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2009年録音


〇2009年2月18日ライヴ

メンデルスゾーン:序曲「ルイ・ブラス」 op.95、ヴァイオリン協奏曲 op.64、カンタータ「最初のワルプルギスの夜」 op.60

アンネ・ゾフィー・ムター(ヴァイオリン独奏)
クリスティーン・ノーレン(メゾ・ソプラノ)、ジョーマ・シルヴァストリ(テノール)、アルバート・ドーメン(バリトン)、トレステン・グリューベル(バス)
ウェストミンシター・シンフォニー・コーラス
クルト・マズア指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
(ニューヨーク、エイヴリー・フィッシャー・ホール、メンデルスゾーン生誕200年記念)

今回マズアが取り上げた三曲のプログラムを通してテンポ早めにリズムを刻みを取った推進力が強い音楽を作り上げていますが、音楽がシンフォニックに強く輝かしく鳴らす音楽作りのが似合うところと、いささかデリカシーに欠けると感じられるところと、一長一短があるように思います。まず良い方に出ているのが冒頭の「ルイ・ブラス」序曲で、これは快活で良い出来だと思います。「最初のワルプルギスの夜」 もこの曲の奇怪で幻想的なシーンが万華鏡のように展開する目まぐるしさを早いテンポで押して聴かせるところが興味深いですが、やや一本調子な印象じに思えるのは、ひとつはマズアのインテンポの音楽作りが単調に聴こえる点と、合唱・声楽が管弦楽に対抗するみたいに声を目一杯張り上げるからです。もうすこしデリカシーのある歌唱を望みたい気がします。ムターを独奏者に迎えたヴァイオリン協奏曲は期待しましたが、濃厚で艶のあるムター節を聴かせますが、有り余ったエネルギーを一気に発散するかのように飛ばしまくる音楽作りで、第1楽章第1主題は速いテンポで押しまくるかと思えば、第2主題でぐっとテンポを抑えて沈滞すると言った具合で、表現の振幅の大きさに驚かされますが、全体にセカセカして落ち着かない演奏で、あまりゲミュトリッヒカイトではない。まあいくらかマシなのはテンポが遅い第2楽章で、ここには静かな流れがあります。第3楽章もこれでもかと云う感じでぐいぐい押しまくり、あれよあれよと云う感じの圧倒的なフィナーレで締めくくります。ヴィルトゥオーゾコンチェルトのようでスリリングな演奏だと興奮する向きも沢山いらっしゃるでしょう(ニューヨークの聴衆は湧いているようです)が、正直申して、やればやるほどメンデルスゾーンから離れる気がします。こういう解釈がムターのものなのか・マズアから来るのか気になりますが、今回の三曲のメンデルスゾーンを聴いた感じでは、シンフォニックでリズムで押す印象が共通しており、マズアの影響が強いのかも知れません。と云うことで協奏曲に関してはムター節を味わいたい方向けで、あまり良い評価が出来ません。


○2009年8月27日ライヴー1

ショパン:ピアノ協奏曲第2番

ファビオ・ルイージ指揮
ラン・ラン(ピアノ独奏)
ドレスデン国立管弦楽団
(ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール、プロムス)

ラン・ランのピアノは響きがふくよかで・ロマンティックな香りがほのかに漂うようで、なかなか聴かせます。特に第2楽章がふっくらした感触で良い出来です。ルイージの指揮は実に手堅いというか・リズムをしっかり取ったサポートで、音楽がしっかり取れているのでソロは乗り易いと思います。


○2009年8月27日ライヴー2

R.シュトラウス:アルプス交響曲

ファビオ・ルイージ指揮
ドレスデン国立管弦楽団
(ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール、プロムス)

前曲のショパンにも言えることですが、リズムをしっかり正確に取って・しっかりした音楽作りが好ましく、曲の構造がよく分かるのは良い点だと思いますが、真面目一方という感じが若干あり、勘所ではもう少し表現に余裕を持たせても良いのではないかと不満に思うところがあります。特にアルプス交響曲のような描写音楽であると、旋律をスケール大きく・朗々と鳴り響かせて欲しいと思う場面ではそのようにしてくれないと、音楽が堅苦しく・こじんまりした感じになります。ドレスデンのオケはR.シュトラウスは得意ですが、その良さを十分に引き出せていないように思われます。


○2009年10月4日ライヴー1

ショパン:ピアノ協奏曲第2番

アッシャー・フィッシュ指揮
ダニエル・バレンボイム(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

バレンボイムのピアノは華やかさを抑えつつも・しっかりとリズムを刻んで、タッチのニュアンスが実に豊かです。第1楽章はちょっと渋い感じもしますが、線が太い演奏に仕上がっています。また第2楽章は音楽をじっくりと歌わせて説得力があります。スケールが大きいということではなくて、音楽が深いのです。フィッシュの指揮も堅実なサポートで、よくバレンボイムに付けています。


○2009年10月4日ライヴー2

ショパン:ピアノ協奏曲第1番

アッシャー・フィッシュ指揮
ダニエル・バレンボイム(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

バレンボイムのピアノはタッチのニュアンスが実に豊かで、第3楽章のポーランド舞曲風の微妙な装飾的なリズムの付け方などとても巧くて、そこにショパンの音楽の民族性がよく出ています。全体に派手さを抑えた感じもしますが、じっくりと足取りをとった骨太い音楽で説得力のある演奏だと思います。フィッシュの指揮もバレンボイムの解釈をよく理解して、堅実なサポートを展開しています。


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