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2018年録音


○2018年7月25日ライヴ

ワーグナー:歌劇「ローエングリン」

ピョートル・ベチャワ(ローエングリン)、アニヤ・ハルテロス(エルザ・フォン・ブラバント)
トマシュ・コニェチュニ(テルラムント)、ワルトラウト・マイヤー(オルトルート)
ゲオルク・ツェペンフェルト(国王ハインリッヒ)
クリスチャン・ティーレマン指揮
バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団
(バイロイト、バイロイト祝祭劇場、ユーヴァル・シャロン演出)

シャロンの演出はコンセプトが中途半場で説得力が弱いが、歌手陣は揃っていて、音楽の方はなかなかの水準です。ベチャワのローエングリンは声が澄んで良く伸びて好演です。ハルテロスのエルザも清浄なムードで良い出来です。しかし、聴き物はマイヤーのオルトルートと云うことになるのかも知れません。歌の表現力も見事で、第2幕はマイヤーの独壇場です。ティーレマンの指揮はツボをよく心得たもので、音楽は引き締まっておりテンポよく進みますが、ややあっさり気味のところもあり。時にもう少しテンポを柔軟に取ってじっくり振って欲しい箇所があります。


〇2018年8月14・16・19日ライヴ

ロッシーニ:歌劇「アルジェのイタリア女」

チェチーリア・バルトリ(イザベッラ)、イルダール・アブドラザコフ(ムスタファ)、エドガルド・ロチャ(リンドーロ)、アレッサンドロ・コルベッリ(タッデーオ)、ホセ・コサ・ロサ(ハーリー)、レベッカ・オルヴェラ(エルヴィーラ)、ローザ・ボヴ(ズールマ)他
ジャン・クリストフ・スピノジ指揮
ウィーン・フィルハーモニア合唱団
アンサンブル・マテウス
(ザルツブルク、モーツアルト劇場、ザルツブルク音楽祭、
モーシュ・ライザー/パトリス・コーリエ演出)

ライザーとコーリエの共同演出による舞台は現代的なテンポが良い演出で、アブドラザコフやバルトリ以下芸達者が揃って愉しい舞台に仕上がりました。スピノジ指揮アンサンブル・マテウスの作り出す音楽も軽快なテンポで、ロッシーニの音楽を生き生きと表現しました。たまにはこういう肩の凝らないオペラ・ブッファも愉しいものです。特にアブドラザコフはユーモラスな歌唱も見事ですが、憎めない人柄のムスタファを演じました。魅力的なイタリア女・イザベッラを演じるバルトリは、生き生きとした歌唱が素晴らしい。リンドーロ、ダッデオもユーモラスで軽妙で楽しめます。


〇2018年9月14日ライヴー1

リスト:ピアノ協奏曲第1番

エフゲーニ・キーシン(ピアノ独奏)
トーマス・ヘンゲルブロック指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(アムステルダム、アムステルダム・コンセルトヘボウ楽堂)

キーシンのピアノ独奏が素晴らしい。打鍵の強さ・響きの輝かしさはもちろん、作り出す音楽の構えが大きく、繊細な弱音から強打音まで幅広く聴かせて、緊張感が緩むところがない、リストの音楽のダイナミックな魅力を十二分に表出した見事な演奏です。ヘンゲルブロック指揮コンセルトヘボウ管もキーシンの独奏によく対抗して、ダイナミックな演奏を聴かせています。スケール感の大きい第1楽章も素晴らしい出来ですが、コンセルトヘボウ管の木管の美しさが味わえる第2楽章も強く印象に残ります。


2018年9月14日ライヴー2

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」、ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲、メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」、ヴェルディ:歌劇「オテロ」〜バレエ音楽、プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」〜間奏曲

トーマス・ヘンゲルブロック指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(アムステルダム、アムステルダム・コンセルトヘボウ楽堂)

メンデルスゾーンの「イタリア」はヘンゲルブロックは第1楽章がテンポ早めに活気のある輝かしい表現でなかなか聴かせますが、この交響曲を聴くといつも感じることですが、第1楽章が素晴らしすぎるとそれ以降の楽章がどうも地味に聞こえてしまいます。ヘンゲルブロックの演奏もこの例に漏れないようです。「イタリア」の場合は第1楽章を出来るだけ抑え目に行くことが全体を構成する秘訣ではないかと思います。その他オペラの序曲など交えたポピュラーなプログラムですが、全体にコンサートスタイルで手堅くまとめた印象が強い。コンセルトヘボウ管の柔らかな弦の響きが印象的ですが、その分印象がメロウに感じられるようです。


○2018年10月13日ライヴー1

モーツアルト:交響曲第38番「プラハ」

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
NHK交響楽団
(東京、NHKホール)

通常は28分くらいの曲ですが、楽譜に指定された反復をすべて行っているそうで、演奏時間は40分近く掛っています。全体的にテンポは速め、線が強めで元気が良い演奏ですが、 機能性が先に立つ感じで、N響の弦の響きがきつくて威圧的な印象があり、特に第1楽章は演奏時間が長く感じられます。もう少しリズムの軽やかさと響きの柔らかさを求めたいと思います。第2楽章はすっきり した流れですが、第3楽章はやや勢いが付き過ぎだと思います。


○2018年10月13日ライヴー2

ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団
(東京、NHKホール)

プロムシュテットは御年91歳だそうですが、とても若々しい印象のブルックナーを聴かせます。全体的にテンポは速め、響きはシャープで、流れはスッキリして、音楽の流れより構成感重視ということでしょう。第2楽章スケルツオでは粗野なリズム感覚を前面に押し出し、全奏も爆発的に強めです。 しかし、N響はややリズムが逸り気味に思われます。全体にインテンポで思い入れを入れないので、響きの色彩の揺らぎがあまりなく、ひたすら勢いで押す印象が強いようです。良く云えば引き締まった造形ということになると思いますが、ブルックナーの場合はもう少し恰幅の大きさを求めたいです。第3楽章も流れが早めで、もう少し リズムの刻みを深く、旋律を息深く歌わってもらわないと、ブルックナーの音楽に没入できない気がしますが、この辺は好みの問題ということでしょうか。


 

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