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アバドの録音 (2001年)


○2001年1月

ワーグナー:舞台神聖祝典劇「パルシファル」〜第1幕への前奏

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、独グラモフォン・ライヴ録音)

ゆったりとしてテンポのなかで、響きの色合いの調合に細やかな神経を配った演奏であり、ドラマ性よりも、響きの移ろいのなかに、明滅して揺れる光の帯を見る思いがします。ワーグナー晩年の精神的世界を聴くが如くです。


○2001年5月ライヴ

マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、独グラモフォン・ライヴ録音)

若い頃のアバドは線のシャープなマーラーを振ったものですが、90年代に入ってからのアバドのマーラーは線が太くなって、細部にこだわらず・曲の本質を大きく捉える方向に変化していたようです。ベルリン・フィルというオケを持って、響きが豊穣でグラマラスになったことが大きく関係しているようです。もうひとつはベルリン・フィルの響きがやや暗めであるので、表現が内省的な方向に動いているようです。この第7番の演奏ではその傾向が顕著で、冒頭第1楽章からやや重めの渋い表現です。特に中間の2〜4楽章においてはテンポも遅めで 、派手さを抑えて・内省的な印象が強いと思います。第2楽章は特にテンポがゆっくりですし、第3楽章でもオケの動的な派手な動きを抑え気味にした感じです。第4楽章も静かで内省的な表現。その抑えた中間楽章を経た最終楽章はそれまで溜めていたエネルギーを一気に開放したかのような圧倒的かつ重量感のある素晴らしい表現です。渋く光輝く金管が強烈な印象を与えます。


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