ゲルギエフの録音 (2011年〜 )
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲
ギル・シャハム(ヴァイオリン独奏)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
(テル・アヴィヴ、ハンガー11、イスラエル・フィル創立75周年記念フェスティヴァル)ギル・シャハムのソロは低音がやや不足・響きにふくらみがもっと欲しいところで、そのため第2楽章のゆったりした旋律ではロマンティックな濃厚さにやや欠けるきらいがあります が、一方、高音の斬れが良く・リズムが活き々々としたシャハムの個性は両端楽章でよく生きており、ここではヴァイオリンが自由闊達な動きを示して、ゲルギエフ指揮のオケとの掛け合いがなかなか楽しめます。全体としてシャープで新鮮さを感じさせる演奏に仕上がったと思います。 ゲルギエフは手堅いサポートぶり。
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲、チレア:歌劇「アドリア―ナ・ルクヴルール」〜「私は神の卑しいしもべです」、マスカー二:歌劇「カヴァレリア・ルステカーナ」〜間奏曲、ヴェルディ:歌劇「アイーダ」〜凱旋行進曲とバレエ音楽、プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」〜「モンタギュー家とキャプレット家」、チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」〜ナポリの踊り、プッチーニ:歌劇「トスカ」〜「歌に生き愛に生き」、プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」〜間奏曲、レオンガヴァルロ:歌劇「道化師」〜鳥の歌「大空を晴れやかに」、プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」〜「私のお父さん」、ヨハン・シュトラウスU:ワルツ「ウィーン気質」
アンナ・ネトレプコ(ソプラノ独唱)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、シェーンブルン宮殿庭園)ポピュラー大会なので演奏会としての纏まりはいまひとつですが、演奏は悪くありません。何と云ってもゲルギエフの良い点はリズムがしっかり打ち込まれて、どの曲も旋律が深く歌われていることです。 もとよりウィーン・フィルはオペラやバレエ音楽に関しては日常的に演奏しているので、曲の勘所をよく掴んでいるということもあります。ネトレプコは歌唱も上手くなって、ホントに存在感が出て来ました。ここでのアリアも貫録十分です。特に「歌に生き愛に生き」は感情がこもっていて聴かせました。ゲルギエフの指揮も手慣れたものですが、得意のプロコフィエフは一曲だけですが、ウィーン・フィルの重低音と重いリズムも相まって迫力ある出来になりました。これならば同じ曲から数曲ピックアップして欲しかったと思います。マスカー二とレオンカヴァッロの間奏曲も旋律をしっかり歌って過剰な甘ったるさがなく、どこか素朴なところがあってその真筆さが胸を打ちます。意外なj掘り出し物はヨハン・シュトラウスのワルツで、しっかりリズムを打って、古き良きウィーンを感じさせる温かさを感じさせて、すっかりインターナショナルになり過ぎたニュー・イヤー・コンサートで聴くワルツよりも数段良い演奏になっています。
ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」
エフゲニー・ニキティン(オランダ人)、アニア・カンペ(ゼンタ)、フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ(ダーラント)、藤村実穂子(マリー)、セルゲイ・スコロホドフ(エリック)
メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
(ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場、フランソワ・ジラール新演出)ゲルギエフはテンポをやや重めに取って、重厚な響きでスケール大きな音楽を作ろうとしているようです。これはジラールの演出コンセプトとも関連しそうですが、ニキティンのオランダ人もカンペのゼンタも、苦悩を通じての救済という主題に重きを置いて、内面的な歌唱に感じられます。このためゼンタのバラードなど派手さを抑えた渋い印象になった感じもありますが、情念渦巻く場面での管弦楽の盛り上がりは素晴らしいものがありました。ジラール演出は映像技術を生かして、冒頭の序曲でのバレエなど見応えがありました。娘たちの合唱で糸巻きの代わりに天井から下した長いロープをくるくる回すアイデアはなかなか面白く見ました。