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ショルティの録音(1992年)


○1992年2月8日ライヴ−1

メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、シャウシュピール・ハウス)

しっかりとテンポ設計が出来た古典的な佇まいで、4つの楽章のバランスが良く取れていて・安心して聴ける演奏です。冒頭からみずみずしさのなかにも気品るギリシア的な美しさで、幸福感と暖かさがさりげなく伝わってきます。そこにかっきりとした構成感を感じさせるのがショルティらしいところです。古典的な印象が強いのはベルリン・フィルの重心の低い響きのせいもあると思います。この分曲の骨格が太くなり、安定感が増した感じです。第1楽章のみずみずしい表現も魅力的ですが、中間2楽章にヒューマンな暖かい味わいのあるのが印象的です。


○1992年2月8日ライヴ−2

ショスタコービッチ:交響曲第10番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、シャウシュピール・ハウス)

鋭角的な表現の鋭さで曲に迫るのではなく、重厚で渋い表現に仕上がっています。ショルティらしく・四つの楽章が緊密に結びつき・がっしりした構成を感じさせますが、ベルリン・フィルの低弦をよく生かした重心の低い音楽造りです。そのために音楽の塊を聴き手に重く突きつける印象になっています。ベルリン・フィルの弦は厳しいなかにも暖かさを感じさせ、両端楽章の深い表現が印象的です。


○1992年6月8日ライヴー1

ベルリオーズ:幻想交響曲

シカゴ交響楽団
(ザルツブルク精霊降臨祭、ザルツブルク祝祭大劇場、英デッカ・ライヴ録音)

テンポ設計も良く、オケの響きは色彩的・かつきめ細かく、滑るように滑らかな演奏で、どこから見ても文句が付けようのない出来栄えです。各場面の描き分けも的確で、見事な色調の5枚の絵画を見るが如し。第2楽章舞踏会の流麗さなど、実に見事です。このように演奏は見事極まりないものですが、全体としての印象は色彩やリズムで聴き手を驚かせるようなところがまったくせず、むしろ淡泊と云うか・静かで落ち着いた雰囲気があり、ぴったりと額縁のなかに収まったようなところがあります。この境地までショルティ・シカゴは行きついたかという感慨もありますが、好みの問題ですが・そこに物足りなさを感じる向きもあるかも知れません。


○1992年6月8日ライヴー2

リスト:交響詩「前奏曲」

シカゴ交響楽団
(ザルツブルク精霊降臨祭、ザルツブルク祝祭大劇場、英デッカ・ライヴ録音)

弦の響きはきめ細かく滑らかで、金管は輝かしいこと比類ありません。それにもかかわらず派手々々しいところはまったくなく、楽譜をそのまま音化して深い精神性に到達した感じがします。特に瀬前半のゆっくりとしたテンポでの弦の旋律は豊穣な響きのなかにじっくりとした深い味わいがあります。


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