カラヤンの録音(1974年7〜12月)
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)リズム感・色彩感・旋律の息の深さなど、この曲の持つ表現の幅をオーケストラの能力の限界まで極め尽くした感がある見事な演奏です。その一方で、それを実に冷静な眼で的確に制御する感性を感じさせる演奏でもあります。どの音もカラヤンの意志で鳴り響いているような気がします。したがって、どんな熱狂と絶望のなかにも、その流れのなかに沈溺しない理性を感じさせます。これはもちろん冷たいと言うのとは違います。カラヤンは音楽は音を通じてのみ語らしめるという態度を決して崩しません。当然聴き手も同じ態度で曲に謙虚に向かい合うという気にさせられます。四つの楽章のバランスと言い・性格の描き分けと言い、文句の付けようがない演奏です。全盛期のカラヤン/ベルリン・フィルの演奏として最高のフォルムを見せていると言えます。