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メータの録音 (1980年〜1989年)


〇1983年11月3日ライヴ

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番

ウラディミール・アシュケナージ(ピアノ独奏)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール)

アシュケナージのピアノは音が粒立ち、輝かしい響きが魅力的ですが、音楽作りが細身でシャープな印象で、これがメータが作り出す、どちらかと云えば線が太くオーソドックスな、構えの大きい音楽と方向性が微妙に合っていない感じがします。これはどちらかと云えばメータのサポートに問題がある気がしますが、ピアノの弱音の場面において、オケがバランスの悪い大きい音でニュアンスをかき消してしまう感じがあり、特に第2楽章にかなり不満が残ります。第3楽章はリズムが強く威勢が良く両者がぶつかり合う迫力はありますが、響きが濁って音楽が粗くなって、あまり成功しているように思えません。


○1987年4月26日ライヴ

マーラー:交響曲第3番

マルガレータ・ヒンターマイヤー(アルト独唱)
ウィーン国立歌劇場合唱団、ウィーン少年合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール)

スケールが大きく、懐が深い・奥行のある演奏に仕上がりました。じっくりとした足取りで、旋律を歌い上げており、描写がとても丁寧です。メータは元々この曲を得意にしていますが、聖と俗と、すべての雑然を大きく取り込んでいく器の大きさが感じられて、納得できる演奏です。特に第1楽章が表現の振幅が大きくて、素晴らしい出来です。ウィーン・フィルの金管の炸裂と、弱音での弦の繊細さが見事です。声楽処理も上手く、最終楽章は圧倒的なフィナーレを作り上げます。ヒンターマイヤーの独唱も見事です。


○1989年1月15日ライヴ-1

R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール)

オケはよく鳴っていますし・響きは豪華で元気が良くて・いかにも「愉快な悪戯」という感じで、オケが音楽を楽しんでいるというのが伝わってきます。特に中間部はテンポを速めて・ダイナミックな動きを楽しませてくれるのですが、ちょっと表現が表面的じゃないかという感じがしなくもありません。仕掛けが表面に出ている感じなのです。


○1989年1月15日ライヴー2

ブラームス:交響曲第1番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール)

メータの構えの大きい個性が良く生かされた演奏です。時に響きに緊張を欠く場面もありますが、ウィーン・フォルとの呼吸も合って、充実した出来であると思います。特に第2楽章はゆったりしたテンポのなかに抒情性が息深く歌われて、印象深い出来です。逆に、これはどうしてかと思いますが、第3楽章がやや早くセカセカした感じがして、全体の構成を弱めている感があります。しかし、量販楽章はスケールが大きく、ブラームスらしい重厚な響きを楽しむことができて、正統的で安心して聴ける演奏だと思います。


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