しましたが、これに芋づる式に出てきた材料でいくつか文章が出来そうです。この手の題材は突っ込み出すとキリがないので・適当なところで切りますが、「かぶき的心情」の深いところにつながる材料なので・敵討ちにも・身替わりにも話題の展開ができるのですね。ズルズルとアイデア出てくるのは面白いものです。
 

2006/1/23

「トリスタンとイゾルデ」の初演は1865年ミュンヘン。「曽根崎心中」の初演は元禄16年(1703)大坂。このかけ離れた時間と場所に関連はあるのでしょうか。いや、全然ないのですよ。しかし、サイトで連載している「近松心中論」をお読みになれば分かるように実に似ているのですね。これは実に不思議なことですね。そこで分かることは「バロック論」でも述べました通り、近松の生きた時代の状況はワーグナーの西欧の状況を先取りしているのだということです。
 

2006/1/24

本年はモーツアルト生誕250年です。モーツアルトは吉之助にとっても重要な存在です。そのうちダ・ポンテ3部作(つまり、「フィガロの結婚」・「ドン・ジョヴァン二」・「コジ・ファン・トゥッテ」)についてはサイトに論考を書きたいと思ってます。もちろん歌舞伎絡みですが。設計図は大体出来てるのですが、具体化するのはもうちょっと時間が掛かるかも知れません。
 

2006/1/25

「先代萩」  
 
本日は歌舞伎座の藤十郎襲名「先代萩」を幕見してきました。吉之助は子役芝居は苦手なのですが・鶴千代・千松のふたりは頑張ってましたねえ。もちろん藤十郎さんも。特に前半がよろしかったようでした。この舞台のことはそのうちサイトに書きますので・しばらくお待ちを。

2006/1/27

「道成寺」  
 
2月歌舞伎座で玉三郎・菊之助の「京鹿子娘二人道成寺」が再演されるようです。この舞台の件は二年前の舞台についてサイトに記しておりますが、それはともかく眼福であることは間違いないので・玉菊のファンでなくても見ることをお薦めします。別稿「あなたでもあり得る」をご参照ください。
 

2006/1/29

最近はサイトの「吉之助の雑談」が連載ばかりで雑談でなく・講釈になってますので、「近松心中論」を中休みしまして・夏目漱石について雑談を書きました。漱石は明治という時代を考えるのに欠かせません。もちろん鴎外や逍遥もそうですが、人気度から言ってもやはり漱石ですね。
 

2006/1/30

現在、上野の国立博物館で「書の至宝」という展覧会をやってますが、書を鑑賞するのはホント難しいですね。しかし、今月号の芸術新潮の特集「ひらがなの謎を解く」を眺めておりますと、なにやら風雅が分かるような気にもなってきます。今年は古今和歌集1100年であるそうです。
 

2006/2/1

芸術新潮2月号の特集「ひらがなの謎を解く」で石川九楊氏が「掛詞」ならぬ書の「掛字・掛筆」のことを解説しておられます。素人には書が読めませんもんで・こういうところ教えられまして・なるほど奥が深いもんだなあと思いました。
 

2006/2/2

小沢征爾さんが体調不良で年内の指揮活動を休止するとの発表がありました。3月末からの東京オペラの森でのヴェルデイ:歌劇「オテロ」は楽しみにしていたのですが、大変に残念です。(代役誰だろうなあ)ここはとにかくご静養されて・早い復帰をお祈りいたします。
 

2006/2/3

サイトに「近松心中論」を連載中です。そこに出てきます「と(und)」の問いかけの件ですが、かぶき的心情を考える上で非常に大事なポイントですのでこの件ご注目ください。この件を別論考でさらに深く考えていく予定です。「歌舞伎素人講釈」で提唱している「かぶき的心情」がさらに深化していくことになるでしょう。
 

2006/2/4

市川市にある芳澤ガーデンギャラリーでの「百人一首の文化史展」をのぞいてきました。百人一首の歌にあわせて歌舞伎浄瑠璃からの場面を見立てて・広重・国芳・豊国らが描いた「小倉擬百人一首」という連作浮世絵が全編百枚展示されています。当時の江戸庶民のなかの文芸感覚と遊び心を感じることができます。残念ながら展示は明日まで。

芳澤ガーデンギャラリー
 

2006/2/7

「玉三郎」  
 
今週の日経夕刊に玉三郎の談話がシリーズで掲載になっています。「私は見かけによらず理数系で・理論で割り切れないものは分からない」と言うようなことを語ってまして・へええと思いました。これは意外と 吉之助とは話が合いそうな気も・・・イタリアオペラの話でもしたいものですね。
 

2006/2/9

渡辺先生のサイトの今月の劇評では昼の部の「陣門・組討」の演出も気になりますね。幸四郎の気持ちは分かる気はしますが、渡辺先生の劇評読む限りでは・後に「陣屋」が続く上演形態ならば・そういう演出も試みる価値はあろうかなというのが 吉之助の意見です。「陣門・組討」単独ならば、先生のご指摘どおり・ちょっと・・・という感じがしますね。
 

2006/2/11

サイト「歌舞伎素人講釈」の「角書」及び「口上・ご挨拶」の文章を若干書き直しました。サイト開設6年たって・まあこれだけ書いて・それなりの自信もつきましたので・はっきり「評論家・吉之助」という立場を前面に出すことにします。そうするともう「素人」ではないということになりますが 、タイトルは大事なものですから・これはこのまま続けます。このタイトルは気に入ってるんだよね。
 

2006/2/12

第4回公開講座「三大歌舞伎を考える・その1」を無事に終えることができました。参加いただきました皆様には御礼を申し上げます。「道明寺・丞相名残り」を山城少掾の録音で聞いていただきましたが、その前にシューベルトのリートなどお聞きいただき・言葉と音楽とフォルムの関連を考えた辺りが「歌舞伎素人講釈」独自のアプローチであります。なお、次回は7月2日(日)を予定しております。

2006/2/14

「近松門左衛門」  

サイトに「近松門左衛門の時代物と世話物」という記事をアップしました。これは先日の第4回公開講座のテーマが「三大歌舞伎を考える」でしたが、その導入として書かれたものです。フォルム論の導入としても・近松時代物論としてもお読みいただけます。


2006/2/17

「椿姫」  

サイトに音楽ノート・ヴェルディ:歌劇「ラ・トラヴィアータ」を追加しました。日本では「椿姫」と呼ばれている歌劇です。これ誤訳というわけではないが、ヴェルディの意図は汲んでいないタイトルなのです。(サイトの記事をお読みください。)これも誤訳というわけではないが、モーツアルトの「Zauberfloete」も「魔笛」というよりは「魔法の笛」というのが本当はよろしいようですね。

 


2006/2/19

メルマガ登録が急に増加したので何があったかと思いましたら、「まぐまぐ・古きものを見直すメルマガ19誌」でご紹介いただきましたそうです。伝統的なものに対する関心が増しているならば嬉しいことですね。メルマガ173号の方は今度の日曜に出したいと思っています。まだ原稿が出来ていないのです。
 

2006/2/22

先日の公開講座では「菅原伝授手習鑑・道明寺」を取り上げたのですが、来月3月歌舞伎座では十三代目仁左衛門追善ということで「道明寺」をやるそうです。別にタイミングを合わせたつもりはなくて・三大歌舞伎のしょっぱな取り上げたのがたまたま「道明寺」だっただけのことですが。しかし、 吉之助も国立劇場での先々代の丞相さんは忘れられません。現在ではやはり当代のものですね。
 

2006/2/24

3月の歌舞伎座では同じく十三代目仁左衛門追善の「堀川」も顔ぶれ揃って期待されます。それとこのところ黙阿弥で初役をつづける幸四郎の「筆幸」は興味深いものになるような気がしますね。
 

2006/2/25

団十郎が無事退院・しばらく自宅で療養を続けるとのことですが、復帰への目処がついたということでしょう。とにかく無理せず・あせらず療養願いたいと思います。歌舞伎界には欠かせない大事なキャラクターですからね。
 

2006/3/1

サイト「雑談」は「歌舞伎の生(なま)感覚」についての考察です。絶えず変化し固定しない感覚こそ「古典」に対立するものなのです。現代においては「伝統」とか「古典」というものの正体を見極めずしてやみくもに冒険しても型壊すだけのこと。面白いだけじゃ歌舞伎じゃないと言いたいですね。(いや特定の役者さんのことを言っているのではありません。)
 

2006/3/2

4月の歌舞伎座は六代目歌右衛門五年祭だそうで、そう言えば平成13年3月31日に歌右衛門が亡くなって・もう五年になるわけですね。この五年はほぼ「歌舞伎素人講釈」の5年と重なるわけです。吉之助にとっての歌右衛門の重さは言うまでもないのですが・「歌右衛門以後」ということの意味を改めて思います。
 

2006/3/5

サイトの「舞台の記憶」コーナー向けに最近の舞台を材料にした随想・論考をと考えておりまして・いくつかの文章は手を付けているのですが、別に気になっている事項がいろいろありまして現在寄り道中であります。よって本日お届けのメルマガ第174号もそんな感じとなりました。近日に折口信夫の女歌論からの論考をサイト「雑談」に連載をします。
 

2006/3/7

ニュースによれば団十郎さんが5月歌舞伎座の「外郎売」で舞台復帰とのこと。まずは早い復帰に安堵。
 

2006/3/8

サイトの雑談には「をむなもしてみんとて」を4回に分けて連載します。女形の芸についてのちょっとした考察です。このタイトルは何か?というのは「その1」だけ読んだのでは分かりません。続きをお楽しみに。
 

2006/3/11

本日は歌舞伎チャンネルで昨年11月に1日だけ上演されたポール・クローデルの舞踊詩劇「女と影」(中村福助・出演演出)の放送を見ました。これは大正12年に五代目福助が羽衣会で初演した作品の再演ですが、この時代にこうした実験的試みをしたのは大したものだなと・その冒険心に感心させられました。舞台は分かりやすくて・なかなか良かったと思いました。
 

2006/3/14

このところ杉花粉の影響で執筆なかなか進まずですが、サイト雑談に連載している「をむなもしてみんとて」が終了しましたら、『かぶき的心情における「と(Und)』を連載する予定です。これは先日の「近松心中論」の続編です。他に「勧進帳」の初演稿による考察を考えております。
 

2006/3/16

本日は久しぶりに本の紹介。沢史生著「鬼の日本史」(上下巻)(彩流社)、これを読むと日本史には意図的に秘された闇の部分があるというのがよく分かります。この領域にあまり踏み込むとキリないのですが、歌舞伎を深く理解する時に・こういうことを知っているといないのでは大きな違いですね。

サイト「松岡正剛の千夜一冊」:834夜:「鬼の日本史」
 

2006/3/19

本日も本の紹介。ポール・クローデル著「天皇国見聞記」(新人物往来社)。先日の本欄で福助が上演した舞踊詩劇「女と影」について触れましたが、この作者による日本関連エッセイを集めたもの。クローデルは現代フランスで最も重要視される劇作家のひとりだそうです。日本ではその代表作「繻子の靴」(岩波文庫)が読めます。その昔、ジャン・ルイ・バロー劇団が来日して上演したことは知っていますが・見なかったのがちょっと悔やまれる。
 

2006/3/21

「黒鳥」  
 
クローデルの「天皇国見聞記」ですが、原題は「朝日のなかの黒鳥」と言います。「黒鳥」というのはクローデルという音がクロドリに似ているからそう付けたのだそうな。「朝日の国」というのはもちろん日本のこと。本を読んでいますと・日本への憧憬がひしひし感じられます。
 

2006/3/23

渋谷コクーン「四谷怪談」に出演の勘三郎がその扮装のまま・パルコ劇場の「決闘!高田馬場」の舞台に乱入とか?いろいろ話題を振りまいてくれますね。渋谷はにぎやかなようです。
 

2006/3/26

本日はメルマガ第176号「勧進帳の変遷」を配信します。このように原作「安宅」から「勧進帳」初演本・再演本・現行本を比較したような試みはありそうでいて・他では見たことないのだけど・非常に面白い試みだと自負しています。あっちゃこっちゃ見比べるのは面白いことなのですが、文章にするとごちゃごちゃになるので・読み物に整理するのが難しいから論文がないのかな。
 

2006/3/27

「演劇界」5月号の表紙は仁左衛門の丞相さん。その頬につたう涙。残念ながら今月の舞台は見れず仕舞いでしたけど、歌舞伎チャンネルの放送を楽しみにいたしませう。
 

2006/3/29

4月歌舞伎座は歌右衛門5年祭ということで・所縁の演目が並んでおりますが、歌右衛門は意外と(と言っては何だが)新作が良ろしうございましたね。北条秀司の「井伊大老」のお静もそのひとつです。初代白鸚襲名の時の舞台を思い出します。
 

2006/3/30

4月歌舞伎座の演目のなかでは個人的には歌右衛門を最後に見た舞台になってしまった「沓手鳥孤城落月」の淀君が思い出深いものですが、北条秀司の「狐と笛吹き」もなかなか良い芝居ですね。もっとも 吉之助はこれは歌右衛門では見ておりません。
 

2006/4/1

遅れましたが、昨日が平成13年3月31日になくなった六代目歌右衛門の命日でありました。情念を描けた稀有な女形であったと思います。いずれ歌右衛門の数々の役のビデオを見直して「私の歌右衛門」的な文章を書きたいものと思いますが、まだもうちょっと先の話かと思います。
 

2006/4/2

本日の上野の山の桜は満開。東京文化会館で「東京オペラの森」のヴェルディ:歌劇「オテロ」を見てきました。本来は小沢征爾が振る予定のもので・病気休演は残念でしたが、代役のフィリップ・オーギャンの手腕もなかなかのものでした。クリスティーナ・レーミッツの演出は「忍び寄る悪意・あるいはそこにある陰謀」であるのかな、面白い舞台でありました。
 

2006/4/5

このところ筆進まずですが、「歌舞伎におけるお金の役割」という論考をいま書いているところです。歌舞伎のドラマではお金が小道具になってるケースが多いですね。その深層心理を考えたいということです。もうすぐ出来ると思いますが、しばらくお待ちを。
 

2006/4/7

5月国立劇場は前進座公演で珍しい「謎帯一寸徳兵衛」を演るそうです。この外題は「なぞのおびちょっととくべえ」と読むのですが・面白いですね。主人公大島団七は「四谷怪談」の伊右衛門の原型とも言われています。前進座の南北ものは松竹歌舞伎とはまた違った面白さがありますから、これはお薦めしたいと思います。
 

2006/4/9

本日お届けのメルマガ第177号は「かぶき的心情とund」についての考察をお届けしました。「かぶき的心情」は歌舞伎素人講釈のメイン概念ですが・理念的には大分整理されてきたとはいえ、掘り下げればまだまだ追求することがありそうです。これは、まあ、吉之助のライフワーク的題材としてこれからも取り組むべき素材なのでしょう。
 

2006/4/10

先月のパルコ劇場での「決闘!高田馬場」について吉之助は見てませんが・葵太夫さんがご自身のサイトに観劇ご感想をお書きです。実に素直な目でみていらっしゃって・お書きになることいちいちよく納得できます。そういうことだろうなあと思いますね。
 

2006/4/11

サイトの「雑談」は「金がなければコレなんのいの」というシリーズ連載を始めました。タイトルは「お金がなければこんなことにはならなかったんだ」という意味でして・これは「五段目」の定九郎の台詞です。歌舞伎のなかでのお金のドラマの深層心理を考えようというわけです。
 

2006/4/15

5月歌舞伎座では菊之助が「保名」・海老蔵が「藤娘」を踊るとのこと。これ普通なら逆なのですが・こういう配役にしたところに意図があるのでしょう。果たして仕出かしてくれるか興味あるところです。
 

2006/4/19

17日から香川県琴平町の金丸座(通称・金毘羅歌舞伎)に行って来まして、今晩帰宅したところです。幸い天気も良くて・楽しい旅になりました。お芝居も楽しめました。観劇記というか・記事は後ほどアップいたします。


 


2006/4/21

日曜日に発行のメルマガ第178号は、先日見てきた金毘羅歌舞伎の舞台から海老蔵の「六段目」「かさね」を取り上げることといたします。
 

2006/4/22

金毘羅歌舞伎ではやはり三津五郎の出来が素晴らしく・最近のこの優の充実を実感させますね。舞踊2題はお手のものでもちろん良いものでしたが、「鞘当」の名古屋山三は時代離れしたふっくらした味わいあって感心しました。
 

2006/4/23

7−9月に勘三郎が襲名披露で地方巡業しますが、先日のニュースでは・金丸座ほか地方の古芝居小屋でも興行を行うとのことだそうです。ということで本年は金毘羅歌舞伎がもう一回あるということかな。
 

2006/4/24

サイトに「金毘羅歌舞伎訪問記」を掲載しました。ついでに吉之助が撮った写真も載せました。吉之助が思うには照明を工夫すればさらに江戸の雰囲気が出そうな気がしましたが、「暗くて舞台が見にくい」と苦情を言うお客さんが出るかも知れませんね。
 

2006/4/26

本日は本の紹介。アーノンクールは何を演奏するにしても・聴き手の感性を刺激してくる指揮者ですね。安心して聴かせてくれないのだけど、いつも気になる指揮者なのです。そのアーノンクールの著書「古楽とは何か」です。

松岡正剛の千夜一冊:第1032夜:「古楽とは何か」
 

2006/4/27

「福助」  
 
5月演舞場は福助が「娘道成寺」を踊りますが、東京では92年の襲名以来の14年ぶりだそうで・そんなにご無沙汰だったのかと吃驚。歌右衛門仕込みということですから期待したいところです。
 

2006/4/29

本日は東京江戸博物館での特別展「ナポレオンとヴェルサイユ展」を見てきました。当然ですが、歌舞伎とは全然関係ありません。本年が皇帝戴冠200年だそうで、ということはちょうど歌舞伎の歴史の半分の時点ということです。ナポレオンが皇帝に祭り上げられていく経過はどう考えても不思議でありますが。
 

2006/4/30

本日は近くの町に来たウィーン少年合唱団のコンサートを聞いてきました。さすが「天使の歌声」ですねえ。魂が洗われるような清らかな声であります。
 

2006/5/1

ウィーン少年合唱団が山田耕作の「赤とんぼ」を歌いましたが・一音一語をしっかり守っている・つまりひとつの音節の音程を音符ひとつ分しっかり保っていることに感心しました。だから日本語の発音は多少怪しくとも曲の格調を正しく映しておりました。それにしてもこの曲はよく出来てますね。

サイト記事「音楽と言葉」
 

2006/5/2

歌舞伎座は昨日が初日。団十郎復帰の「外郎売」の舞台をテレビのニュースで見ました。まずは目出度い。お元気そうでなによりですが、無理せず・勤めていただきたいですね。
 

2006/5/4

国立劇場が10月から3ヶ月連続で「元禄忠臣蔵」全10編を連続上演するとのことです。真山青果の理屈っぽいのが、吉之助は大好きです。「御浜御殿」は日本では珍しい本格的対話劇でありますね。
 

2006/5/7

本日は本の紹介。現在、東京都美術館で「プラド美術館展」が催されています。さすが名品揃いですね。そこでドールスの「プラド美術館の3時間」(ちくま学芸文庫)がお薦めです。ドールスにはそのバロック理論で吉之助は強い影響を受けています。サイトの「かぶき的心情」とバロックをご参照ください。
 

2006/5/8

「椿姫」  
 
昨晩の教育テレビで・2005年ザルツブルク音楽祭での「椿姫」(ネトレプコ主演)が放送されましたが、ウィリー・デッカーの演出はヴィオレッタの生と死を対照させて・読みが鋭く・しかも分りやすい優れた演出であったと思います。歌手もオーケストラも好演でさすがに評判になっただけのことはありました。
 

2006/5/9

「萬斎」  
 
同じくBS2での放送ですが、野村萬斎の「敦(山月記・名人伝)」の舞台も素晴らしいものでした。この舞台について萬斎は「狂言師の象徴である足袋と(ござる)を捨てて勝負する」と言ったようですが、凄いことです。
 

2006/5/11

本日は本の紹介。フランスの中世史家ジャック・ル=ゴフの「中世とは何か」(藤原書店)。原題は「中世を捜し求めて」。ル=ゴフの自伝的要素を含む分りやすい対話形式による西欧中世史論。いずれ「歌舞伎素人講釈」のなかでも参考にさせてもらうことになると思います。
 

2006/5/13

7月歌舞伎座は玉三郎を中心に「海神別荘」・「天守物語」ほかオール泉鏡花プロということだそうで、さながら玉三郎リサイタルの趣です。まあ、鏡花作品はいずれは歌舞伎に組み入れられるレパートリーかなとは思います。
 

2006/5/14

本日のメルマガ第180号で「金がなければコレなんのいの」の連載は終了です。これに関連して今回の論考で鶴屋南北に触れなかったのはちょっと物足りないところだったかも知れません。もちろん南北劇での金の扱いについても興味あるところです。これについては機会を見て別に書きたいと思っています。
 

2006/5/17

サイト「雑談」の方は音楽関連の話題になっています。このところあっちこっちの資料を漁っているもので歌舞伎の論考の執筆が進んでおりません。雑談の方もちょっと横道それていますが、吉之助のなかでは深層のところで歌舞伎と通じておりますので。
 

2006/5/19

7月2日に第5回公開講座を行うこととして・サイトにご案内を掲載しました。まだ原稿は出来ておりませんが、金毘羅歌舞伎や黒森歌舞伎のことなどを取っ掛かりにしながら・三大歌舞伎を考えたいという趣向であります。
 

2006/5/21

報道によれば「浅草に江戸時代にあったような芝居小屋を」と言う署名運動が始まるそうな。発起人のひとりには勘三郎が。この人がいなければやはり始まらないな。早ければ3年後の実現を目指すそうな。頑張ってください。
 

2006/5/23

西欧モダン・アートの入門書としては、この本がお薦めです。海野弘著「アール・ヌーボーの世界」(中公文庫)吉之助は歌舞伎・浮世絵など江戸の文化は西欧近代文化の先取りですということをずっと言っていますが、この本読むとそのことがよく分かると思います。
 

2006/5/24

サイトの音楽ノートにクルト・ワイルの「三文オペラ」を掲載しました。有名なのは「メッキーのモリタート(マック・ザ・ナイフ)」ですが、その他にも「海賊ジェニー」とか「楽しい生活のバラード」・「かわりにのソング」とか面白いソングがいっぱいです。岩波文庫で読めます。
 

2006/5/27

本日BS2で金毘羅歌舞伎の放送は吉之助が見に行った4月18日の舞台の録画映像であるようです。三津五郎の踊り(浅妻船・まかしょ)はまことに結構なものでありましたね。
 

2006/5/28

今月31日からロンドンで海老蔵・亀次郎が歌舞伎公演だそうな。演目は海老蔵の「藤娘」と海老・亀の「かさね」だそうな。無形文化遺産指定後初の海外公演ですね。さてその成果は如何に。
 

2006/5/31

幸四郎さん夏の巡業はまた「勧進帳」とか。秋の巡演も「勧進帳」だと。4月に800回を達成し、次なる目標9百回に向けてひた走る高麗屋。しかし、ファンとしては他の役も見たいのだが。
 

2006/6/2

ちょうど一ヶ月先の話になりますが、7月2日公開講座「三大歌舞伎を考える・その2」は映像資料は準備できましたが、金毘羅歌舞伎をマクラにしまして・「道明寺」と「 鮓屋」を材料にするつもりでおります。御参加をお待ちしています。
 

2006/6/3

本日は本の紹介。橋本治氏の「ひらがな日本美術史」(新潮社)橋本氏の著作はその文体が吉之助にはちょっと合わないので敬遠しておりましたが、この本は別。やっぱりその着眼点のユニークさには感心するところありますね。
 

2006/6/4

サイト「写真館」に「内輪歩きを考える」を掲載しました。歌舞伎の芸に、着物のデザインや浅間山の噴火にからんだ経済状況の変化まで関連してくるというのは面白いことです。この関連を読み解くのは容易なことではないですが、非常に興味深い論考かと思います。
 

2006/6/6

内輪歩きの問題については・吉之助の師匠である武智鉄二の「身体行動論」が最も示唆あるものです。社会経済と身体行動の関連(なかなか難しいテーマですが)についてのヒントがあるのはこの本だけかも。定本武智歌舞伎・第1巻(三一書房)所収。古本屋か図書館でどうぞ。
 

2006/6/8

週刊「人間国宝」創刊第3号のテーマは「歌舞伎の女方」。歌右衛門の揚巻の表紙に思わず買ってしまいましたが、まずまず良くまとまっているのでは。このあと歌舞伎の立役や文楽関連も続刊とか。
 

2006/6/9

サイトの「雑談」に人形振りについての考察を少し書きました。非常にバロック的な興味深い技法ですが、人形振りについてはそのうちまとまった文章にするつもりでいます。とりあえずそれまでの下書きみたいなものです。
 

2006/6/10

本日は上野東京文化会館でボローニャ歌劇場来日公演・ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」を見て来ました。フランス革命を背景にしたオペラですが、このオペラは旋律がいいんです。小泉首相も来ておられました。
 

2006/6/12

吉之助はベジャール大好きなんですが、ベジャールが歌付き音楽を使う意図がどうも理解できません。やっぱりバレエは歌なしが本義じゃないかね。6月はベジャール・バレエ団がクイーンの曲を使って「バレエ・フォー・ライフ」を公演とのこと。
 

2006/6/13

このところサイト「雑談」は単発記事が続いております。本日は江戸時代に「浮世絵の始祖」と言われて・「吃又」のモデルとされた岩佐又兵衛のことです。ご参考に関連サイトの記事を紹介します。
「岩佐又兵衛は浮世絵の始祖として蘇るか」
「埋もれた宝を発掘する:岩佐又兵衛」
 

2006/6/14

指揮者の岩城宏之氏が死去(73歳)。指揮だけでなく・文筆でも活躍されました。岩城氏のエッセイに「フィルハーモニーの風景」(岩波新書)がありますが、とても楽しい本です。ご冥福をお祈りいたします。
 

2006/6/17

第5回公開講座(7月2日)もあと2週間に迫りました。講座の準備は大体出来ましたが、お日柄が悪いのか(?)・今回は参加申し込みのペースがいまいちなのです。ご興味おありの方は是非御参加してください。詳細はサイトの「公開講座のお誘い」の記事をご覧下さい。
 

2006/6/18

サイト「写真館」に「振袖について考える」という記事追加しました。歌舞伎のお姫様の袂(たもと)の使い方は印象的ですが、このことを考えます。これは先日のメルマガの「内輪歩きを考える」の続編になるものです。
 

2006/6/20

文楽三味線の野澤喜左衛門氏が亡くなりました。68歳。ご冥福をお祈りいたします。
 

2006/6/23

歌舞伎座の幕見で「暗闇の丑松」を見てきました。(幸四郎の丑松、福助のお米)まあ、何と言いますか・まったく真っ暗闇のお芝居ですが、この暗さがこの時代に似合ってきましたね。しかし、気になるのは幕見席までみんな声が届いてないことです。こんな暗い芝居で大きい声出せるかということもあるかも知れませんけどね、声を隅々まで通すのはお芝居の基本だと思いますよ。

暗闇の丑松の幕切れについて


2006/6/25

「見得」  
 
サイトの写真館に「見得〜クローズアップの手法」という記事を追加しました。歌舞伎の見得の技法のバロック的な側面が理解できると思います。
 

2006/6/28

7月大坂・松竹座では藤十郎の襲名興行。ご当地での興行は是非成功させてもらいたいものです。「娘道成寺」も気になりますが、吉之助が期待しているのは「夏祭」です。上方らしい味をどう出すか興味あるところです。大坂へ見に行けないのが残念でありますが。
 

2006/7/1

「謎帯」  
 
来週の土曜日BS2で5月前進座で上演の「謎帯一寸徳兵衛」の舞台を放送だそうで・私は舞台を見られなかったので大変有難いですねえ。これなら高い視聴料払っている価値もある・と一応NHKを褒めて置きましょうね。METの来日公演も放送して欲しいが無理だろうな。
 

2006/7/2

本日は第5回公開講座「三大歌舞伎を考える・その2」を無事終了いたしました。金毘羅歌舞伎・黒森歌舞伎の映像などご覧に入れながら・江戸の昔の芝居を考えつつ、「鮓屋」・「道明寺」など時代物の他者的演劇のフォルムを考えるという趣向でありました。参加いただきました皆さまには御礼申し上げます。
 

2006/7/4

サイトの記事「見得〜クローズアップの技法」のなかで・プルーストの写真のクローズアップに関する文章を引用しましたが、ご参考に「失われた時を求めて」のとても分りやすい入門書を紹介しておきます。海野弘著「プルーストの部屋」(中公文庫・上下巻)これはお薦め。
 

2006/7/5

「吃又」  
 
サイト写真館に「岩佐又兵衛と吃又」という記事を追加しました。又兵衛の絵の題材はヴァラエティに富んでおり・画家としてはなかなかのものと思います。サイトに掲載の「人麿・貫之」画はむしろ手遊びの作品と思いますが、吃又のイメージには一番近いものかと思います。
 

2006/7/8

今月(7月)歌舞伎座のオール泉鏡花プロは、いずれ新派の演目は歌舞伎のレパートリーになることと思うので「先取り」と言うことと思いますが、四演目一挙上演はやはり玉三郎でないと出来ない企画でした。しかし、初日からカーテンコールはあまりよろしくないことと思います。玉三郎の見識をちょっと疑いますね。
 

2006/7/10

サイト「雑談」にブルーノ・タウトの記事をアップしました。タウトが日本に滞在したのはわずか3年だそうですが・その著作に見られる考察は凄いものです。教えられるところが随所にあります。講談社学術文庫で「日本文化私観」と「ニッポン」の2冊が読めます。
 

2006/7/13

「鷺娘」  
 
サイトに「鷺娘の責め」という記事を追加しました。これはサイトの単発記事のなかでは一番短い文章かも。最近はちょっと長文書くのが億劫になってまして・小品が多くなってますね。
 

2006/7/14

歌舞伎座の泉鏡花プロを見てきました。いずれも素敵な出来でありましたよ。玉様ファンも海老様ファンも満足することでしょう。鏡花作品はいずれ歌舞伎のレパートリーに組み込まれるでしょう。本日のカーテンコールは昼の部はありましたが、夜はなし。しかし、やはりカーテンコールは不要ですね。

超自我の幻想〜海神別荘

2006/7/15

「山吹」  
 
サイトの「舞台の記憶」コーナーに鏡花の「山吹」についての観劇随想を掲載します。三島由紀夫が渋沢龍彦との対談(昭和44年)のなかで「山吹」のことを激賞しています。まったく三島好みの芝居だと思いますが、ここではちょっと違った角度から「山吹」を見てみたいと思います。
 

2006/7/17

本日は京都の祇園祭のクライマックス山鉾巡行に行って来ました。平安時代の御霊会に発する由緒あるお祭りであります。あいにくの雨模様でありましたが・それなりにお祭り気分を満喫してきました。

祇園会と御霊信仰

上の写真は神泉苑、下の写真は八坂神社。

下の写真は山鉾巡行。あいにくの雨模様。


2006/7/20

まだちょっと先の話ではありますが、第6回公開講座は11月4日(土)に両国の江戸博物館の会議室で行うことになりましたので、ご関心のある方はご予定ください。テーマは「三大歌舞伎を考える・その3」として「六段目と鮓屋」を考えております。
 

2006/7/22

サイトの写真館に今月17日に行って来ました京都祇園祭関連の記事を掲載しました。祇園御霊会(ごりょうえ)というのは・御霊信仰つまり歌舞伎の荒事のルーツでもあるわけですね。御霊信仰については・いずれ歌舞伎に絡めた記事を書きたいと思います。
 

2006/7/23

本日は三週間とちょっと間が開きましたがメルマガ第185号をお届けしました。このところ天候不順のせいか筆がちょっと湿っておるようです。メルマガに付記しましたが、近日中に鏡花の「海神別荘」についての論考をお届けする予定にしています。今晩はNHK教育で玉三郎の「アマテラス」の放送があるので・これを見てみたいと思います。
 

2006/7/25

サイトに今月(7月)歌舞伎座の「海神別荘」についての論考を掲載しました。舞台も面白かったですが、心理学的にも非常に興味深いお芝居であります。
 

2006/7/28

本日は久しぶりに「雑談」の記事を更新して、先日アップした「海神別荘」の論考「超自我の幻想」についての補足記事を載せました。「オモシロイ」についての短い考察です。


2006/7/31

雑談に「海神別荘」の補完記事「鏡花のかぶき的心情」をもう一本追加します。鏡花にも・綺堂や青果と同じ時代的心情があるということです。ここらが鏡花を歌舞伎に取り込んでいく取っ掛かりであると思っています。


2006/8/4

ドイツの名ソプラノ:シュワルツコップが亡くなりました。シューベルトやヴォルフ、R・シュトラウスなどのドイツ歌曲の素晴らしさ・読みの深さ、「薔薇の騎士」のマルシャリンの美しさ。ご冥福をお祈りします。


2006/8/5

本日は久方ぶりで国立能楽堂へ行ってきました。演目は狂言「茶壷」と能「安達原」でしたが、歌舞伎の下調べと言うわけではありません。ふだんは歌舞伎中心ですが、能狂言もよろしいですなあ。


2006/8/6

暑い、暑い。ところで、ネットテレビでロンドンの海老蔵の「藤娘」・「かさね」の舞台が簡単に見られちゃうとは、凄い時代になったもんですね。


2006/8/9

本日は本の紹介。新渡戸稲造の「武士道」(1938年)は「吉之助流・武士道論」のなかで引用もしましたが、これが英語で書かれた本だというのは当時の方はホント志高いことだと思いますね。いまでも色褪せない名著であります。
「松岡正剛の千夜一冊」第605夜・新渡戸稲造:「武士道」


2006/8/11

本日は東京文化会館で「世界バレエ・フェスティヴァル」のBプロを見てきました。もちろんバレエは日本舞踊とは身体の使い方はまったく違いますが、身体の軸がびしっと決まってないといけない点では舞踊の基本は一緒なのです。ショパンの音楽を使ったノイマイヤー振り付けの「椿姫」が興味深く感じられました。


2006/8/12

サイト「雑談」に「科学的な歌舞伎の見方」というシリーズをしばらく連載します。科学的な見方とは何かということを考えます。まだ最後までできてませんので・どんな展開になりますやら・本人にも分りませんが・お楽しみに。


2006/8/15

サイト「雑談」では「科学的な歌舞伎の見方」ということで・導入部で斉藤隆介氏の創作民話を取り上げています。「八郎」や「ベロ出しチョンマ」などはみなさんも小さい時に読んだだろうと思います。「斉藤隆介全集・全10巻」が岩崎書店から出ています。


2006/8/17

このところの暑さで思考能力が落ちているようで・筆が進みませんが、「雑談」の連載の方はそろりそろりと進めます。ちょっと必要があって折口信夫の「かぶき讃」(中公文庫)をパラパラめくっておりますが・この本は何気ない所にヒントがいっぱい転がっておりまして・ホントおろそかにできない本だなあと改めて感服しました。


2006/8/19

明日(20日)発行のメルマガ第187号は、長谷川伸の「暗闇の丑松」についての論考をお届けすることとしました。「歌舞伎素人講釈」では初めて取り上げる長谷川伸作品ということになります。


2006/8/20

来月(9月)歌舞伎座の注目は、やはり幸四郎(松王)・吉右衛門(源蔵)兄弟が真っ向からぶつかる「寺子屋」でしょうかね。これは楽しみ。


2006/8/23

来月(9月)歌舞伎座は秀山祭ということで・これは初代吉右衛門生誕120年記念だそうです。(秀山は吉右衛門の俳号)ところで、六代目菊五郎追善興行というのはありましたかね。団菊祭の「菊」は、あれは五代目菊五郎なんですが。


2006/8/25

全然歌舞伎と関係ありませんが、冥王星が太陽系惑星のなかからはずされちゃったのは、個人的にはチト寂しいですね。ホルストが組曲「惑星」を作曲した時には冥王星はまだ発見されていなかったので・組曲は7曲(地球を除く)なのですが、これで数がまた一致したわけです。


2006/8/27

もうすぐ夏も終わりですが・夏芝居と言えばやはり「四谷怪談」に止めを刺しますね。このお芝居は「忠臣蔵」と裏表に仕組まれているのですが・どちらが表でどちらが裏なのか・はたまたどちらも表なのか・よ〜く考えてみる必要がありそうです。
松岡正剛の千夜一冊・第949夜:「東海道四谷怪談」


2006/8/29

本日は勘三郎さんが吉之助の街に来てくれましたので・見に行きました。「身替座禅」親父さんの舞台を思い出しますが、今はやはり当代のが一番でありましょうかね。口上では夏休みギリシアで「アンティゴネー」の新演出を見てきたそうで・「現代に生きる歌舞伎を目指す」決意を改めて語ってました。


2006/9/1

9月になった途端に涼しくなりました。9月歌舞伎座は吉右衛門(与兵衛)と富十郎(長五郎)が共演の「引窓」も気になるところです。「引窓」は人情味のあるいい芝居ですね。明日が初日のようです。


2006/9/3

次のメルマガ188号は「東海道四谷怪談」を予定しておりまして・原稿はほぼ出来ていますが、ちょっと原稿を寝かす必要があるので・本日(3日)の発行は見送ることにしました。完成しましたらお届けします。


2006/9/5

メルマガ第188号をお届けしました。「四谷怪談」における「忠臣蔵」の役割を考えたものです。本稿はもともと「四谷怪談」の舞台ビデオを素材にした観劇随想の形で書き始めたものですが、前半が重くなりすぎてバランスが悪かったので・単独の論考に切り替えて書き直しましたので、ちょっと時間が掛かりました。


2006/9/7

吉右衛門さんの談話によれば・9月歌舞伎座の秀山祭は5月演舞場公演と並んで若手を起用しつつ・継続的に続けていく催しにしたいとのことのようです。歌舞伎を引っ張っていく責任感と気概を感じますね。頼もしいことだと感心をいたしました。


2006/9/9

本日の朝日新聞、作家ノーマン・メイラー氏の談話が載っています。「米国はゆっくりと危険な・全体主義的状況に近づいている」との警告。まもなく五年目の9・11ですね。


2006/9/10

「社会」とは異質な「世間」をキーワードにした著作「『世間』とは何か」などで知られる歴史学者・阿部謹也先生が死去されました。本中の近松の解釈は吉之助の見解とはちょっと異なるところはあるのですが、著作は大いに参考にさせていただきました。合掌。
阿部謹也:「世間とは何か」(講談社現代新書)


2006/9/11

三島由紀夫の映画「憂国」の背景音楽はワーグナーの「トリスタン」ですが・演奏者の情報がこれまで不詳でした。これはレオポルド・ストコフスキーの編曲・指揮によるフィラデルフィア管のビクター録音(1932年)であることが明らかになりました。三島研究者にも貴重な情報だと思います。「憂国」についてはいずれ何か書く予定です。詳しくは下記サイトの「可変日記」(7/9・7/13・9/2の項)をご覧下さい。
山崎浩太郎のはんぶるオンライン


2006/9/13

ストコフスキーの「トリスタン」は、前奏曲・第2幕の音楽・終幕愛の死をつなぎ合わせた独自の編曲でして・映画では前奏曲を除いた部分が使用されています。映画のドラマと音楽の流れがよく合っていて・その辺に三島の工夫もあるものと思われます。この件についてはサイトの「近松心中論」が参考になるものと思います。


2006/9/15

本日はフィレンツェ歌劇場の「トゥーランドット」のゲネプロを鑑賞してきました。(横浜・神奈川県民ホール)大道具が移動する時にギーッと音を立てて演奏中断というハプニングもありましたが、面白く見てきました。しかし、演奏止まってもオペラだとあんまり気にならんもんだねえ。メータの指揮はなかなか手馴れたもので・歌手は歌いやすかろうと思いました。


2006/9/16

「トゥーランドット」の演出チャン・イーモウは中国の映画監督だそうですが、日本人の眼にも違和感ない中国らしい演出でありました。「蝶々夫人」でもそうですが、西欧人のイメージを損なわないようにしつつ・本国人が「らしく」仕立て直すのは結構骨なんですね。 吉之助の見た「トゥーランドット」の舞台のなかでは1986年に来日した 英国ロイヤル・オペラのアンドレイ・シェルバンの演出が強く印象的に残っています。


2006/9/18

本日はフィレンツェ歌劇場の「ファルスタッフ」を鑑賞してきました。(東京文化会館)ヴェルディ晩年の傑作でありますが、その音楽の自由闊達さに改めて感嘆。やっぱりヴェルディは天才だ。ロンコー二の演出も、指揮メータ、タイトルロールのライモンディ以下アンサンブルも見事で音楽を堪能しました。


2006/9/19

来る11月4日(土)に第6回「歌舞伎素人講釈」公開講座を東京江戸博物館で行います。テーマは「三大歌舞伎を考える・その3」として「六段目と鮓屋」を取り上げます。詳しくはサイトのトップページのご案内をご覧下さい。


2006/9/21

本日は「ウィークリー女子まぐ」の今週のお薦めメルマガで「歌舞伎素人講釈」をご紹介をいただきました。有難うございました。次号第189号は「一谷嫩軍記・組討」についての舞台随想を近日にお届けする予定です。このペースだと年内の200号発行は無理だろうなあ。


2006/9/23

来月(10月)歌舞伎座の「熊谷陣屋」は幸四郎の熊谷。吉之助としては、本年2月歌舞伎座の新演出「組討」を踏まえたものとして・熊谷の心情を幸四郎がどう突っ込んで描くかということが焦点だと思っていますが、あんまり「泣きの花道引っ込み」になりませんように。そこだけが心配ではありますが、期待しております。


2006/9/25

文楽人形の・人間国宝・吉田玉男師匠が亡くなられたとのこと。思い出す舞台はいろいろありますが、人形もさることながら・その凛とした立ち姿が目に浮かびます。またひと時代去りましたねえ。ご冥福をお祈りいたします。


2006/9/27

10月名古屋・御園座は藤十郎襲名披露「盛綱陣屋」。初代鴈治郎の型で二杯道具という珍しい演出だということなので・興味あるところです。残念ながら・名古屋までは遠征できませんが、こういう珍しいのはNHKか歌舞伎チャンネルで映像で残してくれますと有難いのですが。


2006/9/28

「ウイークリーまぐまぐ」に引き続き・「カプライト・ニュース」の「日本の歴史や伝統文化に触れるメルマガ」で「歌舞伎素人講釈」を紹介いただきました。日本の伝統文化や歌舞伎などへの関心が特に若い方に高まっているのならば嬉しいことです。内容は重いメルマガですが、分るところだけツマミ読みで十分なので・とにかく読んでみて・芝居を見てみて・そしてサイトでも見てみる、そうすると何だか分ったような気がだんだんしてくると、それでいいのじゃないかと思いますね。


2006/9/29

サイト「雑談」に「ドン・ジェヴァン二と伊右衛門」という論考を連載します。これは先般の「時代物としての四谷怪談」の続編になります。モーツアルトの「ドン・ジョヴァン二」とどういう風に絡んでいくか・吉之助の論理展開をお楽しみください。


2006/10/1

10月から3ヶ月で国立劇場40周年記念公演ということで・真山青果の「元禄忠臣蔵」一挙上演だそうです。国立劇場ならではの企画で・期待されます。脚本は岩波文庫で手軽に読めます。日本人は元来忠臣蔵好きでありますが・青果はそこに迎合しているようでいて・実はしたたかに批評眼を加えております。できれば本を先に読んでから舞台をじっくり見たいところです。


2006/10/2

10月歌舞伎座・夜の部の「髪結新三」ですが、幸四郎の新三はどうやら初役のようです。ここ数年黙阿弥物をコツコツと手がけてますが、いよいよ・・というところですか。苦味のある新三を見せて欲しいですね。


2006/10/4

毎週火曜日・教育テレビの「スーパー・ピアノ・レッスン」・今月はミシェル・ダルベルト氏によるリストのロ短調ソナタですが、これが非常に面白いです。生徒の演奏に的確なアドバイスをして・模範にサラリと弾いてみせるのが、この難曲の構造の妙が浮き彫りになるように見事で・感心しきり。こういう感じで歌舞伎の講座ができないものかと考えてしまいます。


2006/10/6

国立劇場の「元禄忠臣蔵」連続上演ですが、10月は吉右衛門・11月は藤十郎・12月幸四郎が内蔵助を演じるそうです。もちろん一人で通すのが理想でありますが、考えようによっては・なかなかうまい分担になりました。吉之助の記憶にはやはり白鸚(先代幸四郎)の内蔵助が強烈に残っていますが、さて三人三様どんな内蔵助を見せてくれるでしょうか。


2006/10/6

国立劇場の「元禄忠臣蔵」連続上演ですが、10月は吉右衛門・11月は藤十郎・12月幸四郎が内蔵助を演じるそうです。もちろん一人で通すのが理想でありますが、考えようによっては・なかなかうまい分担になりました。吉之助の記憶にはやはり白鸚(先代幸四郎)の内蔵助が強烈に残っていますが、さて三人三様どんな内蔵助を見せてくれるでしょうか。


2006/10/7

明日(8日)発行のメルマガ「歌舞伎素人講釈」第190号は最近発掘された三島由紀夫の映画「憂国」映像についての論考といたします。もちろん歌舞伎との深い関連のなかで書かれています。


2006/10/9

サイトの「義太夫狂言を読む」は「熊谷陣屋」以外の記事を追加していませんでしたが、大幅改装するため・当面閉じることにしました。記事をチョコチョコ追加しながら十作品程度の記事を並行して進めますので・時間が掛かるかと思います。見られる状態になりましたら・公開します。


2006/10/11

今後のメルマガのテーマですが・「時代と世話を考える」ということで・いくつかの作品を個別に取り上げて・作品のフォルムを連続して考えていくことを考えています。「吉之助流・フォルム論」であり、科学的な歌舞伎の見方の具体的展開ということになるでしょう。最初は三大歌舞伎から始めたいと思っています。多分、少なくとも十作品程度は取り上げることになるだろうと思います。


2006/10/13

本日はクラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管のコンサートを聴いてきました。(サントリー・ホール)うっかりマーラーの第6交響曲一曲プロだとばかり思っていたら、前プロでモーツアルトのコンサート・アリアが3曲あって・すごく得した気分に。おまけにK.418「ああ、できることならあなたにご説明したいものです」はモーツアルトの曲のなかでも・吉之助の最も愛する曲のひとつであります。新人ハル二ッシュの歌唱は素直で美しく・アバドのサポートも素敵。


2006/10/14

アバドのマーラーは現代の指揮者のマーラーのなかでも最もお薦めできるもののひとつでしょう。今回の第6交響曲でも抑制の聴いたいい演奏を聴かせてくれました。中間楽章を軽めにするのも納得ですが、両端楽章は緊張感溢れる演奏でした。アバドは見た所体調は完全に戻ったようで安心しました。フィナーレは圧巻でありました。


2006/10/15

仏の音楽雑誌が選んだ欧州のベストオーケストラ・ランキングで、ウィーン・フィルが1位、ロイヤル・コンセルトヘボウ管が小差で2位、ベルリン・フィルが3位となったそうです。吉之助はウィーン・フィル好きなこと人後に落ちませんが、好みを排して考えるとコンセルトヘボウ管がベストじゃないかと最近の録音聴くたびに密かに思いますね え。それほどこのオケの弦は魅力的です。それと木管も。


2006/10/16

今月(10月)国立劇場の「元禄忠臣蔵・第1部」がなかなか評判よろしいようです。青果の芝居は日本に初めて登場した本格的台詞劇だと思いますが、これを歌舞伎らしく音楽的に聞かせるのはなかなか難しい。下手をすると臭くなりますしね。しかし、二代目左団次がこれをどう表現したかと想像するのは楽しいことです。


2006/10/17

今月21日から江戸東京博物館でボストン美術館所蔵の「肉筆浮世絵展」が始まりますが、展示品では北斎がやはり群を抜いて素晴らしいですね。海外では日本の画家と言えば・まず名前が挙がるのは北斎だそうですが、その理由がよく分かります。


2006/10/19

本日はアバド指揮ルツェルン祝祭管のコンサートを聴いてきました。(サントリー・ホール)曲目はポリーニとのブラームス・P協第2番とブルックナーの第4番。アバドとポリーニの組み合わせは録音では何度聴いたことか分らないですが・生では初めてです。気の合ったコンビだけにブラームスはがっちりした素晴らしい演奏になりました。ブラームスのぶ厚い響きが楽しめました。


2006/10/20

アバド・ルツェルンのブルックナー第4番「ロマンティック」はテンポは早めで・透明な響きがさわやかな仕上がり。第1楽章はちょっとエンジンが暖まってないようで・音楽が上滑り気味。しかし、第2楽章以後は持ちなおして・いい演奏になりました。


2006/10/21

明日お届けのメルマガ第191号は「時代と世話を考える」シリーズの第1回として「六段目」をお届けします。これは来月に予定されている公開講座の主題に関連したものですが、時代という概念が引き起こすところの演技様式あるいは発想は何かと言うことを考えていきたいと思います。対話形式にしたのは話の展開を自由にするためですが、しばらくこの形式を試みたいと思います。


2006/10/24

御園座の藤十郎の「盛綱陣屋」が評判良いようで・名古屋まで行けないのが残念です。藤十郎は「褒めてやれ」ではイキのつんだ・見事なタテ言葉を聞かせてくれたそうです。二杯道具については議論あるところかと思いますが、東京では見られない型ですので後学のためにも見たかったのですが。


2006/10/26

11月歌舞伎座昼は「伽羅先代萩」通しだそうで、歌舞伎座では本年1月に藤十郎で「御殿」が出ましたが、今回の通しの政岡は菊五郎で・それとの比較の楽しみもあるということです。最近の菊五郎さんはほとんど立役ですが、女形も捨て難い。これからも政岡だけでなく 、たまには女形演ってください。


2006/10/28

第6回公開講座が一週間後に迫りましたので、今日は当日お見せする予定の映像と草稿をチェック。演題は「六段目と鮓屋」です。松緑の権太、勘三郎の勘平(ともに先代)の舞台映像で当時の雰囲気を懐かしく思い出しました。


2006/10/29

NHK教育テレビの「スーパー・ピアノ・レッスン」ですが、ミッシェル・ダルベルト氏によるリストのロ短調ソナタの講義(5回シリーズ)が終了しました。充実したレッスンでしたね。受講生のフランソワ君も4回目当たりからの演奏は第1回の時より明らかに輪郭はっきりした音楽を作っており・その上達ぶりが目に見えるようでした。11月はシューマンの「謝肉祭」のレッスンですが・これは吉之助の大好きな曲なので・これも楽しみです。


2006/11/1

今月の国立劇場は「元禄忠臣蔵・第2部」ですが、「伏見撞木町」は「御浜御殿綱豊卿」と対をなして、大きな意味で「仮名手本忠臣蔵・七段目」に照応すると考えて良ろしいでしょう。「御浜御殿」で綱豊と内蔵助の姿が重なって見えて来れば最高だと思いますね。


2006/11/2

11月演舞場は菊之助が久しぶりに弁天小僧を演るそうで、これも楽しみです。菊之助襲名の時の舞台はサイトの「舞台の記憶」コーナーで取り上げましたが・女形の弁天小僧はなかなか面白いものでした。あれから10年・どう変化(成長)したか・興味あるところです。


2006/11/4

本日は江戸博物館で第6回公開講座を行いました。ご参加いただきました皆様に御礼申し上げます。今回のテーマは「六段目と鮓屋」。古典劇の「他者による許しの構図」が歌舞伎のなかに受け継がれて・どのように変容していったか・そのドラマにかぶき的心情による「許しの構図」の逆転を見るということでしたが、お楽しみ戴けましたら幸いです。


2006/11/5

パリ・シャトレ座の公演で・ラモーのオペラ・バレ「レ・パラダン(遍歴騎士)」を見てきました。CGやコンテンポラリー・バレエを組み合わせたファンタスティックな舞台で楽しめました。ラモーの音楽が生き生きと再現されていました。下記サイトで動画が見られますので・その魅力を是非ご覧下さい。
パリ・シャトレ座「レ・パラダン(遍歴騎士)」


2006/11/6

NAXOSレーベルの新譜CDで山田耕作の管弦楽曲集が出ました。前から聴きたいとは思っていましたが、長唄交響曲「鶴亀」というとても斬新な曲が入っています。「気持ち悪い」という感想をある人から聴きましたが、吉之助が聴く限り・とんでもない。明治の先達の挑戦を非常に興味深く聴きました。惜しむらくはこの録音、オケがちょっと引っ込み気味ですが。
山田耕作:長唄交響曲「鶴亀」、明治頌歌、舞踊交響曲「マグダラのマリア」
NAXOS: 8.55971J
詳しくは別稿「山田耕作の長唄交響曲」をご覧下さい。


2006/11/9

サイトの「雑談」でNHK教育テレビのミッシェル・ダルベルト氏による「スーパーピアノレッスン」について触れました。来年は「スーパーバレエレッスン」だそうで・これも楽しみです。歌舞伎舞踊に興味のある方は併せて「バレエレッスン」を是非ご覧下さい。日本舞踊もバレエも語法は違うけれど・根本は同じということが良く分ると思います。つまり軸がブレては駄目ということですね。


2006/11/11

今月の演舞場の花形歌舞伎は演目もなかなか興味あるものが揃っていて・切符の売れ行きも良いそうです。「千本桜・四の切」は松緑の演し物かと思ったら・広告よく見たら海老蔵の忠信であったので吃驚。しかも、猿之助の指導で宙乗りもするそうです。それにしても猿之助さんのご体調はどうなんでしょうかね。ご指導されているようなら順調に回復しているということだと思いますが。


2006/11/14

演舞場では昼の部の「勧進帳」も面白そうです。広告を見ますと・海老蔵のは目を剥いて富樫に突っ掛かっていきそうな弁慶ですが・こういう生(なま)な感じも若さの良さで・これにだんだん親父さんのような大きさが加わっていくのでありましょう。若いうちは何でも力いっぱいやるのがヨロシイことと思います。


2006/11/16

先日放送されたNHKBS2の名古屋・平成中村座の勘三郎の「鮓屋」(9月)の映像をちょっと見ました。まだ最後の部分しか見てませんが、勘三郎はなかなか気合い入ってましたね。解釈としてそれなりに納得できるものでしたが、全体に時代に傾き気味で・これが勘三郎の権太の特徴に思われました。これについてはそのうち機会を見て書くことにします。


2006/11/18

哲学者スラヴォイ・ジジェクのインタヴュー付きの「人権と国家」(集英社新書)が出ましたので・この著者の初めての新書本でもあるし・期待したのですが、ジジェクらしい面白い発言がいくつかあるのですが・全体としては何をテーマに編集したのか・焦点散漫な感じですねえ。まあ、しかし、軽めの(でもないが・もっと面白いのがハードカバーであるけど・値段が安いので)ジジェク入門書としてお薦めしておきます。


2006/11/20

メルマガ193号は「鮓屋における時代と世話」をテーマにお届けしました。メルマガ読めば分かりの通り、吉之助の考えでは「鮓屋」において最も重要な場面は権太が(首の入った)鮓桶を小脇に抱えて花道で見得する場面です。つまり、本人は知らねど足元に時代が忍び寄っているということであります。


2006/11/23

NHK教育テレビでの「スーパー・ピアノ・レッスン」でのシューマンの「謝肉祭」の講座が終了しました。「謝肉祭」は様々な旋律がパレードのように一見脈路なく・次々と繰り出されるので、悪く言うと「まとまりがなく」聴こえるのかも知れません(この曲大嫌いと言った友人がおりまして・それも何となく分りますが)が、吉之助には魅力的なおもちゃ箱のような曲なのです。


2006/11/24

演舞場昼の部に行って来ました。思えば吉之助は海老蔵も菊之助も松緑も初舞台から見てるわけです。いや、みんな頑張ってますね。それぞれの舞台なかなか面白ろく観ました。簡単に記します。松緑の青山播磨:綺堂の決め台詞と思われている台詞(例えば「伯母様は苦手じゃ」など)がちょっと浮き気味かな。単純に台詞を歌い上げるのが新歌舞伎の台詞回しなのではなく、むしろサラリと流すことです。寿海のいい映像が残っていますから、是非参考にして欲しいと思いますね。(以下後日に続く)


2006/11/25

海老蔵の弁慶:この優の踊り全般に言えることですが・腰高の踊りです。肩の上下動が大きく、さらに腰を落した時に上体が前屈みになります。だから肩の上下動に前後動が加わって・踊りが不安定に見えます。これは腰の落とし方が不十分のせいですが、この点を直せば延年の舞もぐっと良くなるでしょう。良い点:幕切れ本舞台の弁慶が笈を背負って花道に去る時、私がこれまで見たどの弁慶も「ちょっと先を急いでいるので・失礼」という感じで富樫に一礼して去りましたが、海老蔵は富樫に正対して・富樫をしっかり見て頭を下げておりました。富樫への感謝がはっきり見えました。些細なことですが・これは大事なことですね。(以下続く)


2006/11/26

菊之助の弁天小僧:役者振りが大きくなって良い出来ですが、肝心の見顕しのツラネが淡々として重く・沸き立ちません。ツラネを写実に根ざすことは悪くないですが、やはりリズム感と節回しが欲しいのです。芝居のなかで独立した「ソング」なのですから、そこに隔絶した空間が見えなければなりません。黙阿弥の七五調は難しいですね。(以上、サイトの方に当面書く予定ないので、ブログに簡単に記しました。)


2006/11/27

昨晩NHK教育TVでのアーノンクール指揮ウィーン・フィルの演奏会(曲目はモーツアルトの後期3大交響曲)。テンポの変化・アクセントの付け方・間の取り方などが独特な・「期待」に違わぬ聴き手に対して挑戦的なアーノンクール節を聞かせてくれました。ゴツゴツした感触のモーツアルトのなかに・思わぬバロック性が見えて・なかなか刺激的で面白く聴きました。


2006/11/28

演舞場追補。「番町皿屋敷」のお菊ですが、それまでの女形芸の感覚(陰に籠った・控えめな芸)では処理できない新しさがあると感じます。内面に激しい自己主張があるのです。そういう激しい女性は江戸時代にいなかったのか?そんなことはないでしょう。舞台上にいなかっただけのことです。二代目松蔦が演じたお菊はそんな女性だったと思いますけど。


2006/11/30

劇作家・木下順二氏が死去されたとのこと。山本安英と宇野重吉による「夕鶴」の舞台はよく覚えておりますし、平家物語の群読による「子午線の祀り」も印象的な舞台でありましたね。ご冥福をお祈りします。


2006/12/1

本日は松岡正剛氏の講演を聞いてきました。吉之助はもう三十数年前になりますが、初期の雑誌「遊」時代から読んでおりますが・お顔を拝見するのは初めてでした。考えてみると「歌舞伎素人講釈」も何となく「遊」的なところがあるのは・松岡氏の影響を受けているのです。今回のテーマは「読書術」についてでしたが、文章読むより分りやすくて・面白く聞きました。
松岡正剛の「千夜一冊」・千冊超えてまだまだ続きます。


2006/12/2

BS2で放送の10月国立劇場での「元禄忠臣蔵・第1部」を見ました。「歌舞伎らしく歌うこと」を意識してるのか・全体としてテンポが遅く台詞に抑揚をつけ過ぎで・リアルから離れる気配あり。もっともこれは最近の傾向で今回に限ったことではないですが。青果の台詞は急き立てる感覚が必要なのです。吉右衛門は父上(白鸚)の面影を感じさせる内蔵助でありましたね。


2006/12/3

片岡仁左衛門さん芸術院新会員に内定とのことです。おめでとうございます。


2006/12/4

松竹は「シネマ歌舞伎」で味をしめたかな?12月31日歌舞伎座でニューヨーク・メトロポリタン歌劇場公演を中継して「METライヴ・ビューイング」だそうです。レヴァイン指揮のモーツアルト「魔笛」だそうな。いずれDVDになれば6000円くらいのところでしょうが、これを歌舞伎座でみんなで楽しんで4000円は価値があるかどうか、さて・どうしようかな。


2006/12/7

ちょっと先の話ですが、来年2月24日(土)に第7回公開講座を開催の予定です。演題ですが・「三大歌舞伎を考える」シリーズはちょっとお休みにしまして、次回は「急き立てる台詞〜歌舞伎の台詞術を考える」と言うことにしたいと思います。歌舞伎の台詞における「急き立てる」ということの意味を考えます。興味お有りの方はご予定ください。


2006/12/9

BS2で放送の10月国立劇場での「元禄忠臣蔵・第2部」を見ました。藤十郎の内蔵助、梅玉の綱豊、どちらも素晴らしくて・充実した舞台でありましたね。藤十郎の内蔵助はどんなものかと興味ありましたが、柔らか味のあるなかにもしっかりしたものを感じさせ、ひと味違う内蔵助像を見せてくれました。

元禄忠臣蔵の二枚の屏風


2006/12/12

「元禄忠臣蔵・第2部」、梅玉の綱豊ですが・以前に見た舞台より台詞回しはるかに優れて、当り役と言っても良い出来でありました。今回のように「伏見撞木町」と合わせての上演であると・「御浜御殿」の意味がよく分かります。青果版「七段目」なのですが・「撞木町」と対になっての「七段目」なのですね。いずれこのことはメルマガでも取り上げようと思います。

元禄忠臣蔵の二枚の屏風


2006/12/13

松竹会長の永山武臣さんが死去とのこと。ご冥福をお祈りします。


2006/12/15

遅ればせながら・昨日(十四日)が赤穂浪士討ち入りの日であったわけです。討ち入りは元禄15年(1702)12月14日のことです。国立劇場では「元禄忠臣蔵・第三部」が上演中ですが、日本人はホントに忠臣蔵好きなのですね。


2006/12/16

BS2で放送の国立劇場の「元禄忠臣蔵・第3部」を見ました。現在上演中のお芝居をテレビでやってくれるとは有難いことですが、NHKもたまには思い切ったことしますね。「最後の一日」の幸四郎は威厳のある内蔵助ですが・ちょっと悟り過ぎの感があるのと、台詞に粘りが強いように思えます。最後の「どれこれからが私の番。ご免くださりましょう」なんて台詞はサラリ流した方が良いと思うがなあ。晴れやかに花道を去って欲しいのですけど。まあ、そこはお考え次第ですが。


2006/12/17

「YOU」  

米タイム誌が年末恒例の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に「YOU(あなた)」を選んだそうです。そのため最新号の表紙は読者自身の顔が映る鏡をあしらった奇抜なデザインを採用するとのこと。個人がインターネットを通じて自由に情報を受発信して世界を動かす時代となり・「組織」から「個人」へとパワーシフトが進んでいる。同誌はそうとらえて「YOU」を選んだそうです。・・・そうでしょうかね?吉之助にはますます個人が顔をなくした社会になっていると思えますが。


2006/12/20

来月・初春の国立劇場は、三代目尾上菊五郎が上演した「梅初春五十三驛(うめのはるごじゅうさんつぎ)」を166年ぶりに当代菊五郎により復活上演とのこと。これまで活字化されたことがなく・天保年間の手書き台本から起こしたそうですが、なかなか意欲的な試みでありますね。


2006/12/21

信二郎が来年4月の東京・歌舞伎座で「二代目中村錦之助」を襲名するとのこと。映画スターだった先代「中村(=萬屋)錦之助」のことは強烈な記憶で残っていますが、今度は歌舞伎の名跡として大きく育てて欲しいものです。


2006/12/24

来年1月歌舞伎座は大作めじろ押しのなかで、福助主演のちょっとマイナーな「切られお富」が目を引きます。福助さんは女形の王道を行くお姫様より・毛色の変わったところの悪婆がお好みのようですね。まあ、それはいいのですが、先代国太郎のお富とはひと味違う悪婆を見せてくれそうな期待もありますね。

悪婆の愛嬌〜切られお富


2006/12/26

来年1月歌舞伎座の「鏡獅子」。襲名後に勘三郎は舞踊会で「鏡獅子」を一度踊ったと思いますが、本興行ではこれが襲名後初のはず。「鏡獅子」は勘三郎にとっては大事な踊りです。何と言っても御祖父さんの映画がしっかり残ってますから。頑張って・心技体ピークの踊りを見せてもらいたいと思いますね。


2006/12/27

お正月2日の午後2時NHK教育テレビで三津五郎の「京鹿子娘道成寺」が放送されます。最近の三津五郎の踊りには感心することばかりです。充実した踊りが期待できると思いますので、是非お見逃しなく。


2006/12/31

本日は歌舞伎座でニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の世界同時中継( 現地時間30日・ただし時差の関係で日本時間だと午前3時になるため、日本では時差中継)という初の試み。生誕250年モーツアルト・イヤーの最後にふさわしく 、演目はレヴァイン指揮によるモーツアルトの歌劇「魔笛」。英語版だったのは残念でしたが、英語の歌唱は全然気になりませんでしたし、展開もスピーディでまあ良かったのでは。歌手はさすが歌唱の水準は高いし、演技もうまいものですね。ジュリー・テイモア(「ライオン・キング」)の演出もなかなか素敵でした。


 

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