アバドの録音 (1982年)
モーツアルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲
ライナー・キュッヘル(ヴァイオリン独奏)、ヨーゼフ・シュタール(ヴイオラ独奏)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)キュッヘルとシュタールのソロは真面目で折り目正しいという感じで、良く言えば表現が端正ということになりますが、もう少し遊び心を以て弦を歌わせてもらいたいと思います。特に両端楽章でその不満を感じます。言い換えれば、それだけソロがオケの枠組みのなかにしっかり収まって古典的な印象が強くなっているということになるでしょう。アバドの指揮は、ソロの個性を立てつつ、しっかりと音楽の足取りを取ってこれも手堅い印象です。
マーラー:交響曲第1番「巨人」
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)好演です。ウィーン・フィルの響き、特に高弦が実に柔らかく、抒情的な旋律がゆったりしたテンポで歌われます。そのせいで全体的に抒情性が高い演奏に仕上がっています。アバドは音量を意識的に抑えているようで、弱音がとても美しく、第2楽章や第4楽章の中間部が優しく繊細に歌われるのが、とても印象的です。青春の甘美な想いを噛みしめているように響きます。しかし、ちょっと甘目の感じになってしまいます。そこが評価の分かれるところかも知れませんが、そこからアンビバレントな狂おしさが立ち上がってくるようには思えないところがあります。ウィーン・フィルはダイナミックかつスケールの大きい演奏を展開しており、全体の水準は極めて高いものです。