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ショルティの録音(1976年−1980年)


〇1976年

ラヴェル:ボレロ

シカゴ交響楽団
(シカゴ、英デッカ・スタジオ録音)

腕利き揃いのシカゴ響なので申し分ない出来ですが、特に感心することは中盤以降はリズムが重ったるくなる演奏が多いなかで、この演奏は最後までリズムが重くならずに、冒頭リズムの軽やかさを維持していることです。響きが混濁せず明晰さを維持して、狂熱に耽溺することなく・最後まで理性的な態度を崩さず、そこがさすがショルティ・シカゴ響だと思います。


○1977年4月6日

リスト:交響詩「前奏曲」

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(ロンドン、キングスウェイ・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

芝居掛かったところのある曲だけに・ショルティもいつものインテンポにこだわらず・ちょっとテンポをずらしたりして・見得を切ったりするところがありますが、全体としては淡々としてサラリとした感触です。中間部の叙情的な場面においての弦の透明な響きが美しく印象的です。ロンドン・フィルの出来は素晴らしく、金管はよく鳴っています。


○1978年5月−1

ブラームス:交響曲第3番

シカゴ交響楽団
(シカゴ、メディナ・テンプル、英デッカ・スタジオ録音)

ショルティらしいスカッとした演奏です。シカゴ響が素晴らしいのは言うまでもないですが、明晰で機能的な印象を受けます。全体のテンポは速めで、構成が緊密に感じられます。その分ブラームスの湿り気を帯びた憂い・揺らぎのある移ろいの要素が削げ落ちた感はあるのは仕方ないところですが、両端楽章での全奏ではオケの機能全開という感じです。


○1978年5月ー2

ブラームス:悲劇的序曲

シカゴ交響楽団
(シカゴ、メディナ・テンプル、英デッカ・スタジオ録音)

テンポを比較的ゆっくりと持って・旋律をじっくりと歌い上げてスケールの大きい重厚な演奏に仕上がりました。リズムの刻みを前面にだしていないので・硬い感じはなく、ブラームスのフォルムを意識したかっきりとした印象になっています。第2主題は濃厚なロマン性を感じさせず・さらりとした淡い処理なのはショルティらしいところですが、密度の高い演奏だと思います。


○1979年ライヴ

シューベルト:交響曲第8番「未完成」

シカゴ交響楽団
(シカゴ、オーケストラ・ホール、ユニテル・ライヴ録音)

大理石のギリシアの女神像を思わせるような整った古典美を感じさせる名演だと思います。全曲を通じて・やや早めのテンポで、情感を過度にこめることなく・客観的姿勢を保っています。ウィーン的な情緒を求める向きには・その冷たい手触りが物足りないと感じるかも知れませんが、ここまで徹底した表現であると否応なく納得させられます。第1楽章も甘さを拒否した表現ですが、その曲の持つ気品とスケールの大きさが自然に出てきます。第2楽章も静かななかに涼しいたたずまいが感じられます。


○1979年ライヴー2

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲

チョン・キョン・ファ(ヴァイオリン独奏)
シカゴ交響楽団
(シカゴ、オーケストラ・ホール、ユニテル・ライヴ録音)

チョン・キョン・ファのソロは女性らしい繊細さ・細やかさがあって、楚々とした雰囲気です。その分・小振りな感じで・スケール感は小さいですが、この曲の叙情的な幸福感を素直に表現していると思います。もともとこの曲は小振りなソロが似合う曲ではないでしょうか。チョンのソロに比べれば、ショルテイのサポートはいささか器が大きいイメージがありますが、しかし、ソロを大きく包み込んで・実に巧くソロを立てていることには感心させられます。素晴らしいのはやや細身ながら・楚々とした第1楽章。第3楽章もオケとの息がよくあって・幸福な出来。


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