トスカニーニの録音(1948年)
ハイドン:協奏交響曲変ロ長調
ミッシャ・ミシャコフ(バイオリン)
フランク・ミラー(ヴィオラ)
バオロ・レンツィ(オーボエ)
レナード・シャロウ(オーボエ)
NBC交響楽団
(ニューヨーク、ラジオ・シティ・スタジオ8H)トスカニーニはハイドンと相性が良いと思いますが、これもテンポ早めの軽快な演奏ですが・旋律が気持ち良く歌われていて・独奏者の個性をよく生かして堅苦しいところがまったくありません。第1楽章も良いですが、ゆったりした第2楽章が特に魅力的です。
モーツアルト:交響曲第39番
NBC交響楽団
(ニューヨーク、ラジオ・シティ・スタジオ8H)この演奏はトスカニーニの個性が強く感じられます。旋律を直線的に取るのはいつものトスカニーニなので別に驚きませんが、特に後半2楽章のリズムの鋭角的な打ち込みは無機的で無骨な印象があって、聴く人の好悪が分かれそうな感じがします。第3楽章はそっけないほど機械的なリズムで、舞曲的な優美さなどにはまったく関心がないようです。さらにスタジオ8Hのデッドな響きがこの印象を強くしているようです。、全体的にかなり早めのテンポですが、前半2楽章は、トスカニーニにしてはリズムが前のめりの印象で、これがやや落ち着きがない感じを与えます。
ヴェルデイ:歌劇「オテロ」〜バレエ音楽
ミラノ・スカラ座管弦楽団
(ミラノ、ミラノ・スカラ座)テンポはかなり早めに、バレエ音楽というよりはオーケストラ・ピースとして割り切って演奏されていると思います。歯切れよいリズムで、斬り口鮮やかな演奏です。明晰さと引き締まった造形が、トスカニーニとオーケストラとの同質性を感じさせ、実に子気味良い演奏です。
チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
ミラノ・スカラ座管弦楽団
(ミラノ、ミラノ・スカラ座)力強く・歯切れ良く、トスカニーニらしさを感じさせる演奏です。叙情性とかロマンティックなムードを排除し・若干乾いた感触ではありますが、素朴で力強い感触で一本筋が通っているのが好ましいと思います。旋律線が直線的に・ぶつけるように歌われ、特に戦闘の場面の粗削りの迫力は聴き物です。オーケストラの精度は若干劣るのは否めませんが、トスカニーニの棒に喰いついていく熱いものを感じさせます。
シューベルト:交響曲第9番「ザ・グレート」
ミラノ・スカラ座管弦楽団
(ミラノ、ミラノ・スカラ座)貧弱なアセテート盤の復刻であるためか、ホール全体の響きが十分に捉えられていません。管楽器が引っ込んで聴こえず、バランスが悪い録音です。オーケストラもコンサート向けのオケではないので、主兵NBC響と比べれば技術的には心もとない感じです。したがってNBC響との演奏で見られるような・トスカニーニらしい打ちつけるようなリズム・鋼のような強靭さは見られません。しかし、お互い気心が知れている関係であるということか・どこかアットホーム的な感じがするのが面白いと思えます。例えば普段のNBC響なら分厚い響きのなかで埋もれてしまいそうな第2ヴァイオリンやヴィオラの細かいパッセージがはっきり聴こえてくることで、この曲のブルックナー的な構造が写真をみるように分かってきます。またNBC響ならばもう少し分厚く出てくる旋律が、直線的にさりげなく提示されることでシューベルトの歌謡性が鮮明にされてくるのも興味深いと思えました。
ロッシーニ:歌劇「絹のはしご」序曲
ミラノ・スカラ座管弦楽団
(ミラノ、ミラノ・スカラ座)序奏冒頭の木管ののびやかさが印象的ですが、さらに一転して主部の生き生きした表情、ピチピチとした弾けるようなリズムがまさに本場のロッシーニです。表現の自在さ、テンポの自在さ。スカラ座のオケがトスカニーニの棒の下で嬉々として音楽しているのが眼前に見えるようです。
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
ミーシャ・ミシャコフ(ヴァイオリン)
フランク・ミラー(チェロ)
NBC交響楽団
(ニューヨーク、ラジオ・シティ・スタジオ8H)斬り込みの鮮やかな造形と・しっかりとしたリズム処理から生まれる推進力は聴き物です。細身ですが・しなやかで強靭な造形は、フォルムへの意志を強烈に感じさせます。第1楽章は密度は高いのですが・独奏者がやや小粒なのでトスカニーニのペースで進みます。独奏者付き交響曲の様相も若干あり、第2楽章はちょっと弱く感じられます。