1927年録音
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
フリッツ・クライスラー(ヴァイオリン独奏)
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
(ベルリン、HMVスタジオ録音)同時期のベートーヴェンの録音と比べて、このブラームスでは音楽の線が引き締まった感じがします。決して堅苦しさはありませんが、リズムをしっかり取って、造形が折り目正しくフォルムへの意識が強いところに、ブラームスが彼らにとって時代的に親しい音楽であることが感じられます。同様なことはクライスラーのヴァイオリンについても言えて、テクニックを自在に駆使しながら、決して枠組みをはずさず、ロマン性は外に向けて開放されるのではなく、内に向かって凝縮するかのようです。この点に同時代のフォルム感覚を共有する者たちの真実があるようです。そのような特質が、特に第1楽章に感じられます。スケールの大きさや熱さというものはあまり感じませんが、その熱いエネルギーは一個の宝石のなかに閉じ込められた硬質の輝きになって現れます。第2楽章も静けさが浸み入るような印象的な表現です。