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ウィレム・メンゲルベルクの録音


○1926年5月-1

マーラー:交響曲第5番〜第4楽章・アダージェット

アムステルダム・コンセルへボウ管弦楽団
(アムステルダム)

ダイナミックレンジの狭い録音のせいか演奏はやや小振りに感じるところがありますが、テンポ早めに淡々と進めているように見えて、描くべきものはしっかり描かれています。 コンセルへボウ管の弦は精妙でとても美しいと思います。音楽の流れがスッキリして、凝縮した密度を感じさせる演奏となっています。 中間部の高揚した流れの設計は見事なものです。


○1926年5月ー2

ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲

アムステルダム・コンセルへボウ管弦楽団
(アムステルダム)

スケール感がある、オペラティックな味わいの名演に仕上がりました。まったく古さを感じさせないスッキリした感触です。冒頭部の巡礼の合唱の旋律が次第に盛り上がっていく過程の、緊張を保ったじっくりした歩みが見事で、ここではコンセルへボウ管の源の精妙さが生きています。ヴェヌスベルクの場面になると、爆発的な興奮のなかにもしっかりと手綱を締めたメンゲルベルクの手腕が実感できます。


○1927年1月4日ー1

ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」〜ワルキューレの騎行

ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク、カーネギー・ホール、米ブランズウイック・スタジオ録音)

テンポはやや早め、リズムの打ちを明確に取って、線を強めに仕上げています。この録音では演奏のスケール感は想像するしかないですが、メンゲルベルクの音楽の骨格は十分理解できます。思いのほか直線的でスッキリした感触で、コンサート・ピースとして割り切った純音楽的表現に思われます。


○1927年1月4日ー2

チャイコフスキー:スラブ行進曲

ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク、カーネギー・ホール、米ブランズウイック・スタジオ録音)

オケの色彩を若干暗めにセットし、前半では弦にポルタメントを加えて、曲に込められた民族の情念のようなものを足掻こうとしているようにも感じられます。全体的に直線的でスッキリした感触ですが、同日録音の「ワルキューレ」よりも粘りを感じさせます。


○1927年1月10日ー1

ヨハン・シュトラウスU:ワルツ「ウイーンの森の物語」(短縮版)

ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク、カーネギー・ホール、米ブランズウイック・スタジオ録音)

テンポは若干早めで、造形はスッキリしていますが、ニューヨーク・フィルの弦は柔らかく、リズムの刻みも柔らかく、思いのほかウイーン情緒あるロマンティックな雰囲気を醸し出して、これはとても面白く聴けました。中間部でテンポを上げるのも、作為的なところがなく、とても自然です。最後のヴァイオリン・ソロも思い入れたっぷりで、とても素敵です。


○1927年1月10日ー2

ヨハン・シュトラウスU:ワルツ「芸術家の生涯」(短縮版)

ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク、カーネギー・ホール、米ブランズウイック・スタジオ録音)

同日録音の「ウイーンの森の物語」と同じことが言えますが、スッキリとした造形に都会的なセンスを感じますが、旋律の線がふっくらとして硬さがないうので、安心して聴ける演奏になっています。


○1927年6月10日

ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲

アムステルダム・コンセルへボウ管弦楽団
(アムステルダム)

聴き物はコンセルトへボウ管の高弦の精妙かつ透明な響きです。ところどころに聴かれる弦のポルタメント(そんなに目立つわけではない)にやや時代の古さを感じさせるものの、それを除けばテンポはインテンポにとられて造型がすっきりして、感覚的にまったく古さを感じさせません。クライマックスへ向けての設計が見事で、緊張感が最後まで途切れず、メンゲルベルクの腕の確かさを実感させる見事な演奏です。


〇1930年1月9日

ベートーヴェン:交響曲第1番

ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク、カーネギー・ホール、米ブランズウイック・スタジオ録音)

メンゲルベルクが取るテンポ早めでスッキリした造形と、ニューヨーク・フィルの弦のふっくらしたヨーロッパ的トーンがマッチして、爽やかで、とても良い演奏に仕上がりました。四つの楽章の性格もしっかり描き分けられて、密度の高い演奏になっています。


○1938年11月

R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」

アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団
(アムステルダム、独テレフンケン録音)

テンポをやや速めに取り、勢い良く一気に描き切って、音楽は力強く骨太い仕上がりです。愛の主題でも感傷的な感じはなく、感触はスッキリと客観的です。オケはとても優秀です。


○1941年4月

R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

フェルディナント・ヘルマン(ヴァイオリン独奏)
アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団
(アムステルダム、独テレフンケン録音)

思い入れを入れないすっきりした造形です。録音が響きをデッドにとっているせいか感触がドライに感じるところもありますが、しっかりとリズムを早めにインテンポに取って、音楽に勢いがあり、いかにも同時代音楽という感触がします。オケは実に優秀。英雄の伴侶の主題も甘くムーディになることがないのも良いし、戦いの場面はリズム処理が見事です。


○1939年11月9日ライヴ

マーラー:交響曲第4番

ジョー・ヴィンセント(ソプラノ独唱)
アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団
(アムステルダム、コンセルトへボウ楽堂、蘭フィリップス・ライヴ録音)

第1楽章はテンポの緩急が非常に大きく、急発進したり急停止してみたり、実にユニークな表現です。第2楽章以降は、テンポの変化はそう目立ちません。ちょっと作為的なところがありますが、全体としては濃厚なロマン的な味付けというよりも、そのような引き裂かれた表現もすべ て飲み込んだところであっさり軽めの古典的表現にした云う感じがするのが面白いところです。それは基調となるテンポが速めでキビキビしていることから来るのかも知れません。弦の響きが軽いことと、木管がすっきり抜けて聴こえて、編成が小さめに感じられることも影響していると思います。印象的なのは、中間2楽章です。早めのテンポで淡々と曲を進めながら、第2楽章ではアイロニカルで乾いた味わいと、第3楽章では美の狭間で揺れる感性を見事に描き出しています。この2楽章があって、声楽が入る第4楽章が生きてきます。ヴィンセントのソプラノ独唱は癖がなく、好感の持てる歌唱です。全体として単純なメルヒェン交響曲に終わっていないのは、さずがだと思います。


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