メータの録音 (2010年〜)
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」
プラシド・ドミンゴ(リゴレット)、ユーリア・ノヴィコヴァ(ジルダ)、ヴィットリアオ・グリゴーロ(マントヴァ公爵)、ニーノ・スルグラジェ(マッダレーナ)、ルッジェロ・ライモンディ(スパラフチーレ)
ソリスティ・カントール合唱団
イタリア国立放送管弦楽団
(マントヴァ、ヴィヴィエーナ学術劇場、イタリア放送協会制作ライヴ・プロジェクト)イタリア放送協会制作により、マントヴァに現存する宮殿など歴史遺構を舞台にライヴ中継で「リゴレット」を全ヨーロッパに配信するプロジェクト。ドミンゴがバリトンのリゴレットを歌っているのが注目ですが、声の色が明るいので多少違和感はあるものの、耳が慣れるとさすがに上手い。演技も素晴らしく、存在感抜群です。リゴレットが音楽的にマントヴァ公爵と対立しているように聴こえるようにも思われます。ノヴィコヴァのジルダは清純な歌唱で「慕わしい人の名は」は美しいですが、激情的な場面では声の力がやや弱い。グリゴーロは無難な出来ですが、もう少し奔放さがあってもいいかも。メータ指揮の管弦楽団はテレビ放送で遠隔で演奏しているので、難儀なところがあると思いますが、ソツのない伴奏です。
サン・サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
ジュリアン・ラクリン(ヴァイオリン独奏)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
(テル・アヴィヴ、ハンガー11、イスラエル・フィル創立75周年記念フェスティヴァル)
ジュリアン・ラクリンの独奏は響きもたっぷりして・テクニックの斬れも十分で聴かせます。特に情熱的なロンド主部は豊穣そのものの音楽で実に見事な出来です。ただし、序奏部あるいは中間部においてゆったりした旋律をたっぷりと歌わせて弾こうとするせいかテンポが若干緩みます。そこが惜しいと思いますが、色彩感も素晴らしく音量もあり、スケールの大きい若手が出てきたものだと感心させられました。
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲、
ラヴェル:ラ・ヴァルスロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
(ロサンゼルス、ウォルト・ディズニー・ホール、ロサンゼルス・フィル創立100年記念演奏会)「マイスタージンガー」はテンポ心持ち遅めで、絵画的にのっぺり引き伸ばした感じがして、従ってあまりオペラティックではなく・コンサートスタイルに徹した演奏であるとは云えますが、メータらしい構えの大きい演奏になっており、これはこれで立派な演奏です。「ラ・ヴァルス」も同様でバレエ音楽としての動的な印象は乏しく、絵画的な印象です。ゆったりした歌いまわしに乗って色彩が大きく揺れる感じがしますが、濃厚なロマンティシズムを感じさせて美しく、巨匠風の大きな表現には興味深いものがあります。終結部ではぐっとテンポを落として大見得を切って終わります。