第5期・歌舞伎座開場
先月、3月27日に第5期・歌舞伎座開場式が行なわれ、4月2日からいよいよ柿茸落し興行が開幕しました。第4期・歌舞伎座の閉場は平成22年(2010)4月30日であったので、あれからほぼ3年が経ったということです。その3年間にいろいろなことがありました。あまりに多くのことがあり過ぎた気もしますが、これから心機一転、ここから歌舞伎の新たな歴史が刻まれることと大いに期待しています。
劇場は外観も内装も、先代(第四期)の面影をよく生かしたものです。先代は文化財指定でしたし、全面改築に反対の声も結構ありましたから、こうしたファンの気持ちにも配慮してくれたということだと思います。3階席もやや勾配が 急になり・客席数は減ったようですが、今回の改築で花道スッポンがかろうじて見えるようになったことは、今後の若い歌舞伎ファンのためには嬉しいことです。
一方、舞台や花道のサイズなどは、先代とまったく同じだそうです。第1部の最初の演目「寿祝歌舞伎華彩〜鶴寿千歳」の幕が上がった時には、何だか昔の我が家に戻ったような気分がしてホッとしました。実は吉之助は舞台の幕が上がった瞬間に「やっぱり歌舞伎はこのサイズじゃなくちゃいかんなあ・・」というような考えがフト頭をよぎって、それに気が付いて・自分で苦笑いしてしまいました。
歌舞伎座改築が決まった時の「雑談」(H20年11月)のなかで、吉之助は「歌舞伎座の舞台の大きさが歌舞伎の本質を歪めた」という利倉幸一先生の言を引いて、「歌舞伎座の歌舞伎(すなわち現代の歌舞伎ということ)は決して本物でない、ただしそれは偽物ということではなく・またそれが悪いということでもないのですが、本物に良く似ているけどそれはどこかが違う」ということを吉之助は常に念頭に置いて歌舞伎を見てきたということを書いたわけです。これは今でもそう思っています。頭のなかではということですが・・・・。
しかし、頭のなかでは分かっていても、身体の方はそう感じていなかった(らしい)ということが、どうやら明らかになりました。やっぱり新橋演舞場でもなく、国立劇場でもなく、歌舞伎座の舞台サイズなのだなあ。吉之助も先代で四十年近く歌舞伎を見てきたわけですし、やっぱりこのサイズが身体に沁み込んじゃってるのですねえ。吉之助も、歌舞伎の見方を歌舞伎座から教わったんだということです。このこと改めて痛感しました。故・勘三郎であったと思いますが、「俺たち役者は、舞台で形を決める時に、あそこの何番目の提灯に目線を置く・・とか、そういう見当を付けて行くので、新しい歌舞伎座でも同じサイズにしてもらわないと困るんだ」というようなことを言っていたと思います。歌舞伎役者も、良かれ悪しかれということはありますが、歌舞伎座の舞台で仕込まれてきたということです。まあそういう意味において、新生・歌舞伎座に舞台が先代と同じサイズで誕生したことは、役者にとっても・観客にとっても、何らかの安心感を抱かせることかと思います。
*写真は吉之助の撮影です。
(H25・4・8)