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カラヤンの録音(1970年1月〜6月)

1970年5月:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を率いて来日公演。


○1970年

マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルステカーナ」

フィオレンツァ・コッソット(サントゥッツァ)、ジャン・フランコ・チェケーレ(トゥリッドウ)
アドリアーナ・マルティーノ(ローラ)、ジャン・ジャコモ・グエルフィ(アルフィオ)
アンナ・ディ・スタジオ(ルチア)
ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団
(ミラノ、ユニテル映像作品)

まずカラヤン指揮の管弦楽の生きいきとした表情に魅了されます。テンポの絶妙な変化と揺れ動きの妙が、人情悲劇の感情の細やかな感情を見事に描きだしています。もちろんカラヤンの個性はその叙情的な表現によく出ているのですが、これは全曲だから当然ではありますが、カラヤンはベルリン・フィルで間奏曲を振った時とは明らかに違う行き方で棒を振っています。テンポを遅く取らず・粘らず、スッキリとした味わいと歌謡性を大事にしています。特に弦の歌い方にスカラ座のオケの個性がよく出ています。カラヤンの個性とイタリア・オペラの伝統が見事に融合しています。コッソットのサントゥッツァは歌唱が絶叫調にならずに等身大の村娘を演じて素晴らしく、チェッケーレのトゥリドゥも母との別れの場面で痛切な感情をよく表現して、ヴェリズモの魅力を楽しませてくれます。


○1970年1月22日ライヴー1

ブルックナー:交響曲第9番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

この未完の交響曲の構想の壮大さを実感させる密度の高い演奏だと思います。全体にテンポは速めですが、第1楽章から実にスケールが大きく・壮大な響きです。第2楽章はリズムが切れており・重量感のあるオケの動きを見せ、これが第3楽章への伏線として効いてきます。第3楽章は大河の流れの如く悠然たる雰囲気で・実に息長く旋律を歌っています。ベルリン・フィルの渋い響きの金管が強いインパクトを与えています。


○1970年1月22日ライヴー2

ヴェルディ:テ・デウム

ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

本曲がブルックナー未完の交響曲の第4楽章に見立てられている意図は明らかです。合唱もオケも渋く暗い色調で、リズムも予想外に重く・ドイツ的色合いが強い演奏です。ヴェルディの感じがしないのは事実ですが、ブルックナーの第4楽章として聴けば・なかなか重みのある説得力ある演奏ではないかと思います。


 

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