(戻る)

ワルターの録音(1960年)


○1960年1月16日

ブラームス:大学祝典序曲

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

テンポを速めにとって、リズミカルで表情が引き締まって、表情が生き生きしています。スケールが大きい演奏に仕上がっています。


○1960年1月23日

ブラームス:悲劇的序曲

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

テンポを心持ち早めに取って、表情が引き締まっており、緊張感のある演奏に仕上がっています。コロンビア響の弦の力強さが印象的です。


○1960年2月20日・23日

モーツアルト:交響曲第39番

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

オケは小編成ですが・その小振りでキュッと引き締まった表情が実に魅力的です。リズムが軽やかで音楽が生きています。第2楽章のゆったりとした流れも心地良いですが、後半2楽章の出来が実に素晴らしいと思います。まったくこけおどしの所がなく、表情が実に自然でさりげないのです。リズムをゆったりと以って・急くところがなく、無理な力をどこにも加えていません。それでいて音楽自体が持つスケールの大きさが自然に滲み出ているのです。


○1960年2月25日

モーツアルト:交響曲第41番「ジュピター」

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

スケールの大きさが必要な曲だけに・オケの編成がやや小さいのが気になるかと思いましたが・さにあらず、無理にスケール大きく見せようとすることなく・小振りでもしっかりと構成をまとめた感じで・これがなかなかに良いのです。60年2月にまとめて録音したモーツアルトのなかではこれが一番出来がいいようです。第1楽章も表情がキリッと引き締まっています。第2楽章は旋律をゆったりと歌って・安らぎを感じさせる。第3楽章もテンポ感覚がよく優雅そのものです。第4楽章もテンポを急くことなく・しっかりした手綱さばきを見せて充実したフィナーレです。


○1960年2月26日

モーツアルト:交響曲第35番「ハフナー」

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

ワルターのモーツアルトはやはり素晴らしいと思います。テンポの基本設計が実にいいのです。第1楽章冒頭はちょっと重い感じがしますが、中間部からは表情が淀みなく流れ始めます。中間2楽章が特に素晴らしいと思います。リズムが取れていて、旋律が実によく歌います。第4楽章はリズムをしっかり押さえて・手堅く締めています。


○1960年2月26日・29日、3月3日

シューベルト:交響曲第5番

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

四つの楽章のバランスが良く、しっかりとした古典的な構成を感じさせる手堅い演奏です。テンポは全体に早めで・リズム感が良く、表現に若々しさがあります。しかし、第1楽章や第3楽章でコロンビア響きの高弦の線がややキツめで・アクセントが強い感じなのはちょっと気になります。もう少しウィーン風の柔らかさが欲しい感じがします。


○1960年2月28日・29日

モーツアルト:交響曲第36番「リンツ」

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

リズムがしっかり取れていて・安心して聴けます。弦がよく歌っていて、表情が生き生きしています。ここでも中間2楽章がリズムが軽くて・素晴らしい出来です。全体のテンポ設計の良さを感じます。


○1960年4月18日・25日

マーラー:交響曲「大地の歌」

ミルフレッド・ミラー(ソプラノ)
エルンスト・ヘフリガー(テノール)
ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク)

本曲初演者だけにさすがの名演です。冒頭を聴くと・有名なウィーン・フィルとの録音(52年・英デッカ)よりもテンポが遅めで・へフリガーの歌唱も滑らかであり・印象がかなり異なるのでびっくりしますが、聴くにつれてワルターの意図が明らかになっていきます。へフリガーの歌唱は歌謡性が高く・叙情的表現への傾斜が高まり、生々しい感情が浄化されて・マーラーの無常観が平安の情まで高められているように感じられます。すべての表情が柔和で微笑を以って処理されているように感じられます。もしかしたらこれはマーラー的な要素とは言えず・ワルター的な表現かも知れませんが、実に深みがあって・説得力があり、心に染み入るように感動的で・ちょっと忘れ難い感銘を残します。ミラーの歌唱もくせがなくて、ワルターの意図を十分に体現したもので・フェリアに劣らない名唱だと思います。特に「告別」は深みがあって素晴らしい出来です。ニューヨーク・フィルのニュアンス豊かな深い響きが素晴らしいと思います。


(戻る)