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ムーティの録音 (2010年〜2019年)


○2015年12月25日ライヴ

ベートーヴェン:交響曲第8番

シカゴ交響楽団
(シカゴ、シカゴ・オーケストラ・ホール)

リズム主体の交響曲だけに、ムーティのシャープな個性が良くマッチするようです。シカゴ響の厚みのある響きがよく効いています。演奏は前半がなかなか良いと思います。第1楽章は速めのテンボで音楽に活気があり、第2楽章はスッキリした表現で聞かせます。後半2楽章は重厚な印象で締めています。


○2017年6月27日ライヴ−1

ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」序曲、歌劇「ナブッコ」〜合唱「祭祀の飾りよ」、歌劇「ナブッコ」〜合唱「行け、我が思いよ、金色の翼に乗って」、歌劇「イル・トロヴァトーレ」〜鍛冶屋の合唱(アンヴィル・コーラス)、歌劇「マクベス」〜合唱「抑圧された祖国」

シカゴ交響楽団合唱団
シカゴ交響楽団
(シカゴ、シカゴ・オーケストラ・ホール)

ムーティ得意のヴェルディ・プロですが、イタリアのオケを振る時とはやはり勝手が少し違うみたいで、シカゴ響が相手だと響きが豊穣で、恰幅が良いヴェルディになってしまうのは仕方がないところです。もちろん腕利きのシカゴ響なので、「ナブッコ」序曲でのダイナミックな表現、リズムの斬れの良さは素晴らしいものですが、時に厚化粧な表情が見えたりします。ムーティも無理にイタリア方言を押し付けることはしていないように思 います。シカゴ響合唱団はなかなか頑張っており、特に「ナブッコ」のふたつの合唱は情熱が入った良い出来になりました。


○2017年6月27日ライヴ−2

ヴェルディ:歌劇「シチリアの晩鐘」序曲、プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」間奏曲、マスカー二:歌劇「カヴァㇾリア・ルステカーナ」間奏曲

シカゴ交響楽団
(シカゴ、シカゴ・オーケストラ・ホール)

「シチリアの晩鐘」序曲は表現の幅の大きさ、リズムの斬れの良さなど、さすがムーティのヴェルディとして申し分ない出来だと思いますが、プッチーニとマスカー二の間奏曲は随分と遅いテンポで歌い上げてねっとりと甘く て、あまりオペラティックとは云えない演奏です。ムーティと音楽の相性があまり良くないのか、それともコンサート・ピースだと割り切ったうえでの表現なのか。ムーティもイタリアの劇場で振るならば、もっと簡潔な表現になる気がしますが。


○2017年6月27日ライヴ−3

ボイート:歌劇「メフィストーフェレ」〜天上のプロローグ

リチャード・ザネラート(バス独唱)
シカゴ交響楽団合唱団・児童合唱団
シカゴ交響楽団
(シカゴ、シカゴ・オーケストラ・ホール)

しっかり手綱を引き締めないと構成が散漫になりかねない大曲ですが、ムーティはじっくりとした足取りで踏みしめるように演奏しています。シカゴ響の金管の見事さは言うまでもないことですが、シカゴ響の合奏力を生かして、スケールの大きい演奏に仕上 げています。ザネラートの声質は明るめで、シャープな印象。合唱もなかなかの力演で、フィナーレは壮麗に盛り上げて締めました。


○2017年8月9・12日ライヴ

ヴェルディ:歌劇「アイーダ」

アンナ・ネトレプコ(アイーダ)、フランチェスコ・メーリ(ラダメス)、
エカテリーナ・セメンチェク(アムネリス)、ルカ・サルシ(アモナズロ)、
ロベルト・タリアヴィーニ(エジプト王)、ドミートリ・ベロセルスキー(ランフィス)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場、シリン・ネシャット演出)

歌手・指揮者・演出と三拍子揃って、とても高水準の上演に仕上がりました。最大の話題がネトレプコの初役のアイーダであったわけですが、存在感は抜群で、期待通りの好唱を聞かせてくれました。第1幕の「勝ちて帰れ」や第3幕「おお我が故郷」はとても素晴らしい出来でした。ネトレプコのアイーダが素晴らしいのは、歌唱も演技もエチオピアの王女としての誇りに満ち満ちていることです。対するセメンチェクのアムネリスも素晴らしく、アイーダとの対決構図がよく表現出来ました。メーリはちょっと暗めの音色がどうなかなと思われましたが、ラダメスの繊細なところを聴かせてくれました。ムーティの指揮は文句をつけるところのない見事なもので、ウィーン・フィルから振幅の大きい音楽を引き出してくれました。ネシャットの演出はスケールの大きさ・豪華さよりも簡潔さを志向したもので、舞台上の箱状の装置に映像を照射するなど工夫して、登場人物の心理的な揺れ動きを繊細にうまく表現していました。


○2018年3月22日・23日・24日ライヴ

ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲

シカゴ交響楽団
(シカゴ、シカゴ・オーケストラ・ホール)

シカゴ響の機能性をよく生かし、ムーティらしいスケールが大きい表現ながら響きは重ったるくなることがなく、透明感と軽やかさを維持しています。シカゴ響の弦が斬れの良いところを聴かせます。


 

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