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カラヤンの録音(1981年7月〜12月)


○1981年9月21日、23日、25日、26日

ハイドン:交響曲第96番「奇蹟」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、独グラモフォン・スタジオ録音)

第1楽章序奏亜大ジョの重みのある響きから・主部アレグロへの移行の妙が際立ちます。オケの編成は大きめだと思いますが、リズム処理が巧いので・身体の重さを感じさせません。ここではモダンオーケストラの響きの暑さが曲の躍動感と華麗さを引き立てていると感じます。第3楽章メヌエットは曲自体が構えの大きい作りだと思いますが、リズムをゆったいrと取って・風格のある演奏です。この楽章は素敵だと思いです。


○1981年9月22日

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲

アンネ・ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、独グラモフォン・スタジオ録音)

カラヤンの作り出す大きな器のなかで・ムターのヴァイオリンが自在に動き回ります。ムターのヴァイオリンは音色も多彩で・低音もふくよかで・聴き応えがします。音楽が小さくまとまらないで・旋律の息が深く、特に両端楽章は素晴らしいと思います。第1楽章は旋律をたっぷりと歌わせ、第3楽章はリズム感が素晴らしいと思います。本当に凄い才能だと思いますが、この独奏をサポートするカラヤンはまさに伴奏の見本を見るようです。ムターを大きく包み込むようにして、オケは決して威圧的になることがなく・独奏を引き立てています。第1楽章はテンポをゆったり取って実にスケール大きい音楽です。厚みがあって・低音の効いたベルリン・フィルの響きはブラームスらしい味わいがあります。第2楽章もゆったりしたテンポで静かな味わいのある音楽を聞かせます。第3楽章は特に聴き応えがあって、オケと独奏ががっぷりと四つに組むような熱気のある演奏に仕上がっています。


○1981年9月25日・26日、1982年1月25日

ハイドン:交響曲第103番「太鼓連打」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、独グラモフォン・スタジオ録音)

大編成オケのハイドンですから・当然ながら室内オケのような軽味やキビキビとした動きはないですが、決して重い表現にはなっていません。カラヤンのハイドンは、その艶とふっくらとした色気が魅力的です。この弦の優美な表情は大編成オケにしか出せないものです。その意味で中間2楽章を買います。ゆったりとしたリズムでのなかにスッキリとした美しさのある第2楽章、第2楽章の優美なリズムも魅力的です。


○1981年9月27日・28日、1982年1月−1

グリーグ:ピアノ協奏曲

クリスチャン・ツィメルマン(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、独グラモフォン・スタジオ録音)

ツィメルマンのピアノは第1楽章中間部や第3楽章前半部いおいてハッとさせられるような熱さを見せます。打鍵が強くて・聴き手にリズムが迫ってくるような・実に濃厚な表現で、これにはカラヤンもたじたじの感じがします。カラヤンの三ポートの巧さは言うまでもないですが、カラヤンの個性は第2楽章のゆったりとしたテンポのなかに夢幻のような叙情性が満ち溢れた表現によく出ています。ベルリン・フィルの艶やかな弦が素晴らしいと思います。


○1981年9月27日・28日、1982年1月ー2

シューマン:ピアノ協奏曲

クリスチャン・ツィメルマン(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、独グラモフォン・スタジオ録音)

カラヤンの作り出すオケの響きは透明で、特に第1楽章では熱い情念の揺らぎよりも、淡い叙情性に重きを置いた感じに思われます。ツィメルマンとの相性の良さは特に第2楽章の落ち着いた味わいの深い流れのなかに感じられるようです。第3楽章では決してはやることなく・足取りをしっかり取った音楽になっているのが素晴らしいと想います。ツィメルマンのピアノは打鍵が強くて、力強い音楽を作り出しており、これがカラヤン指揮ベルリン・フィルの柔らかな響きのなかでよく生きています。


○1981年12月2〜9日・1983年9月19日(ベルリン)、1982年3月28日(ザルツブルク

ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人}

ヨセ・ファン・ダム(オランダ人)、クルト・モル(ダーラント)、
ドゥニャ・ヴェィゾヴィッチ(ゼンタ)、ペーター・ホフマン(エリック)他
ウィーン国立歌劇場合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、EMI・スタジオ録音)

予想に反してテンポはゆっくりで、これまでのカラヤンのイメージとは異なる粘るワーグナーです。序曲が実にスケールが大きく、暗黒の大海原の大波を思わせる情念に満ちています。全体のトーンも暗くて粘る感じです。特に素晴らしいと思うのは合唱で、第2幕の叙情味あふれる女性合唱、第3幕での嵐の場面での男性合唱も迫力があります。カラヤンの海での経験が生きているということかも知れません。ヴェィゾヴィッチの声も暗めのトーンですが、バラードでは憑かれたような情念を感じさせ、これも聴き物です。


○1981年12月31日ライヴ

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

アンネ・ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、フィルハーモニー・ホール、ジルベスター・コンサート)

ムターのヴァイオリンはまだ十代そこそことは思えないような技術、低音の効いた艶のある音色も魅力的ですが、そのみずみずしい感性には感嘆させられます。ムターはカラヤンのバックを得て・実にのびのびと自在な動き、それでいて繊細さもある・素晴らしい演奏を聴かせます。カラヤンのサポートのうまさは筆舌に尽くし難いほどです。旋律を息長く大きく歌わせてゆったりと構えたスケールの大きさのなかで、ムターを自在に泳がせる余裕の芸です。どの楽章も素晴らしいですが、特に第1楽章の豪放とも言えるようなスケールのo大きさ、第2楽章の祈りの静かな美しさは忘れ難いものです。


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