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ヨッフムの録音


○1977年11月28日ライヴ

ブルックナー:交響曲第9番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

派手さはないけれど、実直というか・手堅いというか・ヨッフムらしい渋い出来です。テンポは心持ち早めですが、テンポをあまり動かさず・淡々とした足取りで、旋律は力強く簡潔に歌われています。表現の細部にあまりこだわらない素朴さと大らかさが持ち味と言えます。ブルックナーの本質を大きくつかんだ骨太な音楽作りであり、その意味では雄大なスケールを感じさせると言うよりも、交響曲としての枠組みを意識した感じがします。こうしたヨッフムの音楽作りの個性が第1楽章、あるいは第3楽章によく出ています。オケの響きはこの時期のベルリン・フィルらしく渋く引き締まって、特に金管が黒光りする渋い輝きを放ちます。


○1986年4月17日ライヴ-1

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

クラウディオ・アラウ(ピアノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

オーソドックスで・安心して聴ける演奏です。テンポをゆったり取ったその演奏は実に懐が深くて、びっくりさせるようなところは全くありませんが、やるべきことはしっかり描き出そうという確信に満ちたものが感じられます。ふたりの演奏家の積み上げてきたものの重さを実感させる演奏です。特に充実しているのは第1楽章です。ベルリン・フィルの厚みのある響きにアラウのこれまた重量感のあるピアノがよくマッチしています。スケールも大きくて、聴き終わってずっしりとした満足感が残ります。


○1986年4月17日ライヴー2

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

正統的で・どっしりした重量感のあるベートーヴェンです。テンポをゆっくりとって、聴いていて驚くようなところはまったくないが、描くべきころがしっかりと描けれていると深く納得させられる演奏です。べルリン・フィルの響きが分厚く重低音の効いた昔風の響きで、カラヤンが振る時とはちょっと違う味わいであることも興味深いと思います。ヨッフムの年輪を感じさせる演奏です。


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