トスカニーニの録音(1935年)
ブルックナー:交響曲第7番
ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク、カーネギー・ホール)トスカニーニのブルックナーと言うと・もしかしたら旋律線が堅くないか・リズムの刻みが前面に出過ぎないかなどと心配しましたが、トスカニーニ臭はまったくなく、ブルックナーのフォルムの正確に表現したもので・トスカニーニの姿勢の正しさに改めて感銘しました。リズムを正確に取って・恣意的な解釈をしないので、自然に曲のフォルムを表出できるのでしょう。力んだところはまったくなく・リラックスした出来なのにも好感が持てます。全体に心持ちテンポを速めにとって・スッキリした印象ですが、旋律が伸びやかに歌われ・立派なブルックナーであると思います。ニューヨーク・フィルの澄んだ響きが美しく、第3楽章スケルツォではなかなかダイナミックな動きを見せます。
ドビュッシー:交響詩「海」
BBC交響楽団
(ロンドン、クイーンズ・ホール)ここで聴くドビュッシーは一般的な演奏とは印象がずいぶん異なります。いわゆる一般的なラテン的感性のイメージではない・別の意味での明晰さがこの演奏を支配しています。全体にテンポを速めに取って、三つの楽章からなる交響曲みたいな感じさえします。低弦が増強され・主旋律が強調されて音楽の輪郭がくっきりと明確になっており、印象派的なぼかした感じがありません。むしろラヴェル的な明晰さを持った演奏になっていると言えます。したがって繊細・デリケートというより華麗・豪放といった印象が強くなっています。BBC響は響きが色彩的で、トスカニーニの要求するところを完全に体現して・感嘆するほど素晴らしい出来です。