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ディヌ・リパッティの録音


○1947年9月

リスト:ペトラルカのソネット 第104番

ディヌ・リパッティ(ピアノ)
(EMIスタジオ録音、ロンドン、アビー・ロード・第3スタジオ)

構成がしっかりしていて・曲の起伏が呼吸するように自然に耳に入ってきます。深い味わいが胸から湧き上がって来る素晴らしい出来です。


○1948年4月

ショパン:舟歌
ラヴェル:道化師の朝の歌

ディヌ・リパッティ(ピアノ)
(EMIスタジオ録音、ロンドン、アビー・ロード・第3スタジオ)

ショパンの舟歌が素晴らしい出来。情緒的に傾きやすい曲だと思いますが、リパッティで聴くと古典的な佇まいのなかにも揺れる感覚があって、様式的にバランスがとても良い味わいだと思います。ラヴェルの道化師の朝の歌も同じことが言えそうです。古典的な印象のあるラヴェルです。技巧的な華々しさを押さえ込んだ感があるので 、若干地味な感じがするのは否めませんが、構成感ということならばこれはとても納得できる演奏なのです。


○1950年9月ー1

シューベルト:即興曲第3番変ト長調、第2番変ホ長調

ディヌ・リパッティ(ピアノ)
(EMIライヴ録音、ブザンソン)

両曲ともしっとりとした味わいのシューベルトです。第3番は歌曲のように美しい旋律ですが・情緒的に傾くことなく、古典的に抑制された表現が効いています。第5番は右手の流れるような旋律の捉え方が美しく、中間部の激しいリズムでも構成感が崩れません。


○1950年9月ー2

ショパン:13のワルツ
(ワルツ第5番「大ワルツ」、第6番「子犬のワルツ」、第9番「別れのワルツ」、第7番、第11番、第10番、第14番、第3番「華麗なる円舞曲」、第4番「華麗なる円舞曲」、第12番、第13番、第8番、第1番「華麗なる大円舞曲)

ディヌ・リパッティ(ピアノ)
(EMIライヴ録音、ブザンソン)

これも新古典的な味わいのするショパンということが言えそうです。リパッティのワルツは小振りながら実に慎ましく、また愛らしい味わいです。第9番「別れのワルツ」もムーディにあることなく 、しっとりとした味わいで、派手さを抑えて・文学的解釈にならないので・曲の良さが自然に味わえます。第8番など半音を駆使したかなり大胆な作品ですが、リパッティにかかるとその特性がとても雅びな美しさに感じられます。全体的にインテンポの感覚が強くて、細部のリズムの揺らし方などに 、もう少し工夫を凝らすことも出来ると思う場面が多々ありますが、リパッティはあえてそうしないということかと思います。新古典的な感覚はそこから来るわけですし、そこに1940年代の新古典的な感性があるのだろうと思います。実際、この演奏を聞くとホントにお手本の如く素直に各曲の個性を描き出していて・決して飽きのこない演奏であると思います。


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