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ヤンソンスの録音


○2002年11月27日・28日ライヴ

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

ロンドン交響楽団
(ロンドン、バービカン・センター)

全体的にテンポは速め。リズムがしっかり取れて、古典的な均整を感じさせます。マーラーの聖と俗はしっかりと描き湧けられていますが、決して騒がしいゴタゴタした印象はなく、むしろ落ち着いた佇まいであるのはヤンソンスの手腕であると思います。ロンドン響の響きは細身ですが、弦の引き締まった響きと斬れの良いリズムが良い方向に作用して、これがシャープな印象になって、ヤンソンスの古典性とほど良く調和しています。その良さが両端楽章で生きています。オケの重量感は若干軽めではありますが、オケの躍動感がフレッシュな印象を与えているとおおいます。第2楽章の弦の涼しいピアニシモも印象的です。


○2006年1月1日ライヴ

ヨハン・シュトラウスU:行進曲「狙いをつけろ」、ワルツ「春の声」、ポルカ「外交官」、ヨゼフ・シュトラウス:ポルカ「ことづて」、ヨハン・シュトラウスU:ワルツ「芸術家の生活」、ヨゼフ・シュトラウス:ポルカ「憂いもなく」、ヨハン・シュトラウスU:喜歌劇「ジプシー男爵」〜入場行進曲、モーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲、ヨゼフ・ランナー:ワルツ「モーツアルト党」、ヨハン・シュトラウスU:ギャロップ「愛の便り」、新ピチカート・ポルカ、芸術家のカドリーユ、スペイン行進曲、ワルツ「親しい仲」、ポルカ「クラプフェンの森で」、狂乱のポルカ、エドゥアルト・シュトラウス:ポルカ「電話」、ヨハン・シュトラウスU:入り江のワルツ、ポルカ「ハンガリー万歳」、「山賊のギャロップ」、ワルツ「美しく青きドナウ」、ヨハン・シュトラウスT:ラデツキー行進曲

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール)

2006年はモーツアルト生誕25周年ということで、プログラムに歌劇「フィガロの結婚」序曲やランナーの「モーツアルト党」と言った曲が入っているのが特徴です。ニュー・イヤー・コンサート初登場のヤンソンスは全体にテンポ早め・旋律線を明確にとったリズムが強い指揮で、「狙いをつけろ」・「入場行進曲」・「スペイン行進曲」はその弾けるようなリズムの推進力と生き生きした表情がなかなか見事です。ただし、ないものねだりかも知れませんが、もうちょっと小粋さが欲しいところです。ウィーン・フィルの弦が硬めに聴こえます。ワルツは色彩的で悪くないですが、線が硬くて・もう少しふわっとした柔らかさが欲しい気がします。「フィガロの結婚」序曲は早いリズムが前面に出ていて・ドライブ感はありますが、いまひとつの出来。


○2007年ライヴ

マーラー:交響曲第1番「巨人」

バイエルン放送交響楽団
(ミュンヘン、ガスタイク・ホール)

バランスが良く取れた・端正で古典的な演奏に仕上がりました。ピリピリとした感性の揺らぎよりは・青春の情熱とやるせなさを振り返るようなところがあり・若干温和で物足りない感じもなくはないですが、これはこれで説得力のあるものです。特に第3楽章中間部・第4楽章中間部にその良さが出ていると思います。決して情感に溺れることがなく・抑制が効いた古典的な表現です。バイエルン放送響は重厚ななかに暖かさがあって、ヤンソンスの解釈をよく体現していると思います。


○2007年12月29日ライヴー1

ドヴォルザーク:交響曲第8番

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(アムテルダム、アムステルダム・コンセルトヘボウ楽堂)

中間2楽章にウェイトを置いて・両端楽章をやや軽めに取るという、なかなかユニークな印象の演奏です。特に第2楽章がゆったりとしたテンポで語り口が重めであり、深刻で劇的な表現に仕上がっていて、これはとても強い印象を残します。この重めの第2楽章に続く第3楽章は普通だと軽めに仕上げるところかと思いますが、やはり遅めのテンポで始まるのもバランス的に納得できるところです。両端楽章は軽めと言っても、中間楽章が重い感じだから軽めに聴こえるということですが、こちらは流れが流麗でさわやかに聴こえます。コンセルトへボウ管は弦は艶やかで美しく、木管は明るく抜けるようで、とても素晴らしいと思います。結果として、本曲の交響曲形式としての4楽章のがっちりした構成が改めて確認できたということかと思います。


○2007年12月29日ライヴー2」

マーラー:歌曲集「さすらう若人の歌」

トーマス・ハンプトン(バリトン)
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(アムテルダム、アムステルダム・コンセルトヘボウ楽堂)

ハンプトンの声は艶やかで若々しく、歌詞を丁重に歌っていて・なかなか説得力があります。 第1曲「恋人の婚礼の時」・第2曲「朝の野を歩けば」はハンプトンの澄んだ声が生きています。ヤンソンスのサポートもテンポをしっかり取って。歌手をよく立てていて、これは歌いやすい指揮だと思います。


○2009年ライヴ−1

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

バイエルン放送交響楽団
(ミュンヘン、ヘラクレス・ザール)

バイエルン放送響のやや暗めで渋い音色は持ち味ではありますが、だからと言ってドビュッシーに向かないことは全然なくて、ヤンソンスは渋い音色を逆手に取って・ゆったりしたテンポで息を長く旋律を歌って、重めの印象のドイツの田園風景画を描いてみせたという印象でしょうか。 フルート・ソロも暗めの音色ですが・ふくよかな響きで、旋律をたっぷり歌っています。フランスのオケとはまた違う味わいが面白いところです。


○2009年ライヴ−2

ストラヴィンスキー:詩篇交響曲

バイエルン放送交響楽団・合唱団
(ミュンヘン、ヘラクレス・ザール)

バイエルン放送響の重厚な響きが作品の新古典的な重い印象によくマッチしています。特に第1楽章はその重く鋭角的なリズムが聴き手に迫ってきます。バイエルン放送響合唱団は熱気あるなかにも厳粛で宗教的な雰囲気をよく出していて聴かせます。


○2010年4月4日ライヴ

ベートーヴェン:交響曲第7番

バイエルン放送交響楽団
(ミュンヘン、ヘラスレス・ザール)

近年のヤンソンスの好調を納得させる好演。腹応えのするリズムを基調にしながらも・まったく急くところがなくい・堂々と音楽を押し進める威風は、久しぶりに正統的なベートーヴェンを聴いたという充実感があります。バイエル放送響の低音の効いた重厚な音色を使って、太いタッチの造形に仕上がりました。その良さがリズム主体の両端楽章に現れているのはもちろんですが、第2楽章もじっくりした味わいで聴かせます。このようなどっしりした演奏を聴くと、最近よく聴くベートーヴェンはどれもちょっと小手先で小さいなあと思います。


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