(戻る)

カラヤンの録音(1967年)

1967年3月19日:ザルツブルク復活祭音楽祭初日。曲目はワーグナー:楽劇「ワルキューレ」。
1967年10月:メトロポリタン歌劇場でワーグナー:楽劇「ワルキューレ」を指揮。


○1967年4月14日〜17日-1

スメタナ:交響詩「モルダウ」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

カラヤンはこの曲を何度も録音しており・全体のコンセプトはそう変化しているとは思いませんが、聴きなおしてみると・この演奏はいかにも60年代のカラヤンらしい特徴が見えます。この時期のベルリン・フィルの音色が渋めでモノトーンに近い感じに聴こえることや、表情が心持ち直線的で力強いことなどです。その分、後年の演奏よりも線が太くて・素朴な力強さが出ているようです。特に農民の踊りの場面などがそうです。月光の場面においても、後年の演奏では弦の滑るような滑らかさが印象的ですが・ここではちょっと印象が異なるようです。後年の水彩画的な印象よりも・油絵的な感じが強いようです。


○1967年4月14日〜17日ー2

リスト:交響詩「前奏曲」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

この時期のカラヤンらしく・造形が引き締まって素晴らしい出来です。テンポをやや早めに取って・表現に無駄がありません。ベルリン・フィルのちょっと暗めで渋い音色も似合っています。 造形が直線的で・意思的なイメージなので、それが直接的に曲の主題に結びつく感じです。叙情的な主題は胸に染み入るようですし、一方で金管の輝かしさは比類なく・表現のダイナミクスは極めて大きい表現です。スケールは大きいけれども、決して派手さはなく・この曲から深い精神性を引き出していると思います。


○1967年4月14日〜17日ー3

リスト:ハンガリー狂詩曲第2番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

精神性よりは技巧性を狙った曲でしょうが、名人芸的な派手なパフォーマンスを狙わず・手綱を引き締めた演奏だと思います。ベルリン・フィルのやや暗めの渋い音色がハンガリーの民族音楽の雰囲気に良く似合っています。決して華美に走らず・リズムが前のめりにならないのには感心させられます。


○1967年9月18日〜20日

ブラームス:ピアノ協奏曲第2番

ゲザ・アンダ(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

アンダのピアノはタッチが粒立って美しく、落ち着いた風格があって・安心して聴けます。しかし、強烈な個性にはちょっと乏しいかも知れません。カラヤンの指揮はアンダの独奏に合わせた自然でソツないサポートだと思います。実はもっとオケが前面に出たピアノ付き交響曲風の演奏を予想していましたが、思った以上にオケを抑えた感じです。カラヤンはここでは全体を統制しようというフォルムへの意識よりも・音楽の流れを無理なく自然に作っていこうとしている印象が強いおうです。したがって、スケール大きく・豊かな流れを感じさせる第1楽章、あるいは第3楽章中間部などにこの演奏の良さがあると思います。


○1967年9月22日、25日-1

マスカー二:歌劇「カヴァレリア・ルステカーナ」〜間奏曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

ゆったりとリズムを取って・旋律をたっぷり歌いこんでいます。その息使いが実に見事です。刻々と変化する夕暮れの田園風景を情感豊かに描写しています。このように美しい音楽の背後にオペラの凄惨なドラマが隠されているとはとても想像ができないですが、舞台転換の音楽としての枠を超えてしまった実に美しい音楽です。


○1967年9月22日、25日ー2

マスネ:タイスの瞑想曲

ミッシェル・シュバルベ(ヴァイオリン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

ベルリン・フィルの滑らかな弦の響きに乗って・シュバルベのヴァイオリン・ソロが美しく・叙情的な表現です。息長く旋律を歌っても、造形が決して甘ったるくなっていません。この曲の宗教的感興を見事に表現しています。


(戻る)