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ショルティの録音(1961年−1965年)


〇1962年1月13日ライヴ

マーラー:交響曲第4番

イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ独唱)
ニューヨーク・フィルハーモニック
(ニューヨーク、カーネギー・ホール)

珍しいニューヨーク・フィルとの組み合わせです。ショルティらしくリズムをしっかりとって構成感がある演奏ですが、ニューヨーク・フィルとの相性もあると思いますが、思いのほか鋭角的な印象が少ない感じで、線が太く重厚な仕上がりになっています。ゼーフリートは素朴な歌唱がメルヒェン的な雰囲気を醸し出して好感が持てます。


○1962年5月・10月

楽劇「ジークフリート」

ヴォルフガング・ヴィントガッセン(ジークフリート)/ゲルハルト・シュトルツェ(ミーメ)/ハンス・ホッター(ヴォータン)/クルト・ベーメ(ファーフナー)/ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ソフィエンザール、英デッカ・スタジオ録音)

「ニーベルンクの指輪」四部作のなかでもショルティの音楽造りが特に「ジークフリート」に似合っているように感じられます。実に明解で歯切れがよく・リズムが斬れていて、スッキリとワーグナーの音楽構造が見えてきます。森のささやかなどは精妙とさえ言えるほど雰囲気豊かです。ヴィントガッセンの剛球を投げ込むようなストレートな歌い振りも良いですが、ミーメの性格役者振りも見事です。また二ルソンの豊穣で力強い歌唱は圧倒的です。


○1964年5月・6月

楽劇「神々の黄昏」

ヴォルフガング・ヴィントガッセン(ジークフリート)/ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(グンター)/グスタフ・ナイトリンガー(アルベリヒ)/ゴットロープ・フリック(ハーゲン)/ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)/クレア・ワトソン(グートルーネ)/ハンス・ホッター(さすらい人)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ソフィエンザール、英デッカ・スタジオ録音)

歌手が粒揃いだけに聴き応えがあります。特に二ルソンのブリュンヒルデが圧倒的な存在感を見せます。またフリックのハーゲンも素晴らしいと思います。またウィーン国立歌劇場合唱団の男性合唱も圧倒されます。ショルティはリズムが明解でストレートな指揮振りで、「夜明け〜ラインへの旅」などダイナミックな演奏が楽しめます。もう少し暗い情念を感じさせて欲しいと思う場面もなくはないですが、終幕「ブリュンヒルデの自己犠牲」はその引き締まった無駄のない造形のなかに澄み切った叙情性が漂っていて感動的です。


○1965年10月・11月

楽劇「ワルキューレ」

ジェームス・キング(ジークムント)/レジーヌ・クレスパン(ジークリンデ)/ゴットロープ・フリック(フンディンク)/ハンス・ホッター(ヴォータン)/クリスタ・ルートヴィッヒ(フリッカ)/ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ゾフィエンザール、英デッカ・スタジオ録音)

ショルティの分析的と言うか構造的と言うか・ライトモティーフを組み合わせた精緻な音楽構造を見事に明らかにしています。リズムの鋭角的な処理・決して熱くならない音楽作りにそれがよく現われています。しかし、それが決して乾いたものになっていないのはウィーン・フィルの力によるところが大きいと思います。ウィーン・フィルの表現力には感嘆させられます。第1幕フィナーレや第3幕フィナーレはもう少しテンポを緩めて・じっくり音楽を燃焼させて欲しいという気もしますが、逆に言えばそれがショルティの持ち味なのです。その一方であまり聴きやすくはない対話シーンになると、ショルティの構造的な指揮振りの面白さが出ているようです。歌手はこれ以上のキャストの組み合わせはあり得ないと思えるほどです。クレスパンのジークリンデは清く美しく・これも清々しいキングのジークムントとワーグナーの最も美しいシーンを作っています。ニルソンのブリュンヒルデはダイナミックで聴かせます。ホッターのヴォータンの情愛と威厳に満ちた歌唱も見事。


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