ワルターの録音(1961年)
マーラー:交響曲第1番「巨人」
コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)老ワルターがマーラーの直弟子としてのプライドを賭けた懇親の名演というべきで、すべての表現がしずみずしく・若々しい・とても素晴らしい演奏です。特に第1楽章は出色の出来だと思います。朝靄のなかから涼しい冷気と日の光が差し込むようで、ワルターが自らの青春のときを回想したかのように感じられます。中間2楽章も優れています。リズムが重くなることなく・表現が温厚で自然であり、奇怪な感じがまったくありません。しかし、それが表現が「ぬるい」と感じられるのではなく・「その通りだ」と感じさせるのは、表現が練りこまれているからです。この中間楽章あってこそ第4楽章のスケールの大きさが生きてきます。ありし日を回想するかのような中間部の懐かしさ・切なさがこれまた素晴らしい。
ハイドン:交響曲第88番「V字」
コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)大編成によるハイドンですが・厚ぼったい響きではなく、また過度にロマンティックにならず・スッキリした味わいです。力みがない自然体の音楽で、気持ちよく音楽が流れています。弦が重たくないこと・木管がスッキリと抜けて聴こえるので、その明るさと軽やかが印象的です。特に第1楽章はテンポもよく好演です。第2・3楽章はややリズムが遅めに思われますが、重いというほどでもありません。第3楽章はスケールの大きい舞曲になっています。第4楽章はテンポをしっかりと締めて・落ち着いた音楽になっています。ワルターとハイドンの相性の良さを感じさせます。
ハイドン:交響曲第100番「軍隊」
コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)ウィーン・フィルとのSP録音に比べれば・その洒脱さには一歩譲るにしても、スケールは大きくなっているし・ロマンティックで好ましい演奏です。響きが重くならず・木管が抜けてよく聞こえるので、音楽が明るく感じられます。特に第1楽章はふっくらとした表情のハイドンで好演だと思います。第2楽章も決して力任せのところがない表現です。両端楽章はその生き生きした表現のなかに・柔和な表情が生きていて、ワルターの良さが出ていると思います。