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カラヤンの録音(1989)

1989年4月23日:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とブルックナー:交響曲第7番を演奏。これが最後の演奏会となった。
1989年4月:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督を辞任。
1989年7月16日:ザルツブルク郊外アニフの自宅で死去。


○1989年1月27日〜2月3日

ヴェルディ:歌劇「仮面舞踏会」

プラシード・ドミンゴ(グスターヴォ3世)/レオ・ヌッチ(アンカーストレーム伯爵)
ジョゼフィーヌ・バーストウ(アメーリア)/ジョー・スミ(オスカル)
ジャン・リック・ショグノー(クリスティアーノ)/ゴラン・シミック(ホーン)
クルト・リドル(リビング)他
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール、独グラモフォン・スタジオ録音)

スウェーデン版による録音。ドミンゴはその輝かしい声が魅力的で・苦悩するグスターヴォ3せいの人間像を細やかに表現しています。特に第3幕第2場のロマンツアは表現が巧みで素晴らしいと思います。バーストウは実力派ですが・やや声は暗めで、第2幕のグスターヴォとアメーリアの2重唱ではドミンゴと並ぶとやや押され気味ではありますが、もともとアメーリアは受身のヒロインですから・バーストウは耐えるヒロインのイメージはあるようです。ヌッチは抑えた表現のなかに苦悩と友情の狭間に揺れ動く心情を描き出し好演だと思います。特に第3幕第1場のアリアは見事な出来です。新人スミのオスカルは大抜擢ですが・澄んだ声でこれは儲け役です。カラヤンは第1幕前奏曲からテンポを遅めにして・旋律のなかに秘められた情感を実に細やかに描きだしています。その表現の巧みさ・ダイナミクスの大きさは言うまでもありませんが、ウィーン・フィルの暗めの音色もカラヤンの音楽作りによくマッチしています。逆に言えばイタリアの輝かしいカンタービレよりは・ドイツ的な情念の世界に傾いていることは確かですが、中期のヴェルデイがドラマ性に密着した音楽作りを志向していたことを考えれば・カラヤンの表現もそのひとつの方向性を示したものと言えるのではないでしょうか。


○1989年4月23日ライヴ

ブルックナー:交響曲第7番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール)

カラヤン最後の感動的な演奏会ライヴです。聴いて感じるのは音楽の流れの自在さ、フレージングの自然さ、音楽の流れの心地良さです。音楽の呼吸が実に自然で、無理な力がどこにも入っていません。こういう感覚はカラヤンのブルックナー独特の感触です。テンポは心持ち速めにも感じられますが、第1楽章のよどみのない流れのなかにアルプスの高峰のパノラマを見るような気分にさせられます。まさにブルックナー音楽の真髄を聴く思いです。第2楽章は派手さを抑えて・淡い叙情性を感じさせる、聴けば聴くほど凄い表現です。第3・4楽章ではウィーン・フィルの金管が渋く重厚な響きで聴かせます。


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