べームの録音 (1979年)
モーツアルト:交響曲第39番
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン・コンツェルトハウス大ホール、ウィーン芸術週間)この頃のべームの演奏は、テンポが早めで造形がひきしまった60年代のべームの印象からするとテンポが遅くなって造形に厳しさがなくなってきた感じがして、私が当時聞いた時には不満が残ることが多かったように思います。しかし、今回改めて聴いて見ると、テンポは確かにゆっくりしているけれど、音楽の持つ懐の深さというのはやはり並のものでないことがよく分かりました。べームのこの演奏はモーツアルトにしてはちょっと重い感じであるのは低弦の増強が効いているからで、その点に若干不満は感じるものの、リズムの打ち込みが深く・ダレたところを感じさせません。安心して聴けるモーツアルトです。このことが第1楽章や第4楽章がやや重めの演奏ながら音楽が生きているという印象を与えるわけです。第2楽章も旋律をたっぷり歌わせて美しい演奏です。
シューベルト:交響曲第5番
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール、独グラモフォン・スタジオ録音)ゆったりとしたテンポで、シューベルトのこの曲の古典的な佇まいを大事にした演奏です。66年のベルリン・フィルとの録音と解釈に大きな相違は感じませんが、テンポが若干遅くなっているのと、オケがウィーン・フィルせいか、ややロマンティックな方に傾いている感じもあります。第1楽章ではベームはここではオケの自発性に任せて・自然な音楽の流れを作っています。ウィーン・フィルの弦は柔らかく、音楽に温かみを与えてきます。晩年のベームの好演のひとつだと思います。