(TOP)        (戻る)

八代目菊五郎への期待


本年(令和7年・2025)5月・6月歌舞伎座で行われる八代目菊五郎・六代目菊之助襲名披露興行の全容(上演演目と出演者顔触れ)が先日(4日)明らかになりました。来る3月31日には神田明神での襲名お練りも予定されています。2か月先の襲名に向けて、そろそろムードが高まって来ると思います。

令和2年(2020)から始まったコロナ禍は一応収まりました。しかし、コロナから歌舞伎が受けた打撃は大きなもので、観客動員など・未だ回復したと云えない現状です。しかし、その間にも歌舞伎の世代交代が確実に進行しています。令和4年(2022)11月歌舞伎座での十三代目団十郎襲名披露興行は云わば「歌舞伎の巻き返し」宣言であったわけですが、今回の八代目菊五郎襲名披露興行でこの回復への流れを更に確かなものにして貰いたいと思います。

  

ところで新・菊五郎はここ数年、これまでの音羽屋のイメージになかった・いささか驚きの大役の初役に次々と挑戦して、しかも見事にそれなりの成果を挙げて来たことはご存じの通りです。結果として、これらの経験が新・菊五郎の役者としての芸格を大きなものにしてきたことを誰しも認めると思います。そう云うことなので今度の襲名披露興行でも、新・菊五郎の方向性を示唆する、(「ナウシカ」や「ファイナル・ファンタジー」は勘弁して欲しいけど) 例えば「新たな初役にまた挑戦」とか、アッと驚く新機軸があるかもと密かに期待していましたが、出てきたラインアップは思ったよりも安定志向と云うか・保守的な印象がしますねえ。まあ新・菊之助との兼ね合いもあるし、襲名披露興行と云うと・居並ぶ出演者のバランスを調整するだけでも難儀なことだと想像します。

音羽屋の芸のイメージは、六代目菊五郎がその典型ですが、理知的であり・筋目を重んじるものだと思っています。新・菊五郎の芸も概ねそう云うところにあって、どんな役であっても、基本を踏まえた・しっかりした演技が出来る、役の規格を大きく逸脱したりすることはない、そこが新・菊五郎の良い点であろうと思います。新・菊五郎がその線で芸を突き詰めて行ったとしても恐らくそれなりの立派な「菊五郎」になることと思います。

新・菊五郎に感心することは、そのような場所に安住することなく、「菊五郎」の新たな芸域へのリスクを取ろうとしていることです。これが実現すれば、理知的な音羽屋の芸に・播磨屋の芸の「熱さ・クサさ・シリアスさ」を併せ持った、代々の「菊五郎」とは異なる・ユニークな新・菊五郎が出来上がることになるでしょう。新・菊五郎が日頃から公言して憚らない岳父・二代目吉右衛門の芸への憧れとは、そう云うことと理解しています。もしそう云うことであるならば、新・菊五郎はまだ「まとまり過ぎている」感が強いかも知れません。優等生的な印象をまだ突き破れていないかも知れませんが、それでも初役挑戦の繰り返しのおかげで、芸格は着実に大きなものになって来ました。(詳しくは別稿「五代目菊之助・初役の梶原平三」などご参照ください。)

ともあれ行く先の旗は見えて来たのではないでしょうかね。新・菊五郎は現(令和7年3月)時点で47歳だそうですから、あと10年くらいがホントに大事な期間になると思います。同様に歌舞伎にとっても今後10年が正念場だと思います。吉之助も大きな期待を込めて見守りたいと思います。

(R7・3・6)


〇2025/3/31・「八代目菊五郎襲名お練り」

本日(31日)は、千代田区・神田明神にて「八代目菊五郎・六代目菊之助襲名披露・お練り」が行われたので行ってきました。心配されたお天気もどうやら持って、幸先良いスタートでしたね。これからのご活躍を大いに期待しています。歌舞伎座での襲名披露興行は、5月2日が初日です。

*境内隨神門前で人気ラッパーZeebraにより「菊五郎」の初代からの歴史がラップのリズムに乗せて軽快に語られる、なかなか面白い試みでした。

*本殿へ向かう八代目菊五郎・六代目菊之助。

*六代目菊之助・八代目菊五郎・七代目菊五郎の三代が並ぶ。

*六代目菊之助・八代目菊五郎による奉納舞踊「七福神」。

 






 (TOP)         (戻る)