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カラヤンの録音(1972年1月〜6月)


○1972年1月3日〜5日

ヴェルディ:レクイエム

ミレッラ・フレーニ(ソプラノ)、クリスタ・ルートヴィッヒ(アルト)
カルロ・コスッタ(テノール)、ニコライ・ギャウロフ(バス)
ウィーン楽友協会合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

楷書の芸と言えるようなキッチリとした品格を感じさせる演奏です。各曲がしっかりと描き分けられて・すべての曲があるべき姿で鳴っているような感じさえします。密度が高く、品位と高潔な志を忘れていない演奏であると感じられます。聴き終わってオペラ的な開放された世界と言うよりは、凝縮した密度の交響的な世界を感じます。ベルリン・フィルの金管が素晴らしく、「怒りの日」」は怒涛の迫力ですが・どれだけ荒々しく鳴っても・決して暴力的には感じられないのです。ソリストは腕利きを揃えていますから・悪かろうはずがないですが、カラヤンの意図によく沿った歌唱です。


○1972年2月14日−1

ウェーバー:歌劇「オイリアンテ」序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

冒頭から勢いのある・さっそうとした演奏で、オペラティックな興奮に満ち溢れています。過度に大きなスケールになることなく・引き締めた造形が素晴らしいと思います。ベルリン・フィルの力強い弦が魅力的です。


○1972年2月14日−2

ウェーバー:歌劇「アブ・ハッサン」序曲、歌劇「ペーター・シュモル」序曲、序曲「精霊の王」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

どれも珍しい曲ですが、 コンサート・スタイルに割り切って、密度の高い表現を志向したと云うことかと思います。カラヤンは決して手抜きせず、その生きいきした表情が魅力的です。感心するのは決して大柄の表現にならず、曲本来のサイズを納得させてくれることです。


○1972年2月14日、16日

メンデルスゾーン:交響曲第5番「宗教改革」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

カラヤンが演奏会では取り上げていない作品ですが、演奏は素晴らしいと思います。讃美歌・コラールを基調にしたイメージを開放的に描くことで・宗教的荘厳さを以って音楽が響いてきます。ベルリン・フィルの響きは明るく透明で、第4楽章など・音楽のイメージが眼前に拡がるオルガン的な感覚があります。中間の第2・3楽章をリズム感を軽く処理しており、両端楽章のスケールの大きさが生きてくる感じです。4つの楽章の連関が緊密に感じられますが、それでいて反面ロマン派の交響曲らしく形式に縛られない自由さもあるのです。


 

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