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クラウス・テンシュテット
 


○1987年12月13日〜18日

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」〜前奏曲と愛の死

ジェシー・ノーマン(ソプラノ)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(ロンドン、アビーロード・スタジオ、EMI・スタジオ録音)

テンポを遅めに取って、オケを熱情的に煽るのではなく・古典的にスッキリと処理して澄んだ叙情性を感じさせます。ノーマンの歌唱はゆったりとして美しく、言葉を丁寧に発声して・オペラというよりリートのような佇まいです。ロンドン・フィルは高弦の透明な響きが美しく、微妙な色彩の変化を息長く描きだして見事な出来です。


○1988年10月18日ライヴー1

ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(東京、サントリー・ホール)

同日のワーグナー・プロのなかでは・この曲が一番出来が良いと思います。ロンドン・フィルの響きは透明で軽く、いわゆる暗い情念を感じさせるドイツ的なワーグナーとはちょっと違うのですが、テンシュテットはテンポをゆっくりと取って・旋律に粘りを与えていて・これが成功しています。またロンドン・フィルの金管はよく鳴っていて・なかなか良い出来です。叙情的なワーグナーですが、じっくりしたテンポの前半が特に聴かせます。 ただし終結部でテンポを速めたのは印象を弱くした感じで残念でした。


○1988年10月18日ライヴー2

ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」〜夜明けとジークフリートのラインの旅

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(東京、サントリー・ホール)

「リエンツィ」序曲と同じことが言えますが、ゆっくりとしたテンポで夜明けのけだるい雰囲気と幸福感をよく出していて・前半部が特に素晴らしいと思います。ねっとりと旋律を歌いあげるロンドン・フィルの弦が生きています。ラインの旅での金管の活躍も見事。


○1988年10月18日ライヴー3

ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」〜ジークフリートの葬送行進曲

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(東京、サントリー・ホール)

本曲ではロンドン・フィルの低弦のちょっと不足に感じられます。テンシュテットのテンポがやや早めで・表現があっさりしていることが影響していると思います。もう少しテンポを遅めにして・スケール感と悲壮感が欲しいところです。


○1988年10月18日ライヴー4

ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(東京、サントリー・ホール)

テンポはゆったりとして本曲でもオケの低弦の不足を感じます。響きが平面的で淡くて、この曲の線の重層的な構造が見えてこないようです。しかし、叙情的な部分においてはこのオケの響きの透明さが生きてくるようです。


○1988年10月18日ライヴー5

ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」〜ワルキューレの騎行

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(東京、サントリー・ホール)

ロンドン・フィルの優秀な金管を前面に押し出して、早めのテンポでスケールの大きい斬れの良い演奏に仕上がりました。


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