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カラヤンの録音(1980年1月〜6月)


○1980年1月20日ー25日

モーツアルト:歌劇「魔笛」序曲(全曲録音からの抜粋)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

冒頭から天井へ届くかのような透明で伸びやかな響きが魅力的です。展開部の早めのパッセージもリズムが軽く・小粋な感じです。表情が生き生きしていて・ダイナミックなのですが、音楽が決して大柄に感じないのが素晴らしいと思います。


○1980年1月26日ライヴ

マーラー:交響曲第4番

エディット・マティス(ソプラノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

メルヒェン交響曲的な明るさではなく、古典交響曲としての格調の高さを感じさせます。テンポがしっかり取れて・旋律がじっくり歌われて・音楽が深いのです。しっとりと落ち着いた佇まいを感じさせます。しかし、その構成のなかにマーラーにしかあり得ないユニークさ・斬新性が確かに感じられるのです。マーラーの交響曲群のなかでの稀有な幸福なひと時という感じがしますが、そのような瞬間にも軋みか影のようなものが差しているのです。カラヤンはそのことを正確に写し取っています。特に感嘆させられるのは中間楽章・特に第3楽章です。息が深く、震えるように繊細なベルリン・フィルの弦の響きが、マーラーの傷つきやすい感性を十二分に表現しています。その美しさが微妙な危うさのうえにあることを感じさせてくれます。第4楽章のマティスの歌唱も清潔で美しいと思います。


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