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ショルティの録音(1983年)


○1983年1月

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」

シカゴ交響楽団
(シカゴ、オーケストラ・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

実に明晰で・楽譜のすみずみの音符まで鳴り切っているように思う演奏です。これはシカゴ響が整然と演奏していて・まったく息の乱れさえ感じさせない見事さから来るものです。特に輝かしい金管は素晴らしいと思います。ショルティは民族色にこだわらず・純音楽的な表現に徹しています。旋律は実によく歌われているのですが、粘りはなく・感触としてはサラリとしていいます。第2楽章ラルゴを感傷的にせず・あっさりとしているのは良いと思います。ヨーロッパのオケの演奏であると望郷の念が自然と出てくるのですが、アメリカのオケであると新しい世界への希望のようなものが出てくるのは面白いところですが、この演奏での爽快感は素晴らしいものです。この曲の演奏のなかでも特に印象的なもののひとつです。


○1983年4月

マーラー:交響曲第4番

キリ・テ・カナワ(ソプラノ独唱)
シカゴ交響楽団
(シカゴ、オーケストラ・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

透き通った響きで、爽やかで・明るい陽光が射しているような感じのする素敵な演奏です。ショルティらしく全体の構造が見通された明晰さがあって・造形はスッキリとしていますが、決して機能先行の印象はありません。冒頭からテンポは心持ち早めで、過度な思い入れを入れずに・淡々とスコアを音化した感じですが、しかし、描き出すところはしっかり描き、また余計なことは一切していないという・実に音楽的な演奏なのです。第3楽章は粘ることなく・透明な叙情を描き出していて、とても印象的です。第4楽章でのキリ・テ・カナワの歌唱は優しく温かみがあってとても好ましいと思います。


○1983年10月

マーラー:交響曲第1番

シカゴ交響楽団
(シカゴ、オーケストラ・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

これは素晴らしい演奏で、ショルティの冷静なスコアの読みと設計に感嘆させられます。スコアの音符をそのまま音化し、何も付け加えていないし・何も切り捨てていないという感じです。テンポ設定はワルターに似たところがあります。過度に聴き手をあおることのない・スッキリした演奏で、熱くなって・情感のうねりを見せるわけでもなく、と言って醒めているわけでもなく、押さえるべきツボをしっかりおわ得ています。第1楽章や第4楽章の金管の咆哮は・さすがにシカゴ響とうならせるものですが、それがピッタリと音楽の枠のなかに納まっています。やりたいことをやりたい放題しているようで、ピッタリと規格にはまっているのです。第1楽章でも森の淡い朝もやのなかに朝日がさして来る感じが本当に純粋な音楽表現のなかから立ち昇ってくる印象があり、音をして語らしむというような感動があります。第4楽章中間部もしみじみとした澄んだ情感を湛えています。


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