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お知らせ:吉之助3冊目の書籍本です。
「武智鉄二著・山本吉之助編 歌舞伎素人講釈」

すべて「定本 武智歌舞伎」(全集)未収録の、武智最晩年の論考です。
吉之助が注と解説を付しました。

アルファベータブックスより 全国有名書店にて発売中。
価格:2,916円(税込み)予定

アマゾンへは下記から購入出来ます。
武智鉄二 歌舞伎素人講釈


武智鉄二(大正元年〜昭和63年)は、いわゆる「武智歌舞伎」(歌舞伎再検討公演)で伝統芸能に新風を吹き込みました。武智歌舞伎で四代目坂田藤十郎や故・五代目中村富十郎 あるいは市川雷蔵を育てたことでもよく知られています。また間(ま)や息(いき)、ナンバなど、伝統芸能の奥底を知ろうと思うと必ず行きあたるのが、武智の名前です。しかし、武智歌舞伎のことを知ろうと思うと、伝統芸能の最後のパトロン、前衛芸術の演出家、エロ映画の監督と、そのイメージが依然として 定まっていません。死後30年近く経った現在でも、武智の思想は正しく理解されていると言えないように思います。

武智の伝統芸能での仕事は、「定本 武智歌舞伎」全六巻(以下「全集」と呼ぶ、三一書房)にほぼまとめられています。しかし、これは昭和53〜56年の編纂なので、最晩年に書かれた武智の論考が、当然未収録です。そこで吉之助が、当時リアルタイムで読んだ雑誌などから切り抜いて保管していた、全集未収録 になっている、このまま忘れられるのには惜しい、武智最晩年の論考(概ね昭和55年から62年くらいまで)を編集して、吉之助が 注と解説を付して一冊の本としたのが、本書です。分量の関係で収録を断念した文章もありますが、最晩年の武智の思想の概要は、この一冊で網羅できていると考えます。

*表紙写真は、昭和56年10月27日歌舞伎座、「白蝶会」で武智鉄二が演じた熊谷次郎直実(「熊谷陣屋])

「歌舞伎素人講釈」というのは現在では吉之助の本サイトのタイトルとして通用しているもので、もう17年になります。実は武智が昭和58年から60年にかけて「序破急」という雑誌に「歌舞伎素人講釈」というタイトルで6回分の連載をし ていました。吉之助のサイトのタイトルはこれを拝借したものです。(口上2を参照ください。)ここに伝統芸能批評での武智の思想は吉之助が引き継ぐという宣言をこめたつもりです。

吉之助は武智と個人的な面識はありませんけれど、武智を師匠と仰ぎ、 四十年超、伝統芸能研究をしてきました。どでかい先例を引きますが、平田篤胤が本居宣長の死後の弟子を自認したのとまったく同じ関係のつもりです。(篤胤には夢のお告げがあったそうですが、吉之助はそこまではないですが。)吉之助の論考をお読みになれば、吉之助が武智理論の延長にあることは誰の目にも一目瞭然と思います。そういう意味で吉之助が武智の遺稿集を編集して世に出すというのは、個人的には「 これも深〜いご縁であることだなあ」と思っています。

本の内容は、武智の連載「歌舞伎素人講釈」6回分をメイン(盛綱陣屋・勧進帳・助六・忠臣蔵他)にして、武智の伝統芸能に関する論考、間に関する対談、晩年の近松座などの舞台の演出手記。さらに武智理論の出発点とも云うべきクラシック音楽のエッセイ、その絵のコレクターとして有名でしたが速水御舟についてのエッセイ、さらに晩年の映画製作に関するエッセイと、最晩年の武智の思想が俯瞰できる内容になっています。これに弟子である吉之助の解説「伝統芸能における古典〜武智鉄二の理論」 (書下ろし)と注が付きます。

この本をきっかけに全集の方に入ってもらえれば良いかなと思います。武智歌舞伎を理解するうえでの、必携資料です。是非お買い求めのうえ、お読みください。


(追記)別稿「武智鉄二が愛したレコード〜フランシス・プランテの弾くショパン」は、本書所収の武智の論考「私の好きなレコード」に関連した記事です。



(本書の内容)

序にかえて     山本吉之助

1 武智理論
間はどこから来たか、歌舞伎の間、「俊寛」の型を意味するもの
近松と浄瑠璃、私の好きなレコード、御舟を語る、三味線の起源

2 批評 「歌舞伎素人講釈」
第一回・嫗山姥~兼冬館、第二回・近江源氏先陣館~盛綱陣屋
第三回・勧進帳、第四回・身替座禅
第五回・仮名手本忠臣蔵、第六回・助六由縁江戸桜

3 演出ノート
智太郎君と百合若大臣、演劇運動としての近松座
五百番の内「嫗山姥」ということ、「雙生隅田川」のむつかしさ
「冥途の飛脚」の復元演出、近松時代物の演出
「月に憑かれたピエロ」・「カーリューリバー」演出手記

4対談
舞踊における舞× 川口秀子
浄瑠璃における間× 清元寿国太夫

5 映画論
「白日夢」談叢

解説:伝統芸能における古典(クラシック)〜武智鉄二の理論  山本吉之助

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