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吉之助2冊目の書籍本。今度は女形論。是非読んでみてください。。
「女形の芸〜たおやめぶりの戦略」

全編書き下ろし。書籍本オリジナル。
アルファベータブックスより 全国有名書店にて発売。
価格:3,200円(税抜き)
ISBN978-4-86598-002-8

アマゾンへは下記から購入できます。
女形の美学 たおやめぶりの戦略


サイト「歌舞伎素人講釈」から生まれた最初の書籍本「十八代目中村勘三郎の芸」が出版となったのは平成25年11月のことでした。おかげさまで好評をいただきまして有難うございます。まあどんなことでもそうですが、最初はまぐれ当たりもあるもので、実は次にどんなものが出せるかが大事。そういうわけで2冊目で何を書くかについては吉之助も慎重になりましたが、「歌舞伎素人講釈」の強みは芸の理念論や作品論だろうと思っています。そうなれば吉之助としては当然、女形論を書かねばならぬということになるわけです。思い返せば渡辺保先生の「女形の運命」(昭和49年)以来、ここ四十年くらいは、歌舞伎の女形に真正面から取り組んだ女形論はなかったと思います。そろそろ新しい時代の女形論が出て然るべきと思いました。

「歌舞伎素人講釈」は平成13年1月にひっそりと誕生しましたが、その同じ年3月31日に六代目中村歌右衛門が亡くなりました。吉之助にとって歌右衛門は戦後の昭和歌舞伎のそのものでした。つまり「歌舞伎素人講釈」の歴史とは、吉之助にとってはそっくりそのまま歌右衛門を自分のなかに落し込んでいくための時間でありました。このことは第5期・歌舞伎座の開場によって精神的にひと区切りがついた感じがしていますが、吉之助としてはここらで女形論を整理する時期だろうと思いました。もうひとつは、もちろん当代玉三郎のことです。「女形は記号である・顔を白く塗って赤い着物を着ていればあれは女」という一歩引いた歌舞伎の見方をしていた吉之助に女形を考えさせるきっかけを作ってくれたのが、昭和51年2月日生劇場での玉三郎のマクベス夫人であり、それ以来、玉三郎への関心は失せたことはありません。歌右衛門と玉三郎を対立テーゼに捉えるということは吉之助にはまったくありませんが、芸質的に似たところもあり・似ていないとも言えるでしょう。しかし、吉之助のなかで歌右衛門と玉三郎の二人が常に大事だということは大きな意味を持つことなので、このことも明確にせねばなりません。

写真・岡本隆史c、協力・松竹、2013年5月、歌舞伎座、京鹿子娘二人道成寺

本書の題名は「女形の美学〜たおやめぶりの戦略」としました。歌舞伎の女形は立役に対して常に一歩下がって勤めるべきもの。慎みと恥じらいが大事とされています。「戦略」というと何やらその尖がった感覚とのギャップをお感じになる方は多いと思います。「たおやめぶりの戦略」とは何ぞや。詳細は本書をお読みいただくこととして、この「戦略」というキーワードをひねり出すことこそ、吉之助が今回最も苦労したところです。この「戦略」という言葉によって、歌舞伎史に初代芳沢あやめ・初代中村富十郎から、昭和の歌右衛門・平成の玉三郎へ向けて、一本の太い線が引かれ ることになりました。それはつまり「歌舞伎の立役はファルスを持っているが、決してファルスであるわけではなく、立役がファルスであるかのように見せているのは実は女形だ」ということなのです。控えているように見せながら、実は女形が歌舞伎の芯をしっかり握っている。これを吉之助は「たおやめぶりの戦略」と呼ぶことにしました。これはサイト「歌舞伎素人講釈」のなかでは使用して来なかった新しい概念です。これまでとひと味違った視点が楽しめる女形論・歌舞伎論になったと思っています。

表紙については玉三郎丈の白拍子花子の写真の許諾を戴きまして使用しています。おかげで艶やかでいい表紙に仕上がりました。是非本屋さんで本書をお手に取って見てください。よろしければ、歌舞伎好きのお知り合いの方にもお薦めくだされば有難く存じます。

(H27・7・18)

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