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シノーポリの録音(1980年ー1989年)


○1983年6月ー1

シューマン:交響曲第2番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール、DGスタジオ録音)

早いテンポで一筆書きで描き上げたようなシューマンです。リズムの斬れ、音楽の推進力・躍動感が素晴らしいと思います。ウィーン・フィルの重低音を実に効果的に引き出しています。このやや構成に難ある交響曲を一気に聞かせます。ライヴで聞いたら拍手喝采だろうと思います。しかし、CDで聴くとややしんどいところがあるのも事実で、特に早いパッセージでは高弦の動きがやや神経質的に聴こえます。第3楽章ではゆったりしたテンポのなかにロマンティックな情感がけだるく立ち上げってくるのを期待したいところですが、やや分析的な冷たい感じがします。


○1983年6月−2

シューマン:マンフレッド序曲

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール、DGスタジオ録音)

同じCDのシューマン・第2交響曲と同じことが言えそうです。リズムの斬れと推進力には感嘆させられますが、音楽にもう少し潤いが欲しい気もします。


○1985年9月

マーラー:交響曲第2番「復活」

ブリギッテ・ファスベンダー(Ms)
ロザリンド・プロウラルト(S)
フィルハーモニア合唱団
フィルハーモニア管弦楽団
(ロンドン、独グラモフォン・スタジオ録音)

テンポは早めでダイナミックで一気に聞かせます。全体にちょっと早すぎる感じもあって、第2楽章などもう少しじっくり歌って欲しい感じもしますが。主旋律が強調されて、全体がすっきりと見渡せるような明晰さがあって、第1楽章など実に聴き易いと思います。この複雑なスコアがこんなにスッキリ聴こえていいものかと思うほどです。オケは音の立ち上がりが鋭く・精度はすこぶる優秀です。特に金管は素晴らしいと思います。しかし、聴き終わって感じるのは・やはりこの演奏には大事なものが抜け落ちてしまっているようです。この演奏には感性のきしみや歪みが感じられないのです。第3楽章などもう少しグロテスクな感じがあっても良いと思います。ちょっと楽観的に過ぎるようで、そのために終楽章は深い感銘にまで至らないようです。


○1986年9月19日ライヴ

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

テンポ早めに・曲に一気に斬り込んだ疾走感・爽快感が売りだと思います。ごった煮交響曲というイメージがスッキリと整理されて・実に見通しが良いですが、感銘深いかと言えば話は別。アッケラカンと・すべてが陽光にさられて・陰影がない感じです。心の設計図を見せられている感じで、これはこれ・あれはあれと分析的に見せてくれて面白いのですが、マーラーのあがきや苦しみは聴こえて来ません。第1楽章・第4楽章など早いテンポでダイナミクスが大きく、ジェット・コースター的な疾走感がありますが、旋律の歌い方が直線的なせいか・第3楽章はのめり込まない姿勢に冷たさを感じます。ベルリン・フィルはさすがに機能的な巧さを見せますが、これも曲に対する共感があまり感じられないように思います。


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