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フリッツクライスラーの録音


○1910年5月13日

クライスラー:ウィーン奇想曲、中国の太鼓、愛の悲しみ、愛の喜び、フォスター:故郷の人々(スワニー河)、ドヴォルザーク:ユモレスク、マスネ:タイスの瞑想曲、スメタナ:ボヘミアの幻想

ゲオルゲ・ファルケンシュタイン(ピアノ)
(ニューヨーク、ヴィクター・トーキング・マシーン・スタジオ)

クライスラーの自作自演は、最初期の若い頃の録音のせいか、響きも心なしか締まった感じで、歌い回しいもあまりテンポの緩急を付けずに、むしろスッキリと小粋に感じられます。 「故郷の人々」は旋律をしみじみと歌って、心に沁み入る出来です。「ユモレスク」も素朴な味わい。タイスの瞑想曲も旋律を粘らせずに素直に歌っているので、すっきりした後味がとても良いです。


○1910年5月18日

ブラームス:ハンガリー舞曲第5番、クライスラー:タルティー二の様式のコレルリの主題による変奏曲、ウィーン奇想曲、シューベルト:楽興の時・第6番アレグロ・モデラート、ラモー:歌劇「エベの祭典」〜タンブーラン

ゲオルゲ・ファルケンシュタイン(ピアノ)
(ニューヨーク、ヴィクター・トーキング・マシーン・スタジオ)

ハンガリー舞曲第5番は、即興性を感じさせる小粋なもの。自作のタルティー二の様式のコレルリの主題による変奏曲はスッキリした古典的な様相を聴かせますが、ウィーン奇想曲は同年5月13日の録音より¥情感をより込めた印象に変えています。シューベルトの楽興の時は情感を込めて、どこか懐かしい雰囲気を聴かせます。ラモーは古典的にすっきりとした味わい。


○1910年5月20日

チャイコフスキー:ハープサルの思い出〜第3曲・無言歌、コットン:シャンソン・メディテ―ション

ゲオルゲ・ファルケンシュタイン(ピアノ)
(ニューヨーク、ヴィクター・トーキング・マシーン・スタジオ)

旋律を伸びやかに歌っていますが、味わいは粘らずスッキリしています。


○1910年5月24日

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティ―タ第3番〜第3楽章ガヴォットとロンド(ヴァイオリンとピアノ編曲版)

ゲオルゲ・ファルケンシュタイン(ピアノ)
(ニューヨーク、ヴィクター・トーキング・マシーン・スタジオ)

ゆったりとしたテンポで、どこか洒脱な味わいを感じさせる佳品に仕上がっています。


○1926年4月9日

レハール:喜歌劇「フラスキータ」〜セレナード

カール・ラムソン(ピアノ)
(カムデン、ニュージャージー、スタジオ録音)

旋律を素直に歌って、素朴な味わいです。


○1926年4月14日

クライスラー:ウィーン奇想曲、愛の悲しみ、愛の喜び

カール・ラムソン(ピアノ)
(ニューヨーク、スタジオ録音)

自作自演だけに素晴らしい出来なのはもちろんですが、感心するのは、他の奏者の演奏であると「上手に聞かせてやろう」という欲目が聞こえて来ることが多いですが、クライスラーの場合は、テンポの変化・旋律の節回しが実に自然でスッキリして、過度なベタベタした味付けがないことです。クライスラーの歌い回しはロマンティックと評する方も少なくないですが、むしろこの演奏からは、この時代の新即物主義の味わいがそこはかと感じられます。


○1926年12月8日

ファリャ:歌劇「はかなき人生」〜スペイン舞曲第1番、ブラームス:ハンガリー舞曲集〜第17番、ドビュッシー:前奏曲集第1巻〜第8曲「亜麻色の髪の乙女」

ミハイル・ラウハウゼン(ピアノ)
(ベルリン、スタジオ録音)

12月8日と14日のベルリンでの録音は、気合いが入って、どれも素晴らしい出来です。スペイン舞曲は、リズムの斬れがよく、スペインムードを堪能させてくれます。ハンガリー舞曲もクライスラーの絶妙な節回しで聞かせます。「亜麻色の髪の乙女」はムードたっぷりの甘い旋律が楽しめます。


○1926年12月14日

スコット:蓮の花の国、無言歌集第5巻〜第1曲「五月のそよ風」、ドビュッシー:小組曲〜第1曲「小舟にて」

アルバート・シャンドール(ピアノ)
(ベルリン、スタジオ録音)

クライスラーの艶やかな音色、旋律の息の長い節回しが素晴らしく、旋律美がたっぷり味わえます。


○1927年3月17日

クライスラー:羊飼いの牧歌、バーリン:ブルー・スカイ、フリムル:娘たちの踊り

カール・ラムソン(ピアノ)
(カムデン、ニュージャージー、スタジオ録音)

「羊飼いの牧歌」は、素朴でどこか懐かしいイメージを呼び起こす語り口が、まさしくクライスラー節です。 「娘たちの踊り」は、クライスラーの艶やかな節回しが楽しめます。


○1927年3月25日

クライスラー:ジプシー奇想曲、美しきロスマリン、アルベニス:マラゲーニャ

カール・ラムソン(ピアノ)
(カムデン、スタジオ録音)

旋律を素直に歌って、素朴な味わいです。特に「美しきロスマリン」は、小振りで洒脱な味わい魅力的です。


○1928年2月2日

マスネ:タイスの瞑想曲、ドルドラ:思い出

カール・ラムソン(ピアノ)
(カムデン、スタジオ録音)

どちらの演奏も小振りではあるが、素朴な味わいの語り口で聴かせます。旋律自体の甘さがそのまま出ています。


○1928年2月27日

フォスター:故郷の人々(スワニー河)、クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ

カール・ラムソン(ピアノ)
(カムデン、スタジオ録音)

「故郷の人々」は、旋律を素直に歌って、素朴な味わいです。「ベートーヴェンの主題によるロンディーノ」は、スッキリした味わい。


○1928年12月6日

ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第16番

カール・ラムソン(ピアノ)
(カムデン、スタジオ録音)

旋律を素直に歌って、素朴な味わいです。


○1936年9月28日

クライスラー:ウィーン奇想曲、中国の太鼓

フランツ・ルップ(ピアノ)
(カムデン、スタジオ録音)

自作を弾くクライスラーは甘さを程よく抑えたスッキリした語り口で、旋律美を愉しめて魅力的です。


○1938年2月14日

ドヴォルザーク:ユモレスク、チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ、リムスキー・コルサコフ:歌劇「金鶏」〜太陽の讃歌、スコット:蓮の花の国

フランツ・ルップ(ピアノ)
(カムデン、スタジオ録音)

特に「ユモレスク」,「アンダンテ・カンタービレ」が旋律を素直に歌って、素朴な味わいで聞かせます。


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