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ショルティの録音(1982年)


○1982年2月

マーラー:交響曲第3番

ヘルガ・デルネッシュ(ソプラノ)
シカゴ交響楽団
シカゴ交響楽団合唱団
グレン・エリン少年合唱団
(シカゴ、シカゴ・オーケストラ・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

長大ですぐ雑な交響曲のスコアをスッキリと見渡したようなショルティの読みの素晴らしさ、全体の構成がしっかり決まっていてバランスがよく、マーラーのドロドロした情念が洗い流したようによく見えてきます。テンポは早めで・造形はシャープで、表現に余分なあいまいなところがまったくありません。シカゴ響はショルティの棒のもと・一糸の乱れも見せず、第1楽章は聖と俗の混交を見事にまとめて、ごった煮みたいな複雑な曲をダイナミックに描いています。オケの機能性全開といった感じで、この見事な演奏をスッキリし過ぎという批判は見当違いというものです。第2楽章や終楽章ではシカゴ響の弦がしっとりと光輝くように美しくしなやかに歌います。


○1982年5月

プロコフィエフ:交響曲第1番「古典」

シカゴ交響楽団
(シカゴ、シカゴ・オーケストラ・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

この作品の求めるものより編成が大きいような感じがあって、響きが厚くて・構えが大き過ぎる印象があります。それでもリズムは斬れていて・音楽が重ったるくならないのはさずがシカゴ響ですが、しかし、両端楽章はやはり威勢が良過ぎて・迫力がありすぎるようです。やや機能主義的な印象が勝った感じで、リズムが前面に出た分・音楽に遊びが少ないようです。


○1982年10月

ワーグナー:楽劇「ニーベルングの指輪」管弦楽曲集

楽劇「ワルキューレ」〜ワルキューレの騎行、楽劇「ラインの黄金」〜ヴァルハラ城への神々の入場、楽劇「ワルキューレ」〜ヴォータンの告別と魔の炎の音楽、楽劇「ジークフリート」〜森のささやき、楽劇「神々の黄昏」〜葬送行進曲とフィナーレ

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ソフィエン・ザール、英デッカ録音)

冒頭の「ワルキューレの騎行」は3分間では物足りず、「ヴァルハラ城への神々の入場」は音楽的にオーケストラ・ピースとして成立しない感じです。「ヴォータンの告別」も声楽がないとこれほど物足りないものかと思います。結局、聴き物は「森のささやき」と「神々の黄昏」からの葬送行進曲のみです。ウィーンフィルはさずがに素晴らしいですが、企画倒れと言ったところです。「森のざわめき 」では、ウィーン・フィルのしなやかな弦が繊細な響きを聞かせます。ただし暗い森の湿った雰囲気というよりは、緑が燃えるような温かさを感じさせるのはショルティの個性というところでしょう。中間部の小鳥のさえずりではオーボエが実に美しく響きます。ショルティにしては遅めに感じられるじっくりしたおとなしい表現に聴こえます。 「ジークフリートの葬送行進曲」はねっとりと熱い情感のうねりではなく・スッキリと細身の音楽で、リズムを明確に取ったショルティらしい演奏になっています。


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