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1985年録音


○1985年1月28日ライヴ

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番

アルフレート・ブレンデル(ピアノ独奏)
コリン・デービス指揮
バイエルン放送交響楽団
(ミュンヘン、ヘラクレス・ザール)

ブレンデルが得意とするブラームスだけに、ピアノは素晴らしい出来です。打鍵に力があり、音が引き締まっています。両端楽章のオケの強奏にもピアノが力負けせず、がっぷり四つに組んだ協奏曲の醍醐味が楽しめます。オケも重心の低い分厚い響きでスケールも大きくて、如何にもブラームスらしいのですが、ちょっとリズムが重い感じがします。デイビスの伴奏はそつのない出来ですが、若干ピアノ主導の気配なしとしません。気になるのは、リズムが重めなのが災いして第2楽章で音楽の流れに停滞した感じがすることです。ここではブレンデルのピアノも心なしか生彩がないように感じます。


○1985年10月5日〜7日−1

モーツアルト:ピアノ協奏曲第21番

内田光子(ピアノ)
ジェフリー・テイト指揮
イギリス室内管弦楽団
(ロンドン、蘭フリップス・スタジオ録音)

まずリズム感があって、しかしスケールが大き過ぎずに、出過ぎたところのないテイトの指揮ぶりが素敵です。いかにもモーツアルトらしい、小粋でしゃれた雰囲気を醸し出しています。それに乗った内田光子のピアノがまた良い。キラキラと珠をころがすようなタッチはまさにモーツアルトにぴったりです が、タッチのひとつひとつを大事にして、ちょっと内省的な感じもあります。オケとの一体感がある第1楽章の出来が素晴らしいと思いますが、有名な第2楽章もテンポをゆったり取って 、歌った演奏はため息をつかせるほどに美しいと思います。ムーディに陥ることなく、深みを感じさせる演奏なのです。


○1985年10月5日〜7日−2

モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番

内田光子(ピアノ)
ジェフリー・テイト指揮
イギリス室内管弦楽団
(ロンドン、蘭フリップス・スタジオ録音)

この協奏曲はロマンティックなもの憂い雰囲気を持つイメージがありますが、この演奏はある種の不安と深刻さを内に秘めたもので、聴き手に問いを突きつけるような厳しさがあります。テイトの伴奏は弦の響きが鋭く 、リズムが明確で、情感でふんわりと聴き手を甘く包むのではなく、モーツアルトのピリピリした感性の震えが聴こえてくるようです。特に両端楽章ではベートーヴェン的な厳しささえ感じられます。第2楽章も決してムーディではなく 、淡々とした感触が生きています。内田光子のピアノは派手さを抑えた渋い表現が素晴らしいと思います。リズムをしっかりと踏んで、音楽が深く、折り目正しい印象です。特に第2楽章の内省的な表現が光ります。


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