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2000年録音


○2000年ライヴ−1

マスネ:歌劇「ドン・キショット」

ジェ−ムズ・コンロン指揮
サミュエル・レイミー(ドン・キショット)、ジャン・フィリップ・ラフォンテ(サンチョ・パンサ)
カルメン・オプリサス(ドルシネア)
パリ・オペラ座管弦楽団・合唱団
(パリ、オペラ座)

レイミーの歌唱と演技はその真摯さと真情の深さで人々の心を打つドン・キショットの人柄をよく表現していて、第3幕、盗賊とのやり取りの場面、第4幕のドルシネアとの場面など実に感動的です。ラ・フォンテのサンチョとのコンビもよくバランスしていて・軽妙に聴かせます。


○2000年ライヴ−2

オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」

ミッシェル・プラッソン指揮
アンジェリカ・キルヒシュラーガー(ニクラウス)、ナタリー・デッセイ(オランピア)
ベアトリーチェ・ウリア・マンソン(ジュリエッタ)、レオンティナ・ヴァドゥヴァ(アントニア)
マーカス・ハドック(ホフマン)、カサリーン・デューン(ミューズ)
ジョゼ・ファン・ダム(リンドルフ・コッペリウス・ダペルトゥット・ミラクル博士)
トゥールーズ市管弦楽団・合唱団
(オランジェ、ローマ劇場、オランジェ音楽祭)

歌手の粒が揃っており、プラッソンの指揮と併せてとても魅力的な演奏に仕上がりました。特に素晴らしいのはデッセイのオランピアで、声の技巧の斬れが抜群に素晴らしく聴かせます。またキルヒシュラーガーの二クラウス、マンソンのジュリエッタも優れています。八ドックのホフマンも声に張りがあって、感受性の高いホフマン像を見事に表現しています。トゥールーズ市管のサポートはリズムが斬れていて・活気があって、重くならず・軽すぎることなく・オッフェンバックの音楽の魅力を余すことなく表現しています。


○2000年3月10日ライヴ

ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

朝比奈隆指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団
(大阪、大阪フェスティヴァル・ホール)

テンポ遅めでおっとりした感じの演奏で、活気には乏しい感じですが、曲の雰囲気はよく捉えられていて・第1楽章は好演です。オケの色彩感が乏しく・旋律の輪郭がボケた感じがするなど難はありますが、それも第1楽章においては大きな不満になっていません。のんびりした気分が合っているのでしょう。全体に遅めのテンポですが、そのなかで第2楽章がバランス上早めに感じられます。旋律がサラサラして・じっくりと息をつかんでいない感じです。第3楽章以降はかなり不満が残ります。テンポが遅いのはいいですが、やはり音楽に活気が不足しています。第5楽章はちょっと息切れの感じ。もう少し熱い想いがほしいところです。


○2000年5月25日ライヴ

ブルックナー:交響曲第9番(ハース版)

朝比奈隆指揮
NHK交響楽団
(東京、NHKホール)

ブルックナー指揮者と云われた朝比奈隆にふさわしい見事な演奏だと思います。NHK響は低弦にもう少し厚みが欲しい気もしますが、高弦はニュアンス豊かであり、金管も渋めですがよく鳴っていると思います。第1楽章が特に素晴らしいと思います。インテンポを基調にゆったりと進める・その足取りがブルックナーの本質に迫っており、旋律も息深く歌われています。しかし、決してインテンポ一辺倒ではなく、微妙にテンポを伸縮させながら音楽に微妙な色合いの変化を付けているところが本当は大事なのです。第2楽章もリズム処理の巧さで活力のある表現に仕上がっています。この楽章も印象に強く残ります。


○2000年6月25日ライヴ−1

バーンスタイン:「キャンディード」序曲

ケント・ナガノ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン郊外ワルトビューネ、ワルトヴューネ野外音楽堂)

ベルリン・フィル・ピクニック・コンサートのテーマは「リズムとダンス」。冒頭の「キャンディード」は冒頭からリズムが斬れていません。ベルリン・フィルが大きな身体を持て余しているような感じがあって、今ひとつ楽しめません。こうした曲はそれなりにチープで・軽い響きでないと面白さが出ないようです。ベルリン・フィルのゴージャスな響きでは何となく居心地が良くない 感じです。


○2000年6月25日ライヴ−2

ラヴェル:ラ・ヴァルス

ケント・ナガノ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン郊外ワルトビューネ、ワルトヴューネ野外音楽堂)

全体にリズムが重く、旋律が粘り気味です。これがナガノの持ち味なのか・ベルリン・フィルが響きに透明感が不足するのは仕方ないところですが、ラテン的感性に乏しく、もう少しサラリとしたタッチの方が好ましいと思います。ワルツの場面では旋律を柔らかく・ムーディーに歌っていますが、どことなくリズムが粘って重い感じです。夢のように 柔らかく響かせようとするほど・嘘っぽくなる感じです。フィナーレはリズムの斬れが悪いのがモロに響きます。ダイナミックな躍動感に欠けて・どこか欲求不満な感じで終わります。


○2000年6月25日ライヴ−3

ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲

ケント・ナガノ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン郊外ワルトビューネ、ワルトヴューネ野外音楽堂)

ベルリン・フィルの響きが透明感に乏しいので・薄く霧がかかったような感じになるのは仕方ないところですが、リズムが粘り腰で重い感じです。特に「パントマイム」ではそうした傾向が強く、音楽がダレた感じです。「全員の踊り」も響きに重量感はありますが、リズムが斬れていないので・ダイナミックな躍動感とはちょっと違う感じです。


○2000年11月3日ライヴ

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(ハース版)

朝比奈隆指揮
NHK交響楽団
(東京、NHKホール)

全体のテンポを心持ち早めに取り引き締まった造形を心掛けていて、演奏の密度は濃い。NHK響の響きは暗く渋めで、金管の輝かしさなどはいまひとつですが、音色の微妙な色合いの揺らぎで勝負するのではなく、造形の骨組みの太さで勝負というところです。早めのテンポで一貫した四つの楽章のバランスも良いですが、特に後半の2楽章がオケが乗って来て・金管も冴えてきて、良い出来になりました。第3楽章はテンポ感覚が良く、生気のある表現です。第4楽章も足取りをしっかり取った骨格の太さが成功しています。


 

 

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