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メトロポリタン歌劇場 (2011年〜2015年)


○2011年11月5日ライヴ

ワーグナー:楽劇「ジークフリート」

ジェイ・ハンター・モリス(ジークフリート)、デボラ・ヴォイト(ブリュンヒルデ)、ブリン・ターフェル(さすらい人)、ゲルハルト・ジーゲル(ミーメ)、エリック・オーウェンズ(アルベリヒ)、パトリシア・バードン(エルダ)、ハンス=ペーター・ケーニヒ(ファーフナー)、モイツァ・エルドマン(森の小鳥)
ファビオ・ルイージ指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団
(ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場、ロベール・ルパージュ演出、新演出)

ルパージュ演出の、視覚的なスペクタクルが素晴らしい出来です。ここではコンピュータで上下動する舞台板よりも、これにシンクロする3Dの映像照明技術が主役です。情景が刻々変化し、この楽劇の抒情的な要素をとても美しく見せてくれます。ルイージの指揮も細やかで、明るめの色彩が、舞台によくマッチしています。軽めのリズムがこの楽劇のコミカルな一面を出していたかも知れません。初役でMET初登場というモリスのジークフリートは、第1幕の鍛冶屋の歌など、若々しく力強いところを見せて、まずは期待通り。第3幕で登場するヴォイトのブリュンヒルデも初役ですが、ジークフリートとのフィナーレの二重唱も見事に聴かせました。ターフェルのさすらい人は謎めいたなかに威厳があって素晴らしく、ジーゲルのミーメは演技が達者でこれも良し。


○2012年2月11日ライヴ

ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」

デボラ・ヴォイト(ブリュンヒルデ)、ジェイ・ハンター・モリス(ジークフリート)、ハンス=ペーター・ケーニヒ(ハーゲン)、ヴァルトラウト・マイヤー(ワルトラウテ)、ウェンディ・ブリン・ハーマー(グートルーネ)、イアン・パターソン(グンター)、エリック・オーウェンズ(アルベリッヒ)他
ファビオ・ルイージ指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
(ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場、ロベール・ルパージュ演出、新演出)

ルパージュ演出は、解釈には独自なものはあまりない感じですが、大規模な舞台装置を駆使して、視覚的に観客に分かりやすいものに仕上げており、高水準の出来だと思います。歌手では初役のふたりが素晴らしく、ヴォイトのブリュンヒルデが回を追うにつれて、威厳を増して出来が良くなる印象で、特に第2幕から終盤までは力感のある素晴らしい歌唱です。モリスのジークフリートも安定管ある歌唱で、今後が期待できる出来を示しました。ケーニヒのハーゲンも腹黒いキャラクターを巧く見せて良い出来です。マイヤーのワルトラウテは貫禄と余裕を見せた出来。ルイージ指揮は早めのテンポであっさりした響きで、ドイツ的な重厚さは期待できませんが、ライト・モティ―フを浮き上がらせるなど工夫をしており、この楽劇の論理的なところを手堅くまとめました。


○2012年2月25日ライヴ

ヴェルディ:歌劇「エルナー二」

マルチェッロ・ジョルダーニ(エルナーニ)、アンジェラ・ミード(エルヴィーラ)
ディミトリ・ホヴォロストコフスキー(国王ドン・カルロ)、フェルッチョ・フルラネット(シルヴァ)
マルコ・アルミリアート(指揮)
メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
(ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場管弦楽団、ピエール・ルイジ・サマリターニ演出)

特筆すべきはホヴォロストコフスキーのドン・カルロで、威厳のある歌唱はもとより舞台姿が良く映えて、見事な出来です。フルラネットの老公シルヴァはベテランの味で、これも素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。ジョルダーニも イタリア人らしい明るいストレートな歌唱で、これもなかなかのもので、男性陣は充実しています。近年めきめき頭角を現してきたミードは張りのある高音が魅力ですが、歌唱はまだ大柄な感じが残ります。アルミリアートの指揮は各所適格に 締めた手堅いもの。サマリター二の演出はオーソドックスなもので安心して見られます。


〇2014年3月15日ライヴ

マウネ:歌劇「ウェルテル」

ヨナス・カウフマン(ウェルテル)、ソフィー・コッシュ(シャルロット)、デイヴィット・ビズイッチ(アルベール)、リゼット・オロペーサ(ソフィー)
アラン・アルタオグル(指揮)
メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
(ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場管弦楽団、リチェード・エア演出)

聴きものはカウフマンのウェルテルと云うことになりますが、声の柔らかさと云い・艶と云い、申し分のないウェルテルです。ただカウフマンは理性的な印象があって、情熱で突っ走る感じには見えませんが。コッシュのシャルロットも定評ある演技派なので、安定した歌唱を聴かせます。オロぺーサのソフィーが新鮮な感覚で好演。アルタオグルの指揮は手堅い出来。リチェード・エア演出は具象的で、舞台装置も美しく、分かりやすくドラマを見せてくれます。脚本ではシャルロットは死にませんが、幕切れでシャルロットがピストルを手にするところで暗転して物語に含みを持たせます。


 

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