(戻る

ショルティの録音(1956年−1960年)


○1957年3月

デュカス:交響詩「魔法使いの弟子」

イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

(テル・アヴィブ?、英デッカ・スタジオ録音)

ショルティは純音楽的表現を目指しており、表現がスッキリして手堅いところを聴かせます。イスラエル・フィルはさすが弦が優秀で、旋律の歌い回しと表現力は見事なものですが、金管セクションが若干弱く、色彩感とダイナミックさでやや劣るところがあるようです。


○1958年5月

モーツアルト:「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」

イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

(テル・アヴィブ?、英デッカ・スタジオ録音)

ショルティらしい早めのテンポ・引き締まった造形ですが、イスラエル・フィルの弦が優秀で、響きが透明で涼しく、旋律に歌心があってリズム感も良く、 キビキビしたテンポであるにも係わらず、硬い印象がまったくありません。澄み切った弦の響きとショルティのしっかりした構成力が相まって、透明感と軽やかさがあって、古典的な趣さえ感じられます。これはなかなかの好演だと思います。


○1958年6月

ポンキエルリ:歌劇「ラ・ジョコンダ」〜時の踊り

コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団

(ロンドン、英デッカ・スタジオ録音)

これは好演。ショルティは早めのテンポで純音楽的な表現を目指していますが、曲が描くものが素直にそのまま表現されているように感じられます。語り口が実に上手い。コヴェントガーデン歌劇場管はショルティの厳しい要求によく応えており、オペラティックな情感・色彩感も十分で、 実に見事な演奏を展開します。


○1958年6月ー2

ヴェルディ:歌劇「椿姫」〜第1幕への前奏曲、第3幕への前奏曲

コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団

(ロンドン、英デッカ・スタジオ録音)

ショルティらしいかっきりして線の強いところもあるけれども、旋律が伸びやかに歌われ、決して硬い感じを与えるところがありません。コヴェントガーデン歌劇場管の弦は美しく色彩的で、オペラティックな味わいも十分です。


○1958年9月・10月

ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」

ジョージ・ロンドン(ヴォータン)/エバーハルト・ヴェヒター(ドンナー)/ヴァルデマール・クメント(フロー)/セット・スヴァンホルム(ローゲ)/ヴァルター・クレッペル(ファゾルト)/クルト・ベーメ(ファーフナー)/グスタフ・ナイトリンガー(アルベリヒ)/パウル・キューン(ミーメ)/キルステン・フラグスタート(フリッカ)/クレア・ワトソン(フライア)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ゾフィエンザール、英デッカ・スタジオ録音)

旋律線が明確で・ワーグナーの音楽構造がスッキリと見通せて実に理解しやすいと思います。線をぼかしたような・神秘的な雰囲気とは全く無縁ですが、リズムに斬れがあってウィーン・フィルのダイナミックな動きと色彩感が魅力的です。フィナーレの「ヴァルハラ城への神々の入場」はパノラマ的に画面の広さを感じさせます。キラ星の如くのワーグナー歌手を揃えて・新鮮なワーグナー像を提示しています。


(戻る