メータの録音 (1960年〜1979年)
R.シュトラウス:交響詩「ツァラトストラはかく語りき」
ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
(ロサンゼルス、UCLA・ロイス・ホール、英デッカ・スタジオ録音)ロスサンジェルス・フィル時代のメータの代表的名演と言えるものです。若き日のメータはテンポを速めにとって引き締まった造形を作っており、トスカニーニ的な感じがします。冒頭のファンファーレが荘厳であり、ロス・フィルの力を目一杯引き出しているスケールの大きい演奏です。旋律はあまり思い入れをいれずに・直線的に歌っていますが、そのせいか「青春について」などもう少しじっくり歌って欲しい気もします。またロス・フィルの響きが硬い響きなのも・シュトラウスの響きとしては若干印象が違う感じもしますが、逆に言えば曲の構造に芯が通って聴きやすいということも言えるかも知れません。若さのあるフレッシュな感覚が魅力であると思います。
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
(ロサンゼルス、UCLA・ロイス・ホール、英デッカ・スタジオ録音)若き日のメータのフレッシュな感覚に溢れた演奏です。テンポを速めにとって、望郷の念といった感傷や民族性などには見向きもせず、曲に対してストレートに斬り込んでいく・その姿が若々しく魅力的です。第1楽章では旋律をストレートに力強く歌い上げ、新天地アメリカへの希望・期待といった感情が膨らんでいくのが感じられます。第4楽章も若い力がみなぎるような活力があります。その一方で第3楽章はリズムが荒っぽくてアンサンブルが乱れるし、第2楽章は感触がアッサリしすぎで・表現が平板な感じがあるとしても、聴き終わってさわやかな印象が残ります。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
ウラディミール・ホロヴィッツ(ピアノ独奏)
ニューヨーク・フィルハーモニック
(ニューヨーク、エイヴリー・フィッシャー・ホール)ホロヴィッツのピアノが実に素晴らしいと思います。硬質で力強いタッチもさることながら、リズムの斬れが抜群です。揺れるリズムのなかに不安げな世紀末的ロマン的完成を感じさせ、感嘆するほかありません。テンポの速い両端楽章ではその超絶的な技巧が堪能できますが、中間楽章のゆったりした流れのなかでのアンニュイな雰囲気も素晴らしく、ラフマニノフとの親近性を感じさせます。ニューヨーク・フィルの伴奏は若干粗い感じが否めませんが、第3楽章ではそれが粗野な力強さにも通じるようでもあり・なかなかパワフルで迫力あるエンディングになりました。