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バーンスタインの録音(1979年)


○1979年5月27日ライヴ

ショスタコービッチ:交響曲第5番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン・コンツェルトハウス、ウィーン芸術週間)

バーンスタインの得意曲ですが、オケがウィーン・フィルという・ショスタコービッチとは縁遠いオケだけに興味がそそられます。オケの反応はやはりウィーン・フィル はバーンスタインの棒に対する反応がややマイルドに出るようです。しかし、ウィーン・フィルも汗が飛ぶような力演で、熱いものが感じられる演奏になっています。第1楽章における表現はウィーン・フィルの場合はどこか鋭角的でなく・滑らかに出る感じで、鎮魂歌 的な雰囲気になっているのも面白いところです。マーラー的な要素を持つ第2楽章はその虚無的 な感じをよく出して面白いと思います。第4楽章は快速テンポで有名なニューヨーク・フィルとの演奏(1959年)と比べると、随分と遅めで重みのある表現になっています。総じて腰の重い表現ですが、ショスタコービッチをマーラーの延長線上にロマンティックに捉えた表現であると言えそうです。


○1979年7月3日・4日ライヴ

ショスタコービッチ:交響曲第5番

ニューヨーク・フィルハーモニック
(東京、東京文化会館、米CBSライヴ録音)

バーンスタインらしい勢いと熱さを持った演奏で、第4楽章のダイナミックな勢いには若々しさを感じます。しかし、細部の造型と言うことになれば・曲の持つ不安感や恐怖感を十分に表出し切っていない感じもありますが、とにかく怒りか熱さのようなものは伝わってきます。聴き手に突き刺さるようなものはあまり感じられないですが、第4楽章の急き立てるようなリズムには切迫感があります。全体としてはバーンスタインの解釈は(悪い意味ではなく)基本的に健康的なのだろうと思います。第2楽章はリズム処理が巧く、マーラーのパロディらしい軽さと奇怪さを出していて・抜群に面白いと思います。


〇1979年8月22日ライヴ

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

ギネス・ジョーンズ(ソプラノ)、ハンナ・シュヴァルツ(メゾソプラノ)
ルネ・コロ(テノール)、クルト・モル(バス)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

第1・2楽章はややテンポ早めにしてオーソドックスな出来です。バーンスタインとウィーン・フィルの個性がよく溶け合って、古典的な手堅い表現だと思います。ウィーン・フィルは重厚なベートーヴェンらしい響きで、旋律線がすっきりと浮かび上がって、聴きやすい。特に第3楽章は、早めのテンポのなかに爽やかな抒情性が感じられる好演になりました。第4楽章も、声楽陣がそろって手堅い出来を示しており、スタンダードとして安心して聴ける好演だと思います。


○1979年10月4日ライヴ

マーラー:交響曲第9番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・フィルハーモニー・ホール、ベルリン芸術週間)

バーンスタインがベルリン・フィルを振ったただ一回の演奏です。「伝説的名演」と評価する向きもあるようですが、バーンスタインはベルリン・フィルを掌握できていないというのが本当のところです。もちろんただ一回では仕方ないですが。ベルリン・フィルは素晴らしいと思います。中間の2楽章でのオーケストラの虚無的な動きは魅力的です。特にバーンスタインも驚嘆したという第4楽章フィナーレの弦のピアニシモはベルリン・フィルならではのものだと思います。しかし、バーンスタインの持ち味であるうねるような情感の熱さは表出されていません。バーンスタインが汗を掻いて・うなって飛び跳ねてみても、ベルリン・フィルがこれを軽くいなして・冷静に対処している感じです。バーンスタインはかなりやり難かったのではないでしょうか。そうしたバーンスタインの苛立ちというか・もどかしさが特に第1楽章に強く聞こえます。それでも演奏は素晴らしく・大きな不満は感じませんが、バーンスタインのマーラーというならば後年のアムステルダム・コンセルへボウ菅との録音の方を取るべきでしょう。


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