(戻る)

ムーティの録音 (1970年〜79年)


○1975年2月28日ライヴ

ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」〜四つの海の間奏曲

フィラデルフィア管弦楽団
(フィラデルフィア、アカデミー・オブ・ミュージック)

四つの場面をよく描き分けていると思いますが、特に「月光」、「嵐」の語り口が面白く聴けます。特に「嵐」におけるリズム処理の巧さ、オケの重量感ある動きが印象的です。


○1977年ライヴ

ヴェルディ:歌劇「トロヴァトーレ」

カルロ・コッスッタ(マンリーコ)、ジルダ・クルズ・ロモ(レオノーラ)
マッテオ・マヌグレラ(ルーナ伯爵)、フィオレンツァ・コッソット(アズチェーナ)

フィレンツェ歌劇場管弦楽団・合唱団
(フィレンツェ、コムナーレ劇場)

ムーティの指揮はテンポ早めに歯切れ良く聴かせて、若々しい指揮ぶり。ただし、やや一本調子のところあり。コッソットの当たり役アズチェーナは声に張りあって・これはもちろん素晴らしいものですが、歌手陣の質はかなりムラがあって、全体的には残念な出来です。コッスッタのマンリーコはまあそこそこですが、肝心の「見よ、恐ろしい火」は高音が全然伸びず大いに期待はずれ。マヌグレラのルーナと、ロモのレオノーラはとにかく歌唱が斬れ不足で、技術的にドラマティコの水準に達しているとはとても思えません。


○1979年3月2日・4月30日

オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

アーリーン・オージェ(ソプラノ)、ヨーン・ファン・ケステレン(テノール)、ジョナサン・サマーズ(バリトン)
フィルハーモニア管弦楽団
フィルハーモニア合唱団、サウスエンド合唱団
(ロンドン、アビー・ロード・スタジオ、英EMI・スタジオ録音)

スマートで滑らかな感触ですが、曲本来の中世民衆の活力というか・鋭角的な粗野な感触が失われてしまっているのは仕方ないところでしょうか。ムーティの指揮はダイナミックな音絵巻という点ではそれなりですが、ところどころでリズムが予想外に変化してアレッと思わせます。しかしリズム処理はさらに斬れが欲しいところです。イギリスの演奏家たちのせいか・どこかおっとりとして品が良くて・おとなしい感じがします。ムーティならもっと仕出かしてくれると期待したのですが。歌手陣に大きな不満はありませんが、ソプラノはもう少し透明な声の方が曲には合っているような気がします。


(戻る)