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バレンボイムの録音 (1980年ー1989年)


○1981年10月−1

サン・サーンス:オラトリオ「ノアの洪水」〜前奏曲

アラン・モリア(ヴァイオリン独奏)
パリ管弦楽団
(パリ、独グラモフォン・スタジオ録音)

冒頭部の厳粛な祈りのムードのなかでの弦楽の絡み合いが緊張感あって美しく、これは聴き物です。モリアのヴァイオリン独奏も旋律を丁寧かつシンプルに奏してなかなか良く、全体に引き締まった美しさが感じられて、良い演奏だと思います。


○1981年10月−2

サン・サーンス:交響詩「死の舞踏」

ルーベン・ヨルダノフ(ヴァイオリン独奏)
パリ管弦楽団
(パリ、独グラモフォン・スタジオ録音)

リズム処理が精妙かつ軽やかで、この曲のアイロニカルな面よりも、それと背中合わせにして出て来る諧謔味・あるいはユーモア感が強く出ている印象があります。洒脱な表現でこれもなかなか良いと思います。


○1986年2月7日ライヴ

ファリャ:交響的印象「スペインの庭の夜」、アルベニス(アルボス編曲):組曲「イベリア」第1巻

マルタ・アルゲリッチ(ピアノ独奏・ファリャのみ)
パリ管弦楽団
(パリ、エラート・ライヴ録音)

ファリャでのアルゲリッチは透明でクリスタルな響きが美しく、バレンボイムの見事なサポートを得て自在に動き回る奔放さが魅力です。リズム感が良く音楽の生きが良いのは、相変わらずです。パリ管の色彩感ある透明な響きが素晴らしく、リズムの立ち上がりの鋭いところを見せます。バレンボイムは、曲の絵画的な面白さをよく表現しています。


○1989年11月21日ライヴ−1

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番

ダニエル・バレンボイム(ピアノと指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、東ドイツ市民のためのコンサート)

1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊し、その3日後に東ドイツ市民のために無料開放された歴史的コンサートです。 ベルリン・フィルの重厚な響きと、バレンボイムのピアノと指揮が作り出す落ち着いた足取りの音楽が、オーソドックスなベートーヴェン像を描き出して聴き応えがします。ちょっと老成したベートーヴェンに聴こえることも事実ですが。バレンボイムのピアノは粒がそろった響きが渋めで、それがよく曲にマッチしています。重厚な出来の第1楽章がなかなか良いですが、特筆すべきは、バレンボイムのピアノが息深く旋律を歌って、しっとりした精神性を感じさせる第2楽章です。第3楽章は、どうしたことか、ややテンポが逸り気味で印象が軽めになっています。ここではバレンボイムのピアノも少し粗く聴こえます。もう少しテンポを抑えれば、全曲通して良い出来となったのに、ちょっと残念な気がします。


○1989年11月21日ライヴ−2

ベートーヴェン:交響曲第7番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリンベルリン・フィルハーモニー・ホール、東ドイツ市民のためのコンサート)

バレンボイムもベルリン・フィルも渾身の力演を見せます。ベルリンの壁崩壊後の東ドイツ市民のためのコンサートという歴史的なシチュエーションですから、ゲルリンフィル楽員の力が入らない筈がなく、第1楽章冒頭はちょっと重めの感じで入りますが、だんだん音楽は熱くなって来ます。ただし通して聴くと、バランス的に前半2楽章が重めで、次第にテンポが速めになってきて、後半2楽章はテンポが逸り気味になって来る印象です。第4楽章は会場の雰囲気に煽られているのかも知れませんが、熱さを感じさせる演奏で、ちょっとテンポが前のめりに感じますが、まあこの状況ならば仕方ないでしょう。


○1989年11月21日ライヴ−3

モーツアルト:歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、東ドイツ市民のためのコンサート)

当日のアンコール曲目。なぜ「コジ」か云うと、ちょうどこの時、スタジオ録音で「コシ・ファン・トゥッテ」全曲の録音をしていたからだそうです。テンポのいい演奏に仕上がっています。


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