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2007年録音


○2007年3月9日ライヴ

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

ペーター・ルツィカ指揮
イーヴォ・ポゴレリッチ(ピアノ独奏)
ベルリン・ドイツ交響楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

同曲の演奏のなかでもひときわ特異な演奏だと思います。テンポは早くなったり・遅くなったり・ゆっくりとうねりながら曲が進行するが如くで、メランコリックな雰囲気が濃厚に立ち込めますが、決して甘ったるくならないのです。むしろほろ苦い味がします。旋律の息がとても長く、想念が心のなかにゆっくりと沈んでいきます。ポゴレリッチのピアノの打鍵は強く硬質で・聴き手の耳に突き刺さるように聴こえます。その響きは時に割れて・決して美しいとは言えないことがあり・これを嫌う方もいると思いますが、ポゴレリッチは音が汚れることを決して恐れないのです。とにかくテンポ変化が絶妙で、それがラフマニノフの物憂げな性格を見事に表現しています。ゆっくりとした旋律のなかに、ふっと早いパッセージが出てくると一瞬涼しい風が吹く感じがします。特に第1楽章が素晴らしい出来だと思います が、ゆらゆらと揺れながらゆったりと流れる濃厚なロマンティシズムを感じさせる第2楽章も実にポゴレリッチらしいと思います。演奏はポゴレリッチの主導のもとに進みますが、指揮のルツィカは旋律を息長く持ってポゴレリッチのソロを立派に立てています。 またベルリン・ドイツ響のちょっと暗めの重い粘った響きも、ポゴレリッチのメランコリックな解釈にとても似合っています。


○2007年10月10日ライヴ

マーラー:交響曲第1番「巨人」

クリストフ・エッシェンバッハ指揮
パリ管弦楽団
(パリ、サル・プレイエル)

これは素晴らしい演奏です。奇を衒った仕掛けをするわけでもなく・自然体で曲に対しており、派手はところはないけれども、聴き応えのする・とても充実した演奏に仕上がっています。まずパリ管がドイツのオケの響きかと思うような・やや湿り気のある暗めの響きを出していることにも感心させられます。第1楽章冒頭でその響きが生きています。テンポがしっかり取られ、息深く旋律が歌われて、音楽がすみずみまで生きていると感じます。エッシェンバッハのコントロールの巧さが実感できます。第3楽章は冒頭部のチェロ独奏のちょっと引きずったような歌わせ方が絶妙で、特に印象深い演奏に仕上がりました。第4楽章フィナーレも聴き手を急き立てることなく・じっくりと引き締めて納得できます。


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