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ハンス・クナーッパーツブッシュ 1940年代以前


○1940年夏−1

ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン)

前半は遅めのテンポで旋律をじっくり歌わせます。ウィーン・フィルの弦の音色も深い情感を漂わせてスケールも大きくて、この前半はなかなか良いと思います。しかし、録音のせいがあるのかも知れませんが、後半はテンポが速めになって音色も明るめに変化した 印象で、これはこれでリズムが斬れて整った出来だと思いますが、前半と比べるとスケールが小さくなってしまった感じです。


○1940年夏−2

ヴェルディ:歌劇「アイーダ」〜大行進曲

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン)

クナッパーツブッシュのヴェルディは珍しいですが、合唱付きではなく、オケ部分を繋ぎ合わせた小品という感じの編曲です。オペラティックな感触をまったく気にせず、快速で飛ばすスッキリした演奏で、名前を伏せて聴かせればこれがクナッパーツブッシュの演奏とは誰も思わないでしょうが、それ以上の 出来ではありません。


○1940年夏ー3

ツィ―ラー:ワルツ「ウィーン娘」

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン)

古き良きウィーンを感じさせてくれる演奏です。奇をてらったところはまったくないが、テンポが自在で、序奏の間の抜けたテンポの取り方など絶妙の巧さ、展開部はテンポを速めてスッキリと流し、勘所ではテンポをぐっと落とすなど、クナッパーツブッシュ節が楽しめて、しかもそれが音楽の品を落とすことがありません。中間部の美しいメロディーをウィーン・フィル楽員が口笛で吹く場面などは、実に暖かく懐かしい気分に浸らせます。


○1940年夏ー4

ヨハン&ヨゼフ・シュトラウス:ピチカート・ポルカ

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン)

テンポを自在に揺らし、勘所で意表を突く間の取り方の絶妙なこと、しかもどこか間の抜けたのんびりしたところがある、クナッパーツブッシュの遊び心がよく表れた個性的な演奏です。ウィーン・フィルの面々も嬉々としてクナパーツブッシュに付き合っているという感じがします。


○1940年夏ー5

ヨハン・シュトラウス:ポルカ「浮気心」

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン)

テンポ早めにして、表現自体は奇をてらったところはまったくありませんが、リズムが生き生きとしていて、音楽に適当な軽みと弾みがあります。ウィーン・フィルの面々の浮き浮きした感じが伝わってきます。


○1942年1月31日ー1

ワーグナー:歌劇「タンホイザー」〜タンホイザーのローマ語り

マックス・ローレンツ(テノール)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン)

クナッパーツブッシュは伴奏程度で指揮をどうのこうの云う次元ではありませんが、聴くべきはローレンツです。録音が声を良く録っていることもあるが、発声がしっかりしていること、芯のある声の力強さなど聴くべきところが多く、さすが往年のヘルデン・テノールだと感心します。思いのほか歌唱にスタイルの古さを感じさせず、テンポも速めで、スッキリと近代的な印象がある歌唱だと思います。


○1942年1月31日ー2

ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」〜夜明けとジークフリートのラインへの旅

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン)

夜明けの後半部分がカットされて盛り上がらないままラインへの旅に突入するのが残念ですが、ゆっくりめの夜明けは旋律をじっくり歌わせています。ラインへの旅はテンポを早めにしてリズムの斬れは良いですが、スケールの大きさにはちょっと欠けるようです。


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