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ショルティの録音(1995年)


○1995年7月5日ライヴー1

ロッシーニ:歌劇「ウイリアム・テル」序曲

ワールド・オーケストラ・フォー・ピース
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、国連50周年記念コンサート、英デッカ・ライヴ録音)

世界の45のオーケストラから・国連50周年記念の企画のために集まった臨時編成オーケストラと合唱団ですから、一流の音楽家揃いとは言え・ショルティの意図を十分に体現できていないところがある感じですが、特に弦の響きの繊細さなどはなかなか見事です。冒頭のチェロ独奏は情感たっぷりですが、もう少し線の強さが欲しい気もします。シカゴ響を振るいつものショルティよりは全体にしっとりした印象があるのが面白いところです。


○1995年7月5日ライヴー2

バルトーク:管弦楽のための協奏曲

ワールド・オーケストラ・フォー・ピース
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、国連50周年記念コンサート、英デッカ・ライヴ録音)

ショルティの得意曲ですから・全体を見通したような明晰な解釈はさすがです。オケもなかなかの力演で、密度の高い出来を示しています。冒頭部の不安感の表現などは相変わらず素晴らしいと思います。金管の鋭さはいまひとつですが、オケの弦の豊穣でしなやかな響きをよく生かして・エレジーのような叙情的な部分において良い味わいを見せています。


○1995年7月5日ライヴー3

ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」第2幕〜フィナーレ

アンドレアス・コーン(ドン・フェルナンド)、アルベルト・ドーメン(ドン・ピッツァロ)、
シュティッヒ・アンデルセン(フロレスタン)、エフェリレ・ヘルリツィウス(ノオノーレ)、
ハンス・チャンマー(ロッコ)、ルート・ツィーザク(マルツェリーネ)
ヘルベルト・リッペルト(ヤキーノ)

ワールド・オーケストラ・フォー・ピース合唱団
ワールド・オーケストラ・フォー・ピース
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、国連50周年記念コンサート、英デッカ・ライヴ録音)

国連50周年のお祭りですから・あまり堅いこと言わずに・祭典的雰囲気を楽しむべきでしょう。ショルティのキビキビしたテンポの演奏は、自由への喜びを謳歌するこの曲にふさわしいと思います。


○1995年8月6日ライヴ−1

ショスタコービッチ:交響曲第1番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

全体の設計図を明確に見渡したような・整然としたショルティの音楽作りとウィーン・フィルの個性がこれをマイルドに受け止めて・面白い演奏に仕上がりました。シカゴ響とは違って・ウィーン・フィルの場合は立ち上がりの鋭さには欠けるところはありますが、音楽にふっくらした丸みが与えられて・音色に重みがあり、リズムが生きていると感じられます。特に第1楽章のリズム処理のうまさが音楽のなかにある 乾いたユーモアを自然に描き出しています。


○1995年8月6日ライヴー2

ブラームス:交響曲第4番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

早めのテンポで一気に描いたような勢いのある演奏は、ショルティらしく曲全体の構造がよく見える明晰さにあふれており・曖昧なところがまったくありません。逆に言うとドイツ風の翳りのある濃厚なロマンティシズムは感じられません。その点で好みが分かれるところで、確かに第2楽章などにもう少しふくよかさが欲しい・歌心が欲しいと思うところがあります。しかし、第1楽章後半・あるいは第4楽章パッサカリアなどは表情が引き締まり・緊張感と力感があって・聴き応えがします。


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