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ワルターの録音(1952年)


○1952年3月23日ライヴ

ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」〜ブリュンヒルデの自己犠牲

キルステン・フラグスタート(ソプラノ独唱)
ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク、カーネギー・ホール)

フラグスタートの歌唱は息の深い名唱でさすがだと思いますが、ワルターのワーグナーが聴き物です。ヨーロッパ時代にワーグナー指揮で定評があったというのは、なるほどとうなずけます。ニューヨーク・フィルの響きは透明感があって、決して重くなることがなく、抒情性がすっきりと立ち上ってきます。しかもスケール感は失われていません。なるほどこれぞ第一級のワーグナーだと感嘆させられます。


○1952年5月15〜16日

マーラー:交響曲「大地の歌」

カスリーン・フェリアー(コントラルト)ユリウス・パツァーク(テノール)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール、英デッカ・スタジオ録音)

これは世評にたがわぬ素晴らしい演奏です。ワルターはテンポを速めにとり、表現が簡潔。ウィーン・フィルは引き締まった造形で、木管の音色が魅力的です。パツァークの歌唱はオペラティックに声を張り上げるのではなく・言葉を大事にしていて素晴らしいと思います。第1曲はワルターの伴奏ともども名唱だと思います。オケの咆哮が生々しく感じられます。パツァークは第3曲、第5曲ども明るい陽光が一瞬差し込むような・清々しい出来です。フ ェリアーの歌唱は伝説化されていて・その暗めの声色はこの曲の諦観の情にふさわしいと言えますが、もう少し声に力強さが欲しいようにも思われます。第4曲はワルターの伴奏と相まっていい出来です。第6曲「告別」はワルターの伴奏が素晴らしいと思います。表現のすみずみまで生き、深い意味を以って響きます。


○1952年5月20日

リュッケルトの詩による歌曲からの3曲〜「私はこの世に忘れられ」・「ほのかな香りを」・「真夜中に」

カスリーン・フェリアー(コントラルト)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール、英デッカ・スタジオ録音)

フェリアーは声は豊かで美しいですが、ドイツ語の発音が陰影不足で・歌唱として物足りないと思います。もっと掘り下げが欲しいと思います。ワルターの伴奏は実に美しいと思います。特に「私はこの世に忘れられ」の弦のゆったりした流れが実に印象的です。


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